医療科学部 臨床検査学科 予防医療情報解析学の鈴木康司教授と藤井亮輔助教らの研究成果がThe American Journal of Clinical Nutritionに掲載されました
医療科学部・臨床検査学科の鈴木康司教授と藤井亮輔助教らの研究グループは、食事によるビタミンCの摂取がABCA1遺伝子のメチル化率低値を介して、血清HDLコレステロール高値と関連していることを報告しました。
今回、調査したATP-binding cassette protein A1(ABCA1)という分子はHDLコレステロールを生成するのに重要な役割を果たしていることが従来の研究で知られています。さらに、ABCA1遺伝子が欠損している人では、血清HDLコレステロール値が顕著に低く(10mg/dL未満)、欠損がない人に比べて循環器疾患のリスクが極めて高いことも報告されていました。近年は、ABCA1遺伝子の「DNAのメチル化」(DNA配列自体に変化はなく、生まれた後の環境や生活習慣によって起こる遺伝子の後天的な修飾)が起きると血清HDLコレステロール値が低下し、循環器疾患を発症していることが明らかになっていました。一方で、どのような生活習慣でABCA1のDNAメチル化が変化するか、はそれほど明らかになっていませんでした。
そこで、ABCA1 DNAメチル化を変化させる生活習慣として、野菜の摂取とりわけ食事中のビタミン摂取に着目しました。これらの摂取量とABCA1 DNAメチル化率との関連、さらにそれを介したHDLコレステロール値との関連を約230名の日本人集団を対象として検討しました(図1)。その結果、ビタミンCの摂取量が多い人は、ABCA1 DNAメチル化低値を介して、血清HDLコレステロール値が高いということを明らかにしました。今回の研究成果は、ビタミンCの循環器疾患に対する予防的な効果をABCA1のDNAメチル化が媒介している可能性を示唆するものであり、一般的な日本人集団においての循環器疾患予防について新たな分子メカニズムとなり得ると考えています。
論文名:Associations between dietary vitamin intake, ABCA1 gene promoter DNA methylation, and lipid profiles in a Japanese population.
(日本人集団における食事によるビタミン摂取とABCA1遺伝子のDNAメチル化率および脂質指標との関連)
著者:Ryosuke Fujii, Hiroya Yamada, Eiji Munetsuna, Mirai Yamazaki, Yoshitaka Ando, Genki Mizuno, Yoshiki Tsuboi, Koji Ohashi, Hiroaki Ishikawa, Chiharu Hagiwara, Keisuke Maeda, Shuji Hashimoto, Koji Suzuki*
DOI:10.1093/ajcn/nqz181
研究費:
日本学術振興会科学研究費助成事業(基盤B)「長期追跡コホート研究の保存白血球を用いたDNAのメチル化解析」
日本学術振興会科学研究費助成事業(基盤C)「長期追跡研究による代謝関連遺伝子のDNAメチル化異常が生活習慣病発症に及ぼす影響」