変革融合精神医学部門

研究内容概略

近年、児童虐待件数は増加の一途を辿っております。子どもたちの苦しみは虐待を受けたときだけでなく、成人になった以後もうつ病や神経発達症の複雑な病態を引き起こすことがあり、長期にわたり続きます。しかしながら、この全ライフコースに渡る病理病態の多くは不明なままです。私たちは、従来の枠組みに捉われない多領域の研究の融合により、これらの難解な病態の解明に挑戦しています。臨床精神科医や臨床心理士からなるチームの利点を最大限に活かし、動物モデルとヒトの両方で検証可能な方法論の開発などを進めています。常にヒトの病理病態の解明を目標とし、組織形態学などの古典的手法を大切にしながらも、変革を追求する姿勢を忘れず、新たなアプローチによる研究展開を目指します。

メンバー紹介

牧之段 学

牧之段 学 准教授

細胞やマウスを用いた基礎研究とヒトの血液サンプルや脳画像を用いた臨床研究を同時進行させ、精神疾患の真の病態解明を志してまいりました。藤田医科大学では、本学精神科の強みであるゲノム研究や死後脳研究の手法も新たに取り入れ、かつICBSの強みである計算論的手法も広く活用したトランスレーショナル研究を推進します。

鳥塚 通弘

鳥塚 通弘 講師

精神疾患、特に自閉スペクトラム症、統合失調症を対象に研究を行っています。ヒトiPS細胞由来神経細胞や末梢血マクロファージなどの細胞培養系を中心に用いて、精神科医としての経験を活かしながらこれら疾患の病態解明・治療法開発に向けて邁進する所存です。

竹田 奨

竹田 奨 助教

大学卒業後、精神科医として臨床業務に従事してきましたが、2023年度より大学院(奈良県立医科大学)に入学し、そこでシングルセルRNAシーケンシングについて学んでマウスの脳での研究を進めつつ、同時にほぼ独学ではあるもののPythonやRを用いたドライ解析を行っておりました。まだまだ若輩者ですが、現在学んでいるシングルセルRNAシーケンシングやドライ解析の技術を死後脳研究やゲノム研究等に活用し、精神疾患の病態解明に貢献することを目指しております。

石田理緒

石田理緒 大学院生(D2, 国内留学)

私は臨床心理士および公認心理師として、精神疾患の病態に関わるバイオマーカー研究に携わってまいりました。藤田医科大学では、神経発達症や統合失調症の精神構造を網羅的な心理検査情報から複眼的に捉え、それらと各種バイオマーカーとの相関性を検討したいと思っています。

代表論文

  1. Makinodan M, Rosen KM, Ito S, Corfas G
    A critical period for social experience-dependent oligodendrocyte maturation and myelination. Science 337: 1357-60, 2012 10.1126/science.1220845.
  2. Toritsuka M, Kimoto S, Muraki K, Landek-Salgado MA, Yoshida A, Yamamoto N, Horiuchi Y, Hiyama H, Tajinda K, Keni N, Illingworth E, Iwamoto T, Kishimoto T, Sawa A, Tanigaki K. Deficits in microRNA-mediated Cxcr4/Cxcl12 signaling in neurodevelopmental deficits in a 22q11 deletion syndrome mouse model. Proc Natl Acad Sci USA. 110: 17552-7. 10.1073/pnas.1312661110.
  3. Komori T, Okamura K, Ikehara M, Yamamuro K, Endo N, Okumura K, Yamauchi T, Ikawa D, Ouji-Sageshima N, Toritsuka M, Takada R, Kayashima Y, Ishida R, Mori Y, Kamikawa K, Noriyama Y, Nishi Y, Ito T, Saito Y, Nishi M, Kishimoto T, Tanaka KF, Hiroi N, Makinodan M.
    Brain-derived neurotrophic factor from microglia regulates neuronal development in the medial prefrontal cortex and its associated social behavior. Mol Psychiatry. 29: 1338-49, 2024. 10.1038/s41380-024-02413-y.
  4. Takada R, Toritsuka M, Yamauchi T, Ishida R, Kayashima Y, Nishi Y, Ishikawa M, Yamamuro K, Ikehara M, Komori T, Noriyama Y, Kamikawa K, Saito Y, Okano H, Makinodan M. Granulocyte macrophage colony-stimulating factor-induced macrophages of individuals with autism spectrum disorder adversely affect neuronal dendrites through the secretion of pro-inflammatory cytokines. Mol Autism. 15: 10, 2024. 10.1186/s13229-024-00589-2.
  5. Okumura K, Takeda T, Komori T, Toritsuka M, Yamamuro K, Takada R, Ikehara M, Kamikawa K, Noriyama Y, Nishi Y, Ishida R, Kayashima Y, Yamauchi T, Iwata N, Makinodan M. Adverse childhood experiences exacerbate peripheral symptoms of autism spectrum disorder in adults. Psychiatry Clin Neurosci. in press. 10.1111/pcn.13712.

インフォメーション

変革融合精神医学部門(医学部 精神神経科学)

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〒470-1192 愛知県豊明市沓掛町田楽が窪1番地98 藤田医科大学 
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manabu.makinodan(at)fujita-hu.ac.jp / TEL 0562-93-9049, FAX 0562-93-1831
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