臨床栄養学講座 飯塚勝美教授らの研究成果がMDPI(スイス・バーゼル)の学術ジャーナル「Nutrients」に掲載されました
シンデレラ体重がもたらす健康リスク
若い女性のモデル体型指向に警鐘
~本学教職員44名を対象にした解析結果より~
若い女性のモデル体型指向に警鐘
~本学教職員44名を対象にした解析結果より~
藤田医科大学(愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1番地98)臨床栄養学講座の飯塚勝美教授、健康管理部の成瀬寛之教授らの研究グループは、若年女性の栄養状態に着目し、藤田医科大学の教職員(20−39歳女性1457名)のうち若年かつ低体重(BMI<17.5)を認める健康診断受診者44名に対して、栄養評価を行いました。この結果、若年かつ低体重をきたす女性はビタミン欠乏を含めた栄養障害に陥りやすいことを明らかにしました。
女性における低体重は不妊や低出生体重児の原因になり、社会的に取り組むべき課題といえます。これらの成果により、今後若年女性に対して、特に魚や野菜などを豊富に含む食事の推奨など食生活に関する啓発を積極的に行う必要があります。
本研究成果は、MDPI(スイス・バーゼル)の学術ジャーナル「Nutrients」にてオンライン版が2023年5月7日に公開されました。
研究成果のポイント
- 健康診断で見逃されがちな若年女性の低体重について、栄養状態を評価した。
- 低体重が体に悪いことは想像できるが、現実にどうなっているのか実態は不明であった。
- 若年かつ低体重をきたす女性はビタミン欠乏を含めた栄養障害に陥りやすいことを明らかにした。
- 若年かつ低体重の女性には、握力の低下、コレステロールやリンパ球の低下といった栄養状態の低下に加え、体内のビタミンD、ビタミンB12、葉酸などのビタミン低下が見られた。
背景
SNSを通じ、モデル体型にあこがれる若い女性の間で”シンデレラ体重”が話題になっています。”シンデレラ体重”とはBMI18を理想とする体重のことで、一般的に低体重にあたります。健康リスクとして不妊、骨粗鬆症、耐糖能障害、低出生体重児、免疫力の低下、低体温などを引き起こすことがありますが、低体重のみで病院を受診することは少ないため、これまでその実態が不明でした。研究手法・研究成果
- 今回、藤田医科大学の教職員を対象とした健康診断で低体重が占める比率は、20−39歳の女性では16.8%、20−39歳の男性では4.5%と圧倒的に女性の方で多かった。
- 若年低体重女性の特徴としては、握力が低い、コレステロールやリンパ球といった栄養マーカーが低いことが挙げられた。
- 次に、低体重に関して二次健診を行い、栄養評価外来を受診された教職員44名についてさらに調べたところ、血中プレアルブミン、リンパ球、コレステロール濃度が低く、栄養状態の悪化が示唆された。
- 食事内容では、食物繊維を含めた炭水化物、鉄分、カルシウムの摂取の低い方が9割程度見られた。
- ビタミンB12、葉酸※2やビタミンD※3は摂取量不足と一致して、これらの血中濃度の低下が見られた。
モデル体型(”シンデレラ体重”)な20-39歳の女性
栄養障害- 握力低下
- コレステロール低下(59%)
- リンパ球数低下(32%)
- プレアルブミン低下(34%)
ビタミン欠乏
- ビタミンD欠乏(98%)
- ビタミンB1欠乏(4.6%)
- ビタミンB12欠乏(20%)
- 葉酸欠乏(14%)
今後の展開
- 若年女性は今後妊娠出産を控えており、低体重のもたらす健康リスクを再度周知する必要がある。
- 特に一人暮らしの方では魚料理や野菜の摂取が不足がちになるので、魚(ビタミンB12、ビタミンD)や野菜(食物繊維や葉酸)などを豊富に含む食事を推奨するなど、食生活に関する啓発を合わせて行う必要がある。
- 今後は、過去から遡って栄養障害を伴う低体重の頻度を調査し、環境要因の寄与を明らかにする。
- 同時に、若年女性の低栄養に関する全国的な調査が必要と考えられる。