【第5弾】藤田医科大学病院 放射線部 中島真由 先生
診療放射線技師として働きながら、3歳6カ月の長男と11カ月の長女を育てる中島先生は、家族や職場のサポートを活用しながら、効率的な働き方と育児の両立を実現しています。子育てとキャリアを両立したいと考える中島先生からは、日々どのようなことを考え、実行しているのか、お話を伺いました。
2017年 藤田医科大学病院 放射線部 配属
2018年 放射線部 一般撮影室 配属
2019年 放射線部 MRI検査室 配属
2021年 産休・第一子出産
2022年 復職(育休10カ月取得)
2022年 放射線部 一般撮影室 配属
2023年 産休・第二子出産
2024年 復職(育休9カ月取得)
2024年 放射線部 超音波マンモ部門 配属
女性が輝ける医療の現場へ:診療放射線技師を目指した原点
中学生の頃に職場体験で薬局に行ったことがきっかけで、医療職に興味を抱き、特に女性として社会で活躍できる分野に携わりたいと考えていました。診療放射線技師は男性が多い職業ですが、女性の患者さんは女性の技師に対応してほしいと感じているのではないかと思い、診療放射線技師を目指しました。
育休期間はどのように過ごされていましたか?
現在、2人の子どもがおり、長男が3歳6カ月で、長女が11カ月です。
長女が産まれ、長男が保育園を退園になったので、毎日のように児童館巡りをしていました。動き回る長男と、のんびりしている長女の面倒を見るのは大変でした。長く現場を離れると色々知識が抜けていきそうだったので、子どもたちが寝た後などの時間を利用して、マンモグラフィ認定試験の勉強などをしていました。1人目の時は寝ている間に勉強できましたが、今は2人の子どもが同時に寝ないため、試験勉強をする時間の確保が課題です。
どういったときにやりがいを感じますか?
患者さんに感謝された時にやりがいを感じます。レントゲンを撮るときは、「動いてはいけない」、「体勢も地味に辛い」そうした中で、患者さんの表情から気持ちを汲み取り、患者さんに無理のない体勢を意識して、負担を少しでも減らせるように努めています。定期的に来られる患者さんから「今日の撮影は痛くない体勢でスムーズに撮影してくれて助かった」と仰っていただき、とてもうれしかったです。
平日の一日のスケジュールを教えてください
今は時短勤務ですが、長女が1才になる12月のタイミングでフルタイム勤務に戻ります。1人目を出産した時ははじめからフルタイムで復帰しましたが、これまでに例がなく、みんなから「大丈夫?」とたくさん声を掛けていただきました。時短勤務は自身のキャリア構築に影響すると感じたため、私はフルタイム勤務の前例を作りたい思いで挑戦しています。同じ境遇の方に、このような選択肢があることを知っていただけると嬉しいです。妊娠中の残業は、周りの人が「帰りなよ」と言ってくれたおかげでほとんどなく、夜勤シフトからも外してもらうなどして、柔軟に対応していただけました。
仕事の進め方や時間管理について、日々の業務のタイムマネジメントや優先順位のつけ方について教えてください。
一般撮影室の業務は撮影に来られた患者さんを順番に撮影するため、タイムマネジメントをする機会はあまり無いですが、就職して8年目なので周りのスタッフや患者さんに人一倍目を向けるように意識しています。
仕事と育児のリアルな日々 ~キッチンに立つのは15分~
幼い二人の子供を育てながら仕事をするということは想像以上に大変ですが、効率的な家事の工夫と家族のサポートで日々のタスクをこなしています。
職場に復帰するにあたり、課題はありましたか?どのように乗りこえましたか?
仕事で疲れきって家に帰ってから家事・育児ができるか不安でした。親の都合で子どもたちの寝る時間が遅くなるのは申し訳ないですし、家族との時間も大切にしたいので、家には仕事を持ち込まず、乾燥機付き洗濯機や食洗器など、家電を活用して家事の負担を軽減したり、「毎日、キッチンに立つのは15分」とマイルールを定め、休日に料理の作り置きをすることで平日の食事の準備を簡略化したりしています。主人にフルタイムで復職したいと伝えたときは「無理しないでね」と心配してくれ、私の気持ちを尊重してくれました。日頃、主人にもかなり助けられていて、子どもたちの寝かしつけと同時に私も寝てしまうことが多いのですが、主人が残った家事をやってくれています。
子育てと仕事とのバランスをとるコツを教えてください。
「頑張りすぎない」という心掛けが、心身の負担を軽減し、子育てと仕事のバランスをとるコツだと思います。仕事は全力でしますが、子育ては頑張りすぎず周りの人に頼ることです。私は、性格上全部に100%で取り組みがちですが、手を抜けるところは抜くように意識しています。近くの主人の実家にも助けていただいています。
出産や育児などのライフイベント発生時に相談できる人はいましたか?
同時期に産休に入る先輩や既に産休を取られた先輩方に相談に乗っていただきました。また、着なくなった子ども服などを譲っていただき、子育ての相談にも乗っていただきました。そして、今いる部署は同年代の子どもを持つ技師がたくさんいるので悩みなどを共有しています。
仕事に子育てに奮闘していて、“最高!”と思ったことと“大変!”と思ったことは何ですか?
子どもを早くから保育園に入れていたので、メンタル面で不安がありました。長男には赤ちゃんの頃から毎日寝る前に「大好きだよ」と伝えていたら、ある時「ママ大好きだよ」と言ってくれたことが最高でした。3才の長男はママの仕事に理解があり、保育園では妹のことをかわいがっているようで助けられています。ところが、家ではママの取り合いが大変で、そんな二人のやり取りの間に立つことに疲れ、育休中は早く復帰したいと思うこともありました(笑)
モチベーションが下がった時はどのように対処していますか。
同期とご飯に行き、育児の大変さをお互い共有しています。睡眠が大好きなので、子どもは主人に任せて寝てしまうこともたまに、、、子どもができて、家庭と仕事をバランスよくこなしていきたいと思うものの、やはりキャリアを積みたい気持ちから、育休を取得し自己研鑽の時間を十分に確保できないことで、後輩に後れを取らないかと心配になります。しかし、主人から「すぐ追い付くから大丈夫」と励ましがあり、モチベーションを維持しています。
ホッとする時間を教えてください
子どもが2人同時に寝たときはホッとします。子どもたちが早く寝てくれた後の時間は、YouTubeを観たり、主人としゃべったりしています。私はしゃべっていないとどうにかなっちゃうので(笑)、ため込むことなく何でも話します。おいしい物を食べるのもリフレッシュ方法の一つです。独身の時は夜勤明けにカラオケに行っていましたが、コロナや出産などを機に今はあまりいけないので帰りの車で大きい声で歌っています。
職場環境とサポート体制
放射線部では、子育て世代の職員を支える環境が整っています。妊娠中は放射線被ばくのリスクを避けるための業務調整が行われ、復職後も時短勤務や柔軟なスケジュールの配慮が受けられました。上司や同僚が、いつも無理をしないようにと声を掛けてくれるので、気持ちに余裕を持てます。このような職場の理解と支援が、仕事と育児を両立する上で大きな支えになっています。
現在、放射線部の技師115名中37名が女性(32%)です。私は入職8年目になりますが、徐々に女性の割合が増えている印象があります。今の放射線学科の3年生は女性の方が多いようです。理系の職業のため男性の方が多かったですが、年々女性技師が増えて来ています。女性にも働きやすい職場であることが増加する理由のひとつではないかと考えています。
職場の風土として、子育てとの両立がしやすい環境ですか。
両立しやすい環境だと思います。子どもの体調不良などで男性技師がお休みを取ることもあり、戻ると「大変だったね」といった声掛けがあります。また、自身の妊娠中は極力動きの少ない業務に充てていただきました。妊娠中に私が走っていると、子どものいない若い男性も「危ないからやめてください!」と心配してくれたりしました。産休明けも無理していないか気にかけてくださる技師が多く、藤田で働いているお母さん方はすごいと声をかけてくれ、帰ってからの方が大変でしょ?と言ってくれます。女性だけではなく、男性技師も妊娠、出産、子育てに理解があり、働きやすい職場環境が整っています。育児に理解のある上司が増えてきているのも、よい職場環境の構築の理由の一つだと思います。男性の育児休暇も積極的に取得しており、男女共に子育てしながら働ける環境にあると思います。今、放射線部では出産ブームで、「これから育休を取るよ」、という男性も多くいます。みんなでカバーし合ってお互い様、という気持ちで業務にあたっています。
藤田学園は「様々な経験を積める場所」
私が所属している一般撮影室は症例や検査数が多いため大変な業務ですが、その分撮影技術が磨かれます。藤田医科大学病院で実習をしていたときに、忙しい中でも患者さん一人一人に丁寧に接しているのを見て、ここで働きたいと思いました。大変ですが、やりがいもあります。
今後の目標を教えてください
二度の出産・復職の経験を活かし、男女共に育児をしながら働きやすい環境を更に整え、次世代の女性技師が安心してキャリアを築ける道を開くことです。また出産の有無に関わらず、みんなが働きやすい職場づくりをしたいと考えています。
今後出産をしたいと考えている方や、育休を取られる方へのメッセージをお願いします
「一人で頑張りすぎず、家族や職場、周りのサポートを活用してください」
当院での仕事はハードな事が多いので、妊娠中の業務が大変かと思いますが、頼れるところは周りのスタッフに助けてもらいながら業務にあたって欲しいなと思います。当院の放射線部は本当に理解あるスタッフばかりなので、みんな助けてくれます。育児と仕事の両立の大変さは身をもって感じていますが、大変なことは一人で抱えこまず、家族や同僚などに話を聞いてもらうだけでも、負担軽減になるかと思います。
「しゃべっていないとどうにかなっちゃうので(笑)」と話す中島先生のインタビューの時間は終始笑いが絶えませんでした。インタビュー中も、「写真はこっちの部屋で撮る方がいいかも!」と積極的にご提案いただき、何事も100%で取り組まれる姿勢に周りの人への気遣いや周囲を元気にさせるパワーを感じました。中島先生と同じように、子育てとキャリアを両立させたいと願う方にとって、中島先生の挑戦・実践例が新たな道を切り開くヒントとなりましたら幸いです。