手術を受けるがん患者に無料ゲノム検査
藤田医科大学(愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1番地98 学長:湯澤由紀夫)は、藤田医科大学病院でがん手術を受ける患者さん1000人(予定)を対象に、無料がんゲノム解析を開始しました。無料での実施は、慶應義塾大学病院に続いて全国で2例目、中部地方では初の取り組みとなります。
がん細胞の遺伝子変異を特定することで、効果が見込める薬の選択肢を増やせる可能性があります。本学では、多くのがんゲノム情報を蓄積してデータベース化し、それらを解析することによって、再発リスクの予測や患者さん一人ひとりに合わせた個別化治療(精密医療:プレシジョンメディシン)、さらには画期的な治療法の開発につなげ、地域医療を含めた日本のがん医療に貢献することをめざします。
本学で実施する無料がんゲノム検査について
<対 象> 藤田医科大学病院でがん手術を受ける患者さん(年齢・性別不問)1000人
<がん種> 胃がんや肺がんなどの固形がん全般(詳細は各診療科で相談)
<検査方法> 患者さんから採取したがん組織を「PreSSision Rapid検査(160種類のがん遺伝子変異を検出するがん遺伝子パネル検査)」で解析
<費用負担> 臨床研究として実施するため、患者さんの自己負担は発生しません。
実施の背景
がんは遺伝子の変異が原因となって引き起こされる病気です。遺伝子変異は患者さん一人一人の体質や病状によって異なり、治療の戦略を練るにはがんゲノム検査よって遺伝子情報を調べるのが理想的といえます。しかしながら2019年に保険適応になったがんゲノム検査は「標準治療が終了した再発がん、ないし発症率がまれな希少がん」に限定されており、治療開始時に検査を受けていただくことが難しいため、せっかくの貴重ながんゲノム情報を治療に生かしきれないことが大きな課題でした。また、保険適用外の患者さんは数十万円の自己負担が必要であり、経済的な問題も普及の壁となっています。
がんゲノム医療連携病院に指定されている藤田医科大学病院では、今回の臨床研究の実施に向けて最新の次世代シークエンサーNextSep2000を導入。院内で迅速にゲノム解析できる体制を整え、臨床研究として患者さんの負担をゼロにすることで、これらの課題解決に取り組んでいきたいと考えます。
藤田医科大学のがん研究について
本学では、がん研究の発展および、予防・診断・治療の領域すべてにおける革新的ながん診療をめざし、2019年4月に「がん医療研究センター」を開設。今回のゲノム検査に係る研究は、同センターが主導して進めます。
8月1日にセンター長に就任する予定の佐谷秀行センター長代行(現・慶應義塾大学病院副院長)は、「がんゲノム検査を行うことでがんの詳細を把握することができ、治療の選択肢が増える可能性がある。趣旨にご賛同いただける患者さんには、積極的にお願いしていきたい」と話しています。