肌の内部構造を可視化し、色ムラが生じるメカニズムを解明
紫外線による局所的な毛細血管の消失と拡張が赤色のムラを生じさせる
本学の応用細胞再生医学講座(教授:赤松 浩彦) 及び皮膚科学講座(教授:杉浦 一充)は日本メナード化粧品株式会社と共同で、肌の色ムラ(特に赤色のムラ)が生じるメカニズムについて研究を進めました。その結果、色ムラのある肌では局所的な毛細血管の消失と拡張が起こっていることを発見しました。さらに、その原因は紫外線によるものであることを突き止めました。今後は、今回の結果をもとに肌の色ムラを改善する美容技術や治療法の開発に役立ててまいります。
赤ムラが目立つ部分(頬の肌)と赤ムラが目立たない部分(腕の内側の肌)における肌内部の毛細血管の構造を特殊な顕微鏡(LC-OCT)を用いて比較したところ、赤ムラが目立たない部分では毛細血管が均一に分布しているのに対し、赤ムラが目立つ部分では毛細血管の分布が乱れて不均一になっていることがわかりました。この結果から、肌の赤ムラは毛細血管の不均一な分布が原因だと考えられました。
毛細血管の不均一な分布は、
赤ムラが生じる頻度が高い頬は紫外線を浴びやすいため、赤ムラの発生には紫外線の影響があると考え、毛細血管を構成する細胞である血管内皮細胞を用いてその発生メカニズムについて検討しました。その結果、紫外線によって毛細血管の維持に関与する受容体が減少する一方、拡張に関与する受容体が増加することを発見しました。すなわち、紫外線によって毛細血管の消失と拡張が同時に引き起こされ、その結果、毛細血管の分布が不均一になることが、赤ムラが生じるメカニズムと考えられました。
今後、本研究で得られた成果を、肌の色ムラで悩まれている人々のために、美容技術や治療法の開発に応用してまいります。なお、本研究成果は、「Journal of Dermatological Science」に掲載されました。
※1 LC-OCT: Line-field Confocal Optical Coherence Tomography、皮膚の内部構造を非侵襲的に高解像度で観察できる分析機器。
図1 非露光部と露光部の肌内部構造の違い
図2 UVAによる毛細血管の消失
図3 UVAによる毛細血管の拡張
本学の応用細胞再生医学講座(教授:赤松 浩彦) 及び皮膚科学講座(教授:杉浦 一充)は日本メナード化粧品株式会社と共同で、肌の色ムラ(特に赤色のムラ)が生じるメカニズムについて研究を進めました。その結果、色ムラのある肌では局所的な毛細血管の消失と拡張が起こっていることを発見しました。さらに、その原因は紫外線によるものであることを突き止めました。今後は、今回の結果をもとに肌の色ムラを改善する美容技術や治療法の開発に役立ててまいります。
赤ムラが目立つ肌では毛細血管の分布が不均一
肌の色ムラは、肌の美しさを低下させる要因のひとつです。今回の共同研究では、色ムラの中でも特に血液に由来する赤色のムラ(赤ムラ)に着目してその発生メカニズムについて研究を進めてきました。赤ムラが目立つ部分(頬の肌)と赤ムラが目立たない部分(腕の内側の肌)における肌内部の毛細血管の構造を特殊な顕微鏡(LC-OCT)を用いて比較したところ、赤ムラが目立たない部分では毛細血管が均一に分布しているのに対し、赤ムラが目立つ部分では毛細血管の分布が乱れて不均一になっていることがわかりました。この結果から、肌の赤ムラは毛細血管の不均一な分布が原因だと考えられました。
毛細血管の不均一な分布は、
紫外線による毛細血管の消失と拡張の同時発生が原因
赤ムラが生じる頻度が高い頬は紫外線を浴びやすいため、赤ムラの発生には紫外線の影響があると考え、毛細血管を構成する細胞である血管内皮細胞を用いてその発生メカニズムについて検討しました。その結果、紫外線によって毛細血管の維持に関与する受容体が減少する一方、拡張に関与する受容体が増加することを発見しました。すなわち、紫外線によって毛細血管の消失と拡張が同時に引き起こされ、その結果、毛細血管の分布が不均一になることが、赤ムラが生じるメカニズムと考えられました。今後、本研究で得られた成果を、肌の色ムラで悩まれている人々のために、美容技術や治療法の開発に応用してまいります。なお、本研究成果は、「Journal of Dermatological Science」に掲載されました。
参考
赤ムラが目立つ部位の毛細血管構造
被験者29人(26~61歳、平均年齢43歳)について、赤ムラが生じやすい露光部である顔面頬部と、赤ムラが生じにくい非露光部である前腕内側部の臨床写真を撮影しました。画像解析により、頬部では前腕内側部と比較して赤色のムラが目立つことを確認しました。また、肌を傷つけずに内部構造を観察できる LC-OCT ※1顕微鏡を用いて、頬部と前腕内側部の毛細血管の構造を比較しました。 その結果、赤ムラが目立たない肌(前腕内側部)では毛細血管が均一に存在しているのに対し、赤ムラが目立つ肌(頬部)では毛細血管が消失している部分と拡張している部分が混在し、毛細血管の分布が不均一になっていることが観察されました。このことから、赤ムラが目立つ肌では毛細血管が不均一になり血液に由来する赤色のムラ(赤ムラ)が生じやすく、また、その原因のひとつは紫外線であることが考えられました。※1 LC-OCT: Line-field Confocal Optical Coherence Tomography、皮膚の内部構造を非侵襲的に高解像度で観察できる分析機器。
図1 非露光部と露光部の肌内部構造の違い
UVAによる毛細血管消失のメカニズム
毛細血管の構造は、血管内皮細胞が移動(遊走)することで維持されています。そのため、血管内皮細胞の移動能力(遊走性)に関与するタンパク質(BMP4)及びその受容体(BMPR2)に着目しました。培養した血管内皮細胞に紫外線(UVA)を照射したところ、BMPR2の発現が低下しました。このことから、紫外線によってBMPR2の発現が低下することで血管を遊走させるBMP4を感知できなくなり、血管内皮細胞の遊走性が低下することで毛細血管が維持できずに消失すると考えられました。これを確かめるため、BMP4を用いて血管内皮細胞の遊走性を評価した結果、BMP4の存在下において、通常の血管内皮細胞と比較してUVAを照射した血管内皮細胞では遊走性が低下しました。以上のことから、露光部における毛細血管の消失は、UVA によるBMPR2の発現低下によって引き起こされると考えられました。
図2 UVAによる毛細血管の消失
UVAによる毛細血管拡張のメカニズム
毛細血管の拡張は、エンドセリン1(ET1)と呼ばれる物質がその受容体であるエンドセリン受容体B(ETBR)に結合することで引き起こされます。共同研究チームはこれまでに、血管内皮細胞にUVAを照射するとETBRの遺伝子発現が上昇することを報告しています※2。この現象が実際に毛細血管拡張に影響するのかを毛細血管モデルを用いて検証した結果、UVA を照射してET1を添加した場合、UVAを照射しなかった場合と比較して毛細血管が拡張することが確認されました。 以上のことから、露光部における毛細血管の部分的な拡張は、UVA によって血管内皮細胞のETBRの発現が増加することで引き起こされると考えられました。
※2 2021年2月25日リリース https://www.atpress.ne.jp/news/247312
※2 2021年2月25日リリース https://www.atpress.ne.jp/news/247312
図3 UVAによる毛細血管の拡張
赤ムラが生じるメカニズム
以上の結果から、肌の赤ムラは、紫外線によって毛細血管の消失と拡張が同時に引き起こされ、その結果、毛細血管の分布が不均一になることで生じると考えられました。
図4 肌に赤ムラが生じるメカニズム