保健学研究科 医療科学専攻 <博士後期課程>

現代社会においては、医療の高度専門化や多様化、再生医療、遺伝子診断などの先端科学技術の急速な発展や少子高齢化社会への移行と、それに伴う医療環境の変化が問題になっています。
修士課程では専門的な知識と技術を身につけた高度医療専門職業人を養成していますが、博士後期課程の設置により、現代以上の変化に柔軟に対応でき、高度な知識と科学的思考で問題が解決できる資質と、高い倫理観を有した教育者、研究者、将来の指導者を育成します。

教育目標・3ポリシー

教育研究上の目的および教育目標

藤田医科大学大学院保健学研究科 医療科学専攻 博士後期課程は、本学の建学の理念である「獨創一理」に基づき、大学院修士課程での専門的知識と技術に加えて、現代医療の高度化、複雑化、多様化に幅広く対応するために、医療科学に共通する高度な学術的基盤を修得することを目的とする。さらに、各医療科学分野における次世代を担える独創的な研究能力と豊かな人間性を備え、大学・研究所などにおいて活躍できる教育者、研究者、指導者を育成することを教育目標とする。

アドミッション・ポリシー(入学者受入れ方針)

 保健学研究科 医療科学専攻博士後期課程において次のような人材を求めます。
(1)保健医療科学を基盤とする各分野において、科学的根拠を探求し様々な課題を解決するために研究を志す者。
(2)各自の研究テーマに関する新たな知見や技術の開発を通して真理を探究する熱意のある者。
(3)教育者、研究者、指導者を目指す志向力のある者。
(4)研究成果を発表し、保健医療科学の発展に寄与しようとする意欲の高い者。

性、人種、宗教、性的指向、社会経済的地位、身体能力の如何によって、入学に関する優先性が影響されることはありません。

カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)

保健学研究科 医療科学専攻博士後期課程にあっては、ディプロマ・ポリシーに掲げる能力を修得させるために、以下の方針に基づいて、基礎および専門的能力を高める講義・演習、および特別研究を体系的に科目配当し編成している。
(1)必修の共通(連携)科目は、各分野に共通する重要な医療科学の概念を広く学び、教育者、研究者、指導者としての学術基盤を育成する。
(2)専攻分野に関する科目である特論と演習は、医療専門職としての知識や技術をさらに深め、課題探求と解決能力を育成する。
(3)特別研究は、先端的新知見の探求や、理論構築及び技術開発における課題の解決を通して、国際誌に投稿可能な論文作成能力を育成する。
(4)分野合同研究セミナーは、すべての特別研究担当教員を含めた議論を通じて、発表、提案能力を育成する。

ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)

保健学研究科 医療科学専攻博士後期課程にあっては所定の年限以上在籍して、教育の理念と目的に沿って設定した所定の単位を修得し、論文審査及び最終試験において、以下の能力を身につけていることを学位認定の基準とします。
(1)先行研究を基盤として独自の切り口で分析し、問題提起する能力。
(2)問題解決に向けて適切な解析方法や分析手法を選択実行する能力。
(3)各分野の専門性を高める発見や新たな技法、理論を提案する能力。

領域・分野

医療検査科学領域(生体情報検査科学分野)

近年、ゲノム医療、再生医療等の医療の変革が目覚ましく、その診断や治療の発展には、臨床検査が不可欠である。こうした急激な変化とともに、高度化、専門化する臨床検査に柔軟に対応できる検査科学者が求められている。この領域では、修士課程の教育・研究内容を基盤に、生体情報を把握し、①最新の検査技術や検査機器の開発、②生体内物質の分子レベルでの生化学的分析法、遺伝子増幅定量技術法、形態学的検査法及び細胞診断技術法等を用いた病因・病態解析、③環境生理学、心身医学的な側面からの生体解析等の研究を通して、医療の変化に対応できる優れた検査科学者を育成し、教育者、研究者、指導者へと発展しうる人材を育成することを目的とする。

本領域の中心となる科目は、「生体情報検査科学特論」、「生体情報検査科学演習Ⅰ(検査展開学)」、「生体情報検査科学演習Ⅱ(分子病態解析学)」、「生体情報検査科学演習Ⅲ(生体情報生理科学)」、「生体情報検査科学特別研究」である。

放射線科学領域(医用量子科学分野)

近年、X線CT、Interventional Radiology (IVR)をはじめとするX線診断技術、磁気共鳴画像 (MRI)診断技術、Positron Emission Tomography (PET)を含む核医学診断技術、高精度放射線治療・重荷電粒子線治療技術など、医用放射線装置・技術の発展には目覚ましいものがある。この領域では、修士課程の教育・研究内容を基盤に、デジタル医用画像から得られる生体情報を基に人体構造・機能を解析して治療計画に応用する研究、3D・4D画像を基に患部に放射線を集中させる照射法の研究、放射線画像の向上と患者被ばく線量低減の両立化に関する研究等を行う。これらの研究を通して、急速に発展する放射線診断・治療装置に的確に対応でき、さらに高精度かつ安全な放射線医療の臨床応用の開発に貢献できる教育者、研究者、指導者を育成することを目的とする。

本領域の中心となる科目は、「医用量子科学特論」、「医用量子科学演習」、「医用量子科学特別研究」である。

リハビリテーション科学領域(リハビリテーション療法科学分野)

近年、障害の予防・構造・メカニズム等の運動制御計測科学の発展が目覚ましい。一方、医療現場の諸課題に対して科学的根拠に基づいた医療が提供でき、課題解決型高度医療人としてのリハビリテーション療法士(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等)の育成が急務である。この領域では、修士課程の教育・研究内容を基盤に、患者の活動障害に焦点をあてた生体運動情報の取得・解析に関する研究、課題解決型高度医療人としてのリハビリテーション療法士教育に関する研究等を行う。これらの研究を通して、リハビリテーション療法の諸問題を科学的な創意工夫で解決し、臨床技術を発展させ得る教育者、研究者、指導者を育成することを目的とする。

本領域の中心となる科目は、「リハビリテーション療法科学特論Ⅰ(リハビリテーション教育科学)」、「リハビリテーション療法科学特論Ⅱ(運動制御計測科学)」、「リハビリテーション療法科学演習Ⅰ(リハビリテーション教育科学)」、「リハビリテーション療法科学演習Ⅱ(運動制御計測科学)」、「リハビリテーション療法科学特別研究」である。

リハビリテーション療法科学 博士後期課程について詳しく

リハビリテーション教育科学について

“リハビリテーション教育科学”は、学生の卒前教育、未熟な新人療法士の卒後教育、そしてこれらを指導するための指導者養成教育を研究対象とし、リハビリテーション医療に携わる各種療法士全体の教育における特性および有効な介入手法について科学的解明を目指す。本学の修士課程(リハビリテーション教育科学分野)においては、学生教育、新人療法士教育、指導者教育に関する理解を深めるとともにその一部の解明について研究を行っている。

また一方で、リハビリテーション療法科学を専攻する院生にとっては、リハビリテーション教育科学を直接の研究対象とするかの如何に関わらず、理解を深めておくことは有益である。すなわち、本専攻が取り扱う研究において、験者または被験者の対象を療法士とする機会は多く、研究に参加した療法士がどのような教育を受けてきたか、また今後対象とする療法士がどのような教育を受けることが予想されるのかについては、研究結果の解釈、または今後の研究計画立案において重要である。博士課程の講義であるリハビリテーション療法科学特論Ⅰにおいては、理学療法士教育における臨床技能の標準化とObjective Structured Clinical Examination(OSCE)の信頼性・妥当性、効果についての最新知見を学び、学生、新人理学療法士、臨床実習指導者へのそれぞれ適した教育方法について、講義及びディスカッションを行いながら問題点、今後のあるべき方向性等の議論を深めることを目的とする。またリハビリテーション療法科学演習Ⅰでは、より効果的な教育手法を明らかにするため、演習を通して検証することを目的とする。具体的には、理学療法士におけるObjective Structured Clinical Examination(OSCE)を用いた臨床技能教育を通して考える。また、臨床実習を効果的に実施するため、実習指導者養成のための教育内容を考える。さらに、大学教員と実習指導者との連携を強化した新たな教育指導体制を考える。

看護医療科学領域(看護融合科学分野)

近年、疾病構造の変化や医療需要の急増に伴い、保健医療福祉を取り巻く環境は大きく変貌を遂げており、保健医療技術は高度化するとともに専門分化している。医療は病院から地域へ、医療者中心から地域住民主体へ移行しており、地域包括ケアシステムの構築や強化が求められている。このような医療・保健・福祉システムの変化に応えるため、看護学分野への需要と期待は高まっており、多様化・複雑化する医療・介護ニーズに応えられる看護職の育成が必要である。この領域では、修士課程の教育・研究内容を基盤に、人々の健康、取りまく環境、身体的・精神的・心理的・社会的影響について、理論を通して地域で生活する人々の健康の保持・増進、健康回復を考え、様々な理論、研究デザイン、研究方法を用いて、医療、保健活動にエビデンス・ベースト・プラクティスを実装・普及させる実装科学に関する研究等を行う。これらの研究を通して、臨床上の看護問題を解決し、看護学におけるエビデンスの構築とその社会実装に向けた教育者、研究者、指導者を育成することを目的とする。

本領域の中心となる科目は、「看護融合科学特論Ⅰ(臨床実践看護学)」、「看護融合科学特論Ⅱ(広域実践看護学)」、「看護融合科学演習Ⅰ(臨床実践看護学)」、「看護融合科学演習Ⅱ(広域実践看護学)」、「看護融合科学特別研究」である。