プレスリリース

東京以外で初、国内3カ所目の母乳バンクを開設

藤田医科大学病院(愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪1番地98、病院長:白木良一)は、日本財団母乳バンク(東京都中央区日本橋小網町17番10号、理事長:水野克已)および日本母乳バンク協会(東京都中央区日本橋久松町4番4号、代表理事:水野克已)の活動に賛同し6月5日、国内3カ所目となる母乳バンク「藤田医科大学病院 日本財団母乳バンク」を開設しました。当院が、災害に備えたドナーミルクの新たなストック拠点として機能することで、供給を途切れさせない体制づくりに貢献できると考えます。

災害時でも供給を止めないために──国内3カ所目の母乳バンク

日本では、年間約7000人の赤ちゃんが1500g未満で生まれ、うち約5000人がドナーミルクを必要としているといわれています。一方で、国内における母乳バンクの活動は、「一般財団法人 日本財団母乳バンク」と、日本母乳バンク協会がベビー用品大手のピジョン株式会社の協力で運営する「日本橋 母乳バンク」の2カ所にとどまり、いずれも東京都中央区を拠点とするため、首都直下型地震などの災害時には、ドナーミルクで命をつないでいる赤ちゃんたちへの供給が途絶える可能性があることが課題でした。これらのリスクを分散し、ドナーミルクを安定して提供できる体制を整えるため、両団体の理事を務める水野克已昭和大学小児科学教授が藤田医科大学病院に国内3カ所目となる母乳バンクの設置を提案。クラウドファンディング等で資金を募り、今回の開設に至りました。
「藤田医科大学病院 日本財団母乳バンク」には、約2週間分(約50ℓ)のドナーミルクが保存できる施設を整備。通常時は東海地方のNICU(新生児集中治療室)へ提供し、災害などで東京のライフラインが停止した際には当バンクから全国のNICUに発送します。尚、当バンクの設置は日本母乳バンク協会が担い、運営は日本財団母乳バンクおよび藤田医科大学病院となります。

母乳バンクとは?

なんらかの事情で母乳が出ない、またはあげられない母親と赤ちゃんに対し、母乳がたくさん出る母親から母乳を提供してもらい、低温殺菌するなどして安全に管理された「ドナーミルク」を必要な赤ちゃんに無償で提供する活動です。2014年に水野克已昭和大学小児科学教授の呼びかけで始まりました。現在、藤田医科大学病院を含めて全国78の連携病院のNICUが、日本財団母乳バンクまたは日本橋母乳バンクのいずれかよりドナーミルクの提供を受けています。
欧米では国営もあるなど一般的となっている母乳バンクですが、日本ではまだ認知度が低く、普及に至っていないのが現状です。また、ドナーや運営などは善意によるため、資金の確保が大きな課題となっています。
藤田医科大学病院 日本財団母乳バンクの設備について説明する責任者の宮田昌史教授

1500g未満の極低出生体重児が対象

 ドナーミルクの提供対象となるのは、NICUで治療を受けている1500g未満の極低出生体重児で、年間5000人に及びます。低体重で生まれた赤ちゃんは消化管が未発達なため、人工乳では上手に消化・吸収することができないことがあります。それに対しドナーミルクは、元来母乳に含まれている消化酵素や消化管ホルモンの作用が消化・吸収を助け、また免疫成分も含まれるため、生死に関わる「新生児壊死性腸炎」のリスクを約1/3に減らすことが分かっています。
ドナーミルク需要の高まりを受け、2019年12月には厚生労働省が母乳バンクを全国に整備する方針を発表。2020年度より医学的効果や衛生基準についての調査研究が進められています。