消化器内科学 医科プレ・プロバイオティクス学の研究グループの研究成果が国際誌「diagnostics」に掲載されました
膵癌患者の腸内環境における新たなメカニズムを解明
~早期膵癌の発見に対する診断技術の開発に期待~
~早期膵癌の発見に対する診断技術の開発に期待~
藤田医科大学(愛知県豊明市、学長:湯澤由紀夫)の消化器内科学講座、医科プレ・プロバイオティクス講座の研究グループは、膵癌の早期診断に必要な様々な臨床的・研究的視点に関し包括的な研究報告を行いました。膵癌は、全世界的に増加している癌の一つであり、日本も例外ではありません。治療方法は、外科手術、化学療法、放射線療法など様々な研究が行われていますが、現時点では根治的治療は極めて難しく全体として膵がんの5年後生存率は極めて低い状況です。一方、直径10mm以下の膵癌の場合、5年生存率は80%以上と良好であることがわかっています。つまり、膵癌は、早期に発見することが非常に重要であるといえます。
本稿では、膵癌の早期発見のために必要な画像診断技術や血液中に放出される癌由来のCirculating tumor DNA(ctDNA)の研究などを包括的に報告しました。
本研究成果は国際誌「diagnostics」(2023年1月6日付オンライン版)に掲載されました。今後、様々な画像診断技術を複合的に組み合わせることや、膵癌特有のctDNAを指標とするリキッドバイオプシー注1の技術を研究することで、本学独自の膵癌早期発見技術の開発につなげていく予定です。
研究成果のポイント
- 膵癌の早期診断を達成するためには画像診断技術のさらなる発展、ctDNAを指標としたリキッドバイオプシー技術の発展の両面からのアプローチが必要であることを示しました。
- これまでの研究において我々は、膵癌患者の腸内細菌叢の特徴を明らかにしました。今後は腸内細菌叢解析などの研究成果を画像診断技術・リキッドバイオプシー技術と組み合わせた藤田医科大学オリジナルの研究により、膵癌の早期診断技術の確立をめざします。
背景
膵癌の世界的な増加とともに、その治療方法の研究も大幅に進んでいます。一方、現状では根治を目指すためには、手術が最も有力な手段です。そして最も重要なのは、早期に膵癌を発見するための早期診断技術です。現在、新たな画像解析技術は目覚ましい進歩を遂げていますが、未だ早期発見の明確な技術は確立されていません。そのため、血液中のctDNAを指標としたリキッドバイオプシーの技術が早期診断技術として注目されています。これら画像診断技術とリキッドバイオプシーの技術を複合的・包括的に説明した研究論文は多くなく、今回、膵癌の早期診断に関する多様な研究報告を包括的にまとめるとともに、膵癌の早期発見のために必要な研究に関する提案を行う研究論文を投稿しました。今後、画像診断技術、リキッドバイオプシーによるctDNAの検出技術などを複合的に組み合わせた藤田医科大学オリジナルの研究により、膵癌の早期診断技術の確立につなげてきたいと考えています。
今後の展開
以前の研究において、我々は膵癌患者の腸内細菌叢の解析を行い健常人と比べ特有の変化を起こすことを証明し、現在は、腸内環境を改善する素材である「プレバイオティクス注2・プロバイオティクス注3」を投与することで膵癌患者のQOL改善を図る研究を行っています。将来的には、膵癌の早期発見技術をこれらの研究成果とつなげることで患者のQOL改善を明確化する研究にまで発展させていく予定です。
用語解説
注1)リキッドバイオプシー
血液・唾液・尿・脳脊椎液・腹水など体液のサンプルを用いたゲノム解析検査の総称
注2)プレバイオティクス
体に存在する良い効果を発揮する菌を選択的に増やす食品成分。オリゴ糖・食物繊維など。
注3) プロバイオティクス
体に良い効果を発揮する生きた菌。ビフィズス菌や乳酸菌など。文献情報
論文タイトル
Current Status of the Diagnosis of Early-Stage Pancreatic Ductal Adenocarcinoma日本語タイトル
早期膵管腺癌の診断の現状について著者
中岡和徳1、大野栄三郎1、川部直人1、葛谷貞二1、舩坂好平1、中川義仁1、長坂光夫1、石川卓哉2、渡邉彩子1、栃尾巧3、宮原良二1、柴田知行1、川嶋啓揮2、橋本千樹1、廣岡芳樹1所属
1 藤田医科大学 医学部 消化器内科学講座2 名古屋大学大学院医学系研究科医学部医学科 消化器内科学
3 藤田医科大学 医科プレ・プロバイオティクス講座