プレスリリース

水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化により、高齢者の無菌性髄膜炎が増加していることを世界で初めて発見

帯状疱疹ワクチンが、無菌性髄膜炎の発症予防にもつながる可能性を示唆~ 

藤田医科大学(愛知県豊明市)小児科学 吉川哲史教授と三浦浩樹講師、吉兼綾美助教らの研究グループは、同脳神経内科学と共同で2013年以降、成人の中枢神経感染症患者の脳脊髄液中ヘルペスウイルスDNA検出を実施してきました。近年、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)再活性化に伴う帯状疱疹の増加が注目されていますが、同様に脳脊髄液中のVZV DNA検出率が上昇してきていることに気づき、これまでの成績をまとめて解析した結果、2019年から2022年ではVZV DNA陽性の髄膜炎患者が集積していることが明らかになりました。これらの成果により、今後、帯状疱疹ワクチンによる帯状疱疹の予防だけでなく無菌性髄膜炎の発症予防効果についても解析していく必要があると思われます。

本研究成果は、米国CDC(疾病予防管理センター)の学術ジャーナル「Emerging Infectious Diseases」(2024年12月号[11月13日発行])で発表されました。
論文URL :https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/30/12/24-0538_article

研究成果のポイント

  • VZV再活性化により帯状疱疹だけでなく高齢者の無菌性髄膜炎が増加していることを世界で初めて発見
  • 帯状疱疹ワクチンが帯状疱疹の予防だけでなく、無菌性髄膜炎の発症予防につながる可能性を示唆
 

背景

小児科学では、脳神経内科学と共同で、小児のみならず成人についても中枢神経感染症の病原診断として、独自のリアルタイムPCR法を用いて脳脊髄液中のヘルペスウイルスDNAモニタリングを長年にわたって継続してきました。その中で近年、高齢者のVZV DNA陽性例が多いことに気づき、帯状疱疹同様、高齢化などの様々な要因によりVZV関連髄膜炎例が増えているのではないかと考えました。帯状疱疹患者数の増加は、我が国のみならず世界中から報告されていますが、VZV再活性化に伴う無菌性髄膜炎が増加していることは未だ報告されていませんでした。
 

研究手法・研究成果

藤田医科大学病院では2013年以降、中枢神経感染症が疑われた患者の脳脊髄液からDNAを抽出し、リアルタイムPCR法でヘルペスウイルスDNA定量を行っており、その結果を実際に臨床現場へリアルタイムにフィードバックし、診療に役立てていました。今回、そのデータをまとめて後方視的に解析し、2019年以降にVZV DNA陽性患者が集積しているかどうか統計学的に解析するとともに、2013年から2018年と2019年から2022年の2群間で臨床像を比較解析しました。
 

今後の展開

高齢化に伴って帯状疱疹患者の増加が問題となり、帯状疱疹予防ワクチンの定期接種化に向けた議論が深まる中、最近は海外からもVZV再活性化が脳梗塞や認知症のリスク上昇につながることが報告されてきています。特に、中枢神経系へのVZV侵入が認知症リスク上昇の重要なリスク因子となるといった報告もあるため、今後はVZV再活性化に伴う無菌性髄膜炎の疾病負荷を明らかにするとともに、帯状疱疹ワクチンによるVZV関連無菌性髄膜炎の発症予防効果についても検証する必要があります。

文献情報

論文タイトル

Increase in Adult Patients with Varicella Zoster Virus–Related Central Nervous System Infections, Japan

著  者

吉兼綾美1, 三浦浩樹1, 島さゆり1, 松永眞章1, 石丸聡一郎2, 東本祐紀1, 河村吉紀1, 小澤慶1, 吉川明子1, 植田晃広1, 太田充彦1, 渡辺宏久1, 武藤多津郎1,吉川哲史1

所  属

1 藤田医科大学
2 刈谷豊田総合病院

掲載誌

Emerging Infectious Diseases

掲載日

2024年11月13日発行 

DOI