
てんかん
Epilepsy
てんかんについて
てんかんは、繰り返し発作が起こる脳の慢性疾患です。多くの場合、発作は突然始まり、さまざまな症状を伴い、数分以内におさまります。てんかんは、小児から成人まで幅広い年代で見られ、特に小児や高齢者に多く発症します。日本には約100万人以上のてんかん患者がいるといわれています。
てんかんと診断された場合、主な治療法は抗てんかん発作薬の内服です。ただ、抗てんかん発作薬を何種類か服用しても発作が止まらないケースが約20%あり、その場合には外科的治療を検討することがあります。てんかんには、脳の一部から発作が起こる「焦点起始発作」と、脳全体が興奮する「全般起始発作」があり、外科治療の対象になりやすいのは焦点起始発作ですが、全般起始発作でも手術の適応となる場合があります。
外科的治療を検討する際には、長時間ビデオ脳波モニタリングという検査を入院して行います。通常の脳波記録をビデオと同時に長時間連続して行い、発作時の症状や脳波、発作がない期間のてんかん性放電を記録します。これにより、てんかんの診断を確定し、発作型を確認します。
てんかんの外科治療
てんかんが外科治療の対象となることは広く知られていないかもしれませんが、海外では1800年代後半から行われてきました。藤田医科大学でも2020年よりてんかんの外科治療を開始しています。
てんかんの外科治療には、発作を止めることを目指す根治手術と、発作の回数を減らすことや程度を軽減することを目的とした緩和手術があります。いずれの場合も、意識を失ったり、転倒したりする発作を消失または改善させることで、溺水、転落、やけどなどのリスクを軽減し、精神発達遅滞や記憶力低下などの高次脳機能障害の改善を目指しています。
焦点起始発作に対する手術では、発作の起こる場所を特定するためにまずは頭蓋内電極留置術を行い、その後に発作を止めるもしくは緩和するための焦点手術を行うことがあります。発作の症状や各種検査に基づき、てんかんの焦点と考えられる脳の部位に電極を直接留置し、長時間ビデオ脳波モニタリングで発作の発生源を特定します。2020年には、開頭せずに脳内に電極を挿入するロボット支援手術が保険収載され、当院でも現在はこのロボット支援手術を導入しています。
このように、他の脳神経外科領域と同様、てんかん手術領域においても体への負担が少ない低侵襲の手術が進んでいます。当院でも、ロボット支援手術による頭蓋内電極留置術や、内視鏡を用いた焦点手術を積極的に行っています。また、脳には言語や運動など重要な機能があるため、これらの機能をできるだけ守るために覚醒下手術による焦点手術を行うことがあります。この覚醒下手術では、手術中に患者さんに話しかけたり、簡単な動作をお願いしたりしながら安全に進めることで、大切な機能を温存することを目的としています。外科治療の適応に関しては、ぜひ当院にご相談ください。