ロールモデル④大山友香子先生

インタビュー実施日:2024.10.3

【第4弾】医学部 生体構造学 大山友香子 先生

臨床医からスタートし、IgA腎症の研究をきっかけに研究者としての道を選んだ大山先生は、出産後も育休を活用しつつ、家族や職場のサポートを受けながら、忙しい日々を過ごしています。2人の子どもを育てながら研究と育児を両立している大山先生に、育児と仕事の両立のコツを伺いました。

  大山 友香子
 藤田医科大学 医学部生体構造学 講師
 
 2001年 名古屋市立大学 医学部 入学
 2007年 名古屋市立大学 医学部 卒業 
 2007年-2011年 名古屋第二赤十字病院 初期研修医、後期研修医
 2011年-2016年 中部ろうさい病院 腎臓内科、リウマチ・膠原病科
 2013年 第1子出産(10カ月育休取得)
 2016年 藤田医科大学 大学院 医学研究科 入学
 2016年 第2子出産(5カ月育休取得)
 2020年 藤田医科大学 大学院 医学研究科 卒業
 2020年 藤田医科大学 医学部 生体構造学 助教
 2022年 藤田医科大学 医学部 生体構造学 講師

医師および研究者としての道

患者様の生活に寄り添える内科医になりたいと思い、医師を目指しました。初めて務めた病院は、名古屋の救急医療の中核を担う病院で、体力的に大変でしたが、研修同期と楽しく切磋琢磨しながら、診療技術の習得に専念していました。縁あって、腎臓内科を専攻し、腎臓病の患者様が多く集まる病院で、腎疾患治療や腎病理について、専門性の高い贅沢な環境で教えていただくことができました。残念ながら、当時は臨床業務に忙しく、研究への興味は全くありませんでした。でも、教育熱心な先輩に勉強会(ハーバードクラブ(略してハバクラ)と呼んでいました(笑))に誘われ、クリニカルクエスチョンに対して臨床研究の論文を複数読み、現在のトレンドをまとめるという作業をやっていました。少人数の会で、結構大変でしたが、とても大事なことを教えていただいたと思っております。
感染症や膠原病の診療を学びたいという思いから、当時の上司の紹介で、2番目の病院に異動しました。県外から勉強にいらっしゃった先生方との出会いもあり、とても刺激的な病院でした。勉強会や学会活動も盛んで、小規模なコホートを使った臨床研究を始めることができました。また、腎臓内科の外来も担当させていただいたので、腎臓病の慢性期の経過を肌で感じることができました。現在、研究のテーマにしている「IgA腎症」という病気に興味を持ち始めたのもこの時期でした。この研究ができる大学院に進みたいと思っていたところ、藤田医科大学病院にこの研究の歴史があることを知り、藤田医科大学の大学院入学を決意しました。
研究は患者様の生活の質を向上させるための重要な一歩であり、研究を通じて病気の解明に寄与することが自身の使命と感じています。臨床医としての経験を活かしながら、研究の現場での発見を目指しています。

どのような研究をされているのか教えてください

IgA腎症は世界的に頻度の高い糸球体腎炎で、腎生検する患者様の2-3割がIgA腎症と診断されます。臨床像はバライエティ—に富んでいて、活動性の低い方から、免疫抑制治療なしでは透析導入を免れない方まで様々です。徹底した支持療法が治療の根幹ですが、腎機能悪化リスクの高い方には、口蓋扁桃摘出術やステロイドバルス療法を提案します。しかし、ステロイドを含む免疫抑制治療は副作用対策を十分にしながら、安全性に注意して治療する必要があることが臨床研究から分かっており、新規治療やその治療選択につながるような研究がしたいと考え、IgA腎症の研究の歴史がある藤田医科大学の大学院に入学しました。現在は、IgA糖鎖異常、IgA免疫複合体解析、腸管関連リンパ組織や腸内細菌叢との関連について研究をしています。

平日の一日のスケジュールを教えてください

朝早く起きて、朝夕食の準備を済ませることがルーチンワークになっています。子どもたちが、お風呂と食事が自分でできるようになってから、これまでより手がかからなくなり楽になりました。2-3歳までが熱も出やすく、一番大変な時期でした。その当時は周りに謝ってばかりでした。

子育てと仕事の両立

仕事と家庭のバランスを保つために、仕事は仕事として割り切り、家に持ち帰らないことを心がけています。特に、家族との時間を大切にしながら、研究の待ち時間を有効活用するなどして効率よく仕事を進めることが、ライフスタイルの基盤となっています。

お子さんの人数、年齢を教えてください

2人います。8歳と11歳です。
育休は長女が、2番目の病院の時に10カ月取りました。
次女の出産は大学院生時代で育休は5カ月取りました。この時には、藤田医科大学病院内の託児所を利用して、早めに復職しました。

日々の業務のタイムマネジメントや優先順位のつけ方について教えてください

できないこともありますが、実験は計画的に進める必要があるので、朝からすぐ実験が始められるよう前日までに予定を組み、翌日の準備をしてから帰宅します。実験は待ち時間があるので、その間に違う仕事をして効率化を図っています。

研究と子育てを両立するにあたって大変だったことなどありますか

仕事を終えて家に帰っても子育てが待っているので、体が休まらないときに大変だと感じます。3歳差の子どもたちは、仲がいいときはいいのですが、喧嘩は結構激しいです…
あとは、子どもが小さいうちは熱が出るなどしたら託児所から呼び出しがあったりして、研究を始めたのに止めないといけなくなったときは研究スケジュールが変わってしまうので大変でした。そういった時には、キリのいいところまで研究を進めてから帰宅していました。逆にそれが効率を上げることもありましたが(笑)
どうしても早退できないときは、幸運にも、実家の近くに住んでいたので、緊急時は迎えに行ってもらったりして、サポートを受けていました。藤田医科大学病院内の託児所は1歳まで入所しており、何かあった時にはすぐ見に行けるのはよかったし、安心感がありました。こういった支援や、子どもたちの「ママ頑張ってね」の応援の言葉のおかげで、今も研究を続けることができています。

モチベーションが下がった時はどのように対処していますか

家族と美味しいものを食べたり、子どもと一緒に遊んだりしてリフレッシュしています。子供が体を動かすことが好きなので、最近はよく怪我をしています(笑)写真は、愛知県岡崎市にあるボウケンノモリにアスレチックをしに行った時に撮ったものです。5歳以上のお子さんをお持ちの方には特におすすめです。家族旅行にも行きます。最近は白浜に行きました。

藤田医科大学の風土とサポート体制

藤田医科大学では、育児と仕事の両立がしやすい環境が整っております。同僚や上司の理解とサポートがあり、特に研究者としてのキャリアを築く上で、職場内での支援が大きな力となっています。

職場の風土として、子育てとの両立がしやすい環境下でしたか

しやすいです。私の所属する講座は男性が多いのですが、お子さんを持ってみえる方も多く、お互いに理解しカバーし合っています。悩みがあれば真摯に聞いてくれて、相談しやすい環境のおかげで、研究を続けてこられました。

出産や育児などのライフイベント発生時に相談できる人はいましたか

夫と実家の家族、同僚です。研修同期生は、子ども同士の年齢が近いこともあって相談しやすく、今も時々集まって情報交換しています。2番目の病院の時は、男性の同僚も子育て世代が多かったので男性側から情報をもらったりしていました。

人も社会も職員も大切にする藤田学園に向けて成長中

働き方改革の一環で、コアタイムを自分で設定できるようになったり、最近だと学園内でダイバーシティ&インクルージョン推進プロジェクトが立ち上がって働きやすい職場づくりに取り組むなどして職員を大切にする学園づくりに向けて成長をやめない点は藤田の魅力だと思います。将来的には介護をしながら仕事をすることにもなるかもしれないので、仕事と家庭を両立するための支援や制度が少しずつでも広がってきてくれているのは嬉しいことだと感じています。

今後の目標を教えてください

研究者としての今後の目標は、大きくても小さくてもいいので、何か一つ発見することです。この積み重ねだと思っています。やりきったと思えるまでは、このまま研究を続けていく予定です。医学の進歩のために、自身の研究を続けながら後輩の育成にも注力し、男女を問わず優秀な研究者が増えることを願います。

研究者を目指す学生さんや若手研究者へのメッセージ

「楽な道に進むのではなく、やりたいことを目指してください」

どの道に進むのが楽なのかとか考えずに自分がやりたいと思ったことを目指してほしいです。研究は自分のペースでできるし、タイムスケジュールも立てられるので、子育てをする女性にとっても働きやすいと思います。私も臨床から研究者へ転向したため、最初はピペットの持ち方など基礎的なこともわかりませんでしたが、周りのサポートを受けながら突き進んできました。なんでも続けていればできるようになります。

大山先生が医師および研究者としてどのようにキャリアを築いてきたのか、そして子育てと仕事の両立に向けた本学の取り組みやサポート体制について紹介しました。医学の発展には、女性の活躍も不可欠です。本学では引き続き子育て世代の支援に取り組んでまいります。