研究

シクレソニド(オルベスコ)観察研究中間報告の発表について
「新型コロナウイルス感染症に対し投与した際の副作用はまれ」

藤田医科大学抗ウイルス薬観察研究事務局は、日本感染症学会と共同で実施しているシクレソニド(オルベスコ)観察研究 の結果をまとめた 「COVID-19に対するシクレソニド投与の観察研究(中間報告)」を11月30日、日本感染症学会のホームページに掲載いたしました。
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_ciclesonide_1130.pdf

シクレソニド(商品名オルベスコ)は気管支喘息の治療薬として国内で適応承認されている吸入薬です。シクレソニドについては、国立感染症研究所の研究チームにより新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗ウイルス効果があることが実験的に示されており、また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者への投与で症状が改善したとの症例報告があります。これを受け、日本感染症学会と藤田医科大学では、国内の医療機関に広く呼びかけ本年3月よりCOVID-19に対するシクレソニド投与症例の観察研究を行ってきました。

今回の報告は、抗ウイルス薬観察研究に2020年8月末までに登録されたシクレソニド投与患者2,728名について集計を行い、患者背景、シクレソニド投与後の経過や転帰、有害事象について発表したものです。本研究は速報性の重視および各医療機関の負担軽減の観点から、詳細な情報を入力する症例報告書ではなく、最低限の臨床情報をオンラインサーベイ形式で収集しています。したがって、重複入力などが明らかな場合には参加医療機関に照会しデータクリーニングを行っていますが、ここに含まれる情報は参加医療機関から入力されたものをそのまま集計しています。また、抗ウイルス薬が投与されなかった患者は本研究の登録対象となっていないことから、シクレソニド投与が行われた場合と行われなかった場合を直接比較することはできません。本報告に含まれるデータの一部を以下にグラフ化していますのでご参照ください。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の研究課題「SARS-CoV-2感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたファビピラビルの多施設非盲検ランダム化臨床試験およびファビピラビルを投与された中等症・重症患者における臨床経過の検討を目的とした多施設観察研究」(課題番号19fk0108150s0001)の一環として実施しています。
本観察研究では引き続きシクレソニド投与症例の登録を行っておりますので、医療機関の皆様におかれましてはどうかご協力をいただきますようお願い申し上げます。また、本研究の内容についての報道機関からのお問い合わせは藤田医科大学広報部(koho-pr@fujita-hu.ac.jp)で承ります。

(以下、本報告に含まれるデータの一部をグラフで紹介します)

シクレソニドを投与された患者の年齢群別人数(ファビピラビルも投与された患者を含む)

シクレソニドを投与された患者の年齢群別人数(ファビピラビルを投与された患者を除く)

シクレソニドは幅広い年齢層に投与されている

以下はシクレソニドを投与されファビピラビルを投与されなかった患者について集計しています

基礎疾患(%)

投与対象には糖尿病、心血管疾患、慢性肺疾患などの基礎疾患を背景に持つ患者が含まれる

シクレソニド投与開始7日目の臨床経過(人数)

7日目にシクレソニド投与開始時軽症患者の81%、中等症患者の71%、重症患者の50%が改善

シクレソニド投与開始14日目の臨床経過(人数)

主治医の判断によると14日目にシクレソニド投与開始時軽症患者の86%、中等症患者の83%、重症患者の87%が改善
ただし治療薬を用いずに軽快する患者も多いことから、シクレソニドの有効性を評価するには、同程度の重症度・リスクの患者がシクレソニドを吸入した場合としなかった場合の臨床経過や転帰を比較することが必要

入院1か月後までの転帰(人数)

入院1か月後にシクレソニド投与開始時軽症患者の0.4%、中等症患者の6.6%、重症患者の11.1%が死亡

入院1か月後までの年齢層別転帰(人数)

70代で3%、80代で11%、90代で22%が死亡退院

シクレソニド投与との関連が疑われた有害事象の報告率(ファビピラビル投与患者を含めた、シクレソニド投与患者全体で報告頻度が0.1%以上のものを抜粋;%)

有害事象の発生頻度は低い