消化器内科学 医科プレ・プロバイオティクス学の研究グループの研究成果が国際誌「Journal of Functional Foods」に掲載されました
シンバイオティクスにおける新たなメカニズムを解明
~シンバイオ ティクスを用いた様々な疾患のQOL改善に期待~
~シンバイオ ティクスを用いた様々な疾患のQOL改善に期待~
藤田医科大学(愛知県豊明市、学長:湯澤由紀夫)の消化器内科学 医科プレ・プロバイオティクス学の研究グループは、プレバイオティクス注1とプロバイオティクス注2を併用した「シンバイオティクス注3の新たなメカニズムの一端を解明しました。プレバイオティクスとは、「腸内に存在する常在菌を選択的に増やす成分」であり食物繊維やオリゴ糖が知られています。プロバイテオティクスとは、「体に良い効果を発揮する生菌」であり、乳酸菌やビフィズス菌が知られています。これらのプレ・プロバイオティクスを一緒に摂取することをシンバイオティクスといいます。様々なシンバイオティクスの組み合わせが、疾患改善のための研究や日常的な生活には見られますが、特定のプレバイオティクスが併用するプロバイオティクスにどのような影響を及ぼすかに関しては、十分な研究はなされていませんでした。
今回の研究は、アトピー性皮膚炎や生活習慣病改善効果が知られている3糖のプレバイオティクスである「ケストース」と、赤ちゃんから成人まで存在しプロバイオティクスとして広く利用されているビフィズス菌である「Bifidobacterium longum(ビフィドバクテリウムロンガム)」を組み合わせて摂取することで、互いにシナジー(複数のものがお互いに作用し合い効果や機能を高めること)を発揮し腸内環境を改善することを発見しました。オリゴ糖やビフィズス菌の多様な疾患改善に及ぼす有用性は世界中で証明されており、今後、このシンバイオティクスの組み合わせは、従来のプレ・プロバイオティクスの効果と比較し、様々な疾患のQOL改善によりクリアに効果を発揮する可能性があります。
本研究成果は国際誌「Journal of Functional Foods」(2023年1月5日付オンライン版)に掲載されました。
近年の研究において、癌の治療に使用される免疫チェックポイント阻害剤の効果は腸内のビフィズス菌の存在により左右されることやビフィズス菌を投与することで免疫チェックポイント阻害剤の効果がより発揮されることが報告されています。本学では、本研究成果をもとに、腸内のビフィズス菌をはじめとする有用菌により効果を発揮する独自の「プレバイオティクス・プロバイオティクス」の組み合わせを調べ、様々な疾患治療時のQOL向上に関する研究に発展させていく予定です。
注1)プレバイオティクス:体に存在する良い効果を発揮する菌を選択的に増やす食品成分。オリゴ糖・食物繊維など。
注2)プロバイオティクス:体に良い効果を発揮する生きた菌。ビフィズス菌や乳酸菌など。
注3)シンバイオティクス:プレバイオティクスとプロバイオティクスを同時に使用することでシナジカルな効果を発揮する
研究成果のポイント
プレバイオティクス「ケストース」とプロバイオティクス「ビフィドバクテリウムロンガム」は、互いにシナジーを発揮し、腸内環境を改善する可能性があるシナジカルシンバイオティクスである可能性が示唆されました。免疫チェックポイント阻害剤の効果と、腸内ビフィズス菌並びにプロバイオティクスとしてのビフィズス菌の関係性は注目されており、今後、本研究から得られたシナジカルシンバイオティクスアプローチが癌の治療時の副作用軽減をはじめとしたQOL向上などに利用できる可能性があります。
背景
腸内環境への着目とともに、腸内環境を改善する成分であるプレバイオティクス、プロバイオティクスへの注目は日に日に高まっています。また、それらを併用したシンバイオテクスを用いた研究報告や製品開発も非常に活発に行われています。しかしながら、「どのプレバイオティクスをどのプロバイオティクスと組み合わせればいいのか?」という問いに対し未だ十分な研究成果はありませんでした。プレバイオティクス「ケストース」とプロバイオティクス「ビフィドバクテリウムロンガム」の組み合わせによる腸内での相乗効果に関するin vivoの研究は十分ではありませんでした。本研究では、これらの評価に適切なメソッドを考案しプレバイオティクスの選択性を実証することにより、マウスにおけるシンバイオティクスの組み合わせの相乗的な影響を明らかにするものです。
今後の展開
本研究により、シナジーを発揮するプレバイオティクスとプロバイオティクスの組み合わせが明らかとなりました。腸内のビフィズス菌の健全化やプロバイオティクスとしての投与により、癌の治療に使用する免疫チェックポイント阻害剤の効果に影響を与えるといった研究論文も報告されはじめており、今後、このシナジカルなシンバイオティクスは、様々な癌の治療時への併用につながる可能性があるのではないかと考えられました。文献情報
論文タイトル
The synergistic synbiotic potential of 1-kestose and Bifidobacterium longum in the mouse gut日本語タイトル
マウス腸内における1-ケストースとビフィドバクテリウムロンガムの相乗的なシンバイオティクスポテンシャルについて著者
渡辺彩子1、寺垣侑音1、北浦靖之1、栃尾 巧2所属
1 名古屋大学大学院 生命農学研究科2 藤田医科大学 消化器内科学講座((現)医科プレ・プロバイオティクス学講座)