大豆リゾレシチンで塩分の取りすぎによる 高血圧と認知症を予防できることを発見
藤田医科大学医療科学部レギュラトリーサイエンス分野 毛利彰宏教授、大学院生 窪田悠力さん(現 精神・神経病態解明センター助教)、國澤和生准教授、鍋島俊隆客員教授、齋藤邦明学部長および、辻製油株式会社 辻威彦社長、籠谷和弘次長らの研究グループは、大豆レシチン※1の血圧低下作用に着目。レシチンを加水分解し、乳化作用を強化させた大豆リゾレシチン※2の高塩分負荷マウスの行動薬理的・神経化学的解析を通して、塩分の取りすぎによる高血圧と認知症の予防効果を検証しました。
この結果、大豆リゾレシチンが高塩分負荷による小腸での炎症や、前頭皮質でのタウタンパク質のリン酸化を抑制し、血圧上昇や認知機能低下を予防することを突き止めました。本研究成果は産学連携で特許取得をしています。これらの成果により、大豆リゾレシチンを摂取することで、塩分を多くとりがちな日本人の認知症予防が期待されます。
本研究成果は、学術ジャーナル「Neurochemistry International」で発表され、オンライン版が2024年9月12日に先行して公開されました。
この結果、大豆リゾレシチンが高塩分負荷による小腸での炎症や、前頭皮質でのタウタンパク質のリン酸化を抑制し、血圧上昇や認知機能低下を予防することを突き止めました。本研究成果は産学連携で特許取得をしています。これらの成果により、大豆リゾレシチンを摂取することで、塩分を多くとりがちな日本人の認知症予防が期待されます。
本研究成果は、学術ジャーナル「Neurochemistry International」で発表され、オンライン版が2024年9月12日に先行して公開されました。
研究成果のポイント
- 大豆リゾレシチンが塩分の取りすぎによる脳内でのタウタンパク質のリン酸化を抑制し、認知機能低下を予防できることを世界で初めて発見
- 大豆リゾレシチンが塩分の取りすぎによる小腸での炎症を抑え、血圧を下げることを証明
- 大豆リゾレシチンが塩分の取りすぎによる高血圧と認知症を予防できる可能性を示唆
背景
塩分の過剰摂取は高血圧や認知機能低下と関連しており、その一因として、免疫細胞の活性化が引き起こす塩分感受性高血圧や、炎症による血管障害が挙げられます。特に、腸内での免疫応答が炎症性サイトカインの増加を促し、認知機能に悪影響を及ぼします。また、誘導型一酸化窒素合成酵素 (iNOS) の増加が血管機能障害を引き起こし、高血圧や認知機能障害に関与します。さらに、タウタンパク質の過剰リン酸化が認知機能障害を促進することが報告されています。リゾレシチンは、油脂の消化吸収を促進し、血圧や認知機能への改善効果が示唆されていますが、塩分過剰摂取による高血圧や認知機能障害に対する大豆リゾレシチンの影響は不明でした。本研究では、大豆リゾレシチンが、塩分の過剰摂取による高血圧や認知機能低下、末梢の炎症に与える効果をマウスモデルで検証しました。研究手法・研究成果
マウスに塩分の高い水を長期間飲ませると、血圧の上昇を伴い、腸内の炎症やアルツハイマー病患者の脳で認められるようなタウのリン酸化が増加し、昨日触れた物体がどれか分からなくなる物体認知記憶の低下が認められました。そこで、大豆リゾレシチンを給水瓶から飲ませるとこれら塩分の過剰摂取による腸内の炎症やタウのリン酸化が低下するとともに、高血圧や物体認知記憶の低下が認められませんでした。今後の展開
これらの成果により、大豆リゾレシチンを摂取することで、塩分を多くとりがちな日本人の高血圧や認知症予防が期待されます。大豆リゾレシチンの本効果について、藤田医科大学と辻製油株式会社で特許を共同出願しており、サプリメント等への商品化が期待されます。用語解説
※1 大豆レシチン
大豆から抽出される天然のリン脂質(レシチン)であり、主にホスファチジルコリンという成分が含まれています。食品産業では、乳化剤としてチョコレートやマーガリンなどに使われます。コレステロールのバランスを保つのに役立つとされ、サプリメントとしても人気です。※2 大豆リゾレシチン
大豆レシチンを酵素により加水分解を行ったものであり、主にリゾホスファチ ジルコリンという成分が含まれています。食品産業に加えて、化粧品にも使われ、皮膚の保湿や滑らかさを保つ役割を果たします。また、脳の健康をサポートする効果も期待されています。文献情報
論文タイトル
Soy lysolecithin prevents hypertension and cognitive impairment induced in mice by high salt intake by inhibiting intestinal inflammation著者
窪田悠力1、國澤和生1、長谷川眞也1、倉橋仁美1、籠谷和弘2、藤本祐希2、林彰人2、園 良治2、辻 威彦2、齋藤邦明3、鍋島俊隆4、毛利彰宏1
所属
1 藤田医科大学医療科学部レギュラトリーサイエンス分野2 辻製油株式会社
3 藤田医科大学医療科学部先進診断システム開発分野
4 藤田医科大学医療科学部健康医学創造共同研究部門