ロールモデル① 佐々木ひと美先生

インタビュー実施日:2024.1.5

【第1弾】腎泌尿器外科学 佐々木 ひと美 教授

藤田医科大学病院泌尿器科開局20年目で初の女性泌尿器科医、日本泌尿器科学会初の女性理事など、女性医師として活躍する佐々木ひと美先生。若手女性医師・研究者の働きやすい職場づくりの推進や国際医療センター長として外国人患者さんへの対応など、マルチにご活躍されている佐々木先生にお話を伺いました。

  佐々木 ひと美
  藤田医科大学 医学部 腎泌尿器外科学 臨床教授
  藤田医科大学病院 国際医療センター センター長

  1993年 藤田保健衛生大学 医学部卒
  1993年 藤田保健衛生大学病院 研修医
  1995年 東京都立清瀬小児病院医員
  1996年 米国ミズーリ州セントルイス・ワシントン大学
                 外科  research fellow
  1999年 藤田保健衛生大学医学部泌尿器科 入局
  2016年 藤田保健衛生大学国際医療センター副 センター長
  2017年 藤田保健衛生大学医学部腎泌尿器外科 臨床教授
  2019年 藤田医科大学国際医療センター センター長
  2023年 日本泌尿器科学会理事に就任

新しい分野に興味を持ち
老若男女の患者を診るスペシャリストである泌尿器科に

進路選択のときに、新しい分野に進みたいと考えていました。もともと外科医の道は視野にいれておりませんでしたが、泌尿器科であれば内科も外科もできるため、当時は未知の分野であった泌尿器科への道に進みました。

平日の先生の一日のスケジュールを教えてください。

6時半に起床し、朝の支度が出来たら出発し7時45分に出勤。8時に本院のカンファに出席。8時20分から患者さんと交流、後輩医師に指示。8時45分に国際医療センターのカンファに出席。9時からは、外来。もしくは、国際医療センター業務に従事。15時から学会への出席や、学会理事の業務を遂行し、20時まで自己研鑽に励み、退勤。20時40分に自宅に到着し、23時半に就寝。

起きたらまずお風呂をため、待っている間に愛猫のボンちゃんとたわむれています。顔をうずめて思いっきり匂いを吸い込むのが起きてすぐのルーチンであり、癒しの時間です。身支度を整えたらお花に水をあげて家を出ます。
寝る前には実家に住む親に電話をします。美容と健康のために、23:30には寝るように心がけています。

  • 愛猫ボンちゃんの写真 愛猫ボンちゃん

  • 玄関で育てている様々な色の花の写真 玄関で育てているお花

これまで、一番苦労したことはなんですか?

医者として苦労したのは、患者さんが大変な時です。移植患者さんの手術後の状態が悪かったときなどに苦労を感じます。私生活とのバランスは努力が必要です。努力といっても私の努力ではなく、旦那さんの努力です(笑)私の両親も義理の両親も私の仕事をよく理解してくれていて、食事会や旅行をドタキャンしなくてはならなくなった時にも「医療に関することならしょうがない」と家族も患者さんを優先し、受け入れてくれます。家族との時間に病院から電話が鳴ると、「ちゃっと行きゃあ(名古屋弁で、早く行きな)、ひとみちゃん」と言って送り出してくれます。家族の理解は絶対に必要です。

女性の外科系教授として、ご活躍されている佐々木先生ですが、やりがいや仕事に対するモチベーションを教えてください。

仕事のやりがいは間違いなく、患者さんに「ありがとう」と言ってもらえること、それ以外はありません!患者さんが元気になっていくことがモチベーションに繋がっています。私は学会発表で上手に発表できるとかよりも、目の前の患者さんが元気になって、「先生のおかげでよくなった」と言われるのが好きで、医師として元気に頑張れます。

先生のホッとする時間を教えてください

私は手先を動かしているのが好きです。よくレアな趣味と言われますが、時間ができた時は可愛い包装紙や紙袋でブックカバーを作ったり、もらったメモ帳の表紙をデコレーションしたりします。没頭できる楽しい時間です。読書も好きで、家での蔵書数も多いです。エッセーや人生をどう生きるか等のハウツー本を熟読していました。ハウツー本を読むきっかけとなった「3日で運がよくなるそうじ力」がおすすめです。料理も好きで作っている時はストレス発散になります。我が家の愛猫13才の「ボンちゃん」とのふれあいの時間もエネルギーをもらい最高の癒しとなります。

  • 佐々木先生が包装紙や紙袋で作ったブックカバーの写真 包装紙や紙袋で作ったブックカバー

  • 佐々木先生の自宅の本棚の写真 自宅の本棚

正しく、善いことをする

本学園の星長理事長をロールモデルとして、また、稲盛和夫さんを目標とする人として、日々患者さんと接しています。星長先生は患者さんや学園のために正しいことを貫き、努力する人。稲盛さんは、京セラの創業者であり、正しいか否かを見極め、善いことをする人です。私もそうなりたいと思い行動しています。

国際医療センター長も兼務されておられますが、外国人の患者の方との接し方で、意識していることはありますか。

言葉の問題があるため、必ず通訳を通して話をしますが、挨拶などファーストコンタクトは日本人の患者さんとしているようにします。その後も、ジェスチャーは世界共通なので、身振り手振りを交えて、熱意が伝わるよう敢えて日本語で会話するようにしています。他にも、医療以外のことで相手の方が英語を話せれば、私も英語で会話をして親交を深めるようにしています。外国の患者さんは言葉も通じない国に不安を抱えながらわざわざ来られているので「大変ですね」「心配ですね」などの声掛けは日本人患者さんよりも多くかけるようにしています。日本語で話しても優しく聞こえるように口調には気をつけています。外国人患者さんはご家族とともにいらっしゃる方が多いので、退院時にはご家族にもハグをしたりして愛をもって接しています。

藤田学園の魅力を教えてください。

何といっても”人”です。藤田は優しい人の集まりで、医局員、看護師、コメディカルスタッフ等、学園内に優しくない人は一人もいないと思っています。誰一人として意地悪をしない。意地悪な人は周りになじめなくて辞めていってしまうと思います。看護部のトップが統制を取って患者さんのために働く精神が学園全体に根付いているように感じます。看護師をはじめ、皆が患者さんのためにと働いている。「しょうがない、あきらめよう」ではなく「しょうがない、やるしかない」と、「しょうがない」という言葉をポジティブに捉え、個人が問題を先延ばしにせずに、今できることをしようという意識の中で働いているため、他人任せな人が少なく、思いやりに満ちています。

”女性”という理由で不利と感じたことはない!

女性として不利と感じたことはあまりありません。むしろ女性であったために、重いものを代わりに持ってもらえるなど有利と感じることのほうが多くみられました(笑)あえて挙げるとすれば、女子故に気を遣われて申し訳なさを感じたことがあるくらいでしょうか。開局して20年目の初めての泌尿器科女性医師だったこともあり、それまで局員全員が女性医師の扱いに慣れていないようでした。最初に手術に入った時に1時間くらい経ったら、上司の先生が「ひとみちゃん大丈夫?もうおりたほうがいいんじゃない?もう1時間も立ちっぱなしだよ」と気を遣われていましたが、1ヶ月も経てば何時間でも手術に入るのが普通になりました。愛知女性医師の会で私より上の先生方が、女性医師が外科の中でも認められなくて苦労されてきたというお話はたくさん聞いてきましたので、私は職場に恵まれていたのだと思います。

近年はジョイフルの中心メンバーとして、女性医師・研究者の方への推進活動にもご尽力されていますが、女性医師・研究者が働きやすい職場にするために、重要なことは何だと考えますか。

ジョイフルで活動する仲間たちの集合写真 ジョイフルで活動する仲間たち

やはり上司の理解です。女性医師に働いてもらおう、何としても女性医師を辞めさせないと常に上司が考えていないとダメだと思います。それができているところに女性医師がたくさん入るでしょうし、軽く考えているところには入らないと思います。もちろん、診療科の特性もあって、産婦人科、小児科のように女性の特性を活かして仕事ができるところには、女性医師がたくさん集まる傾向があります。女性がたくさん集まってくる医局の上司こそ、どうしたら女性医師を辞めさせずにキャリアを継続させてあげられるかを考えて欲しいです。

女性医師のキャリアの継続には何が必要と考えますか。

やはり仲間はたくさんつくった方がよいと思います。昨年、久しぶりに女性医師が泌尿器科に入局し、大学病院で働いています。かなり年下の人ですが、同じ女性医師ということで心強くかけがえのない存在で、私もとても頼っています。女性医師が増えるのは良い事だと思っています。男性医師しかいない職場に女性医師は入りづらいと思いますが、女性が何人か入ると続けて入ってきてくれます。実際に私が女医として初めて泌尿器科に入局した後は5年連続で女性医師が入ってきました。同性だからこそ共感できる悩みなどもあるので、そういったこともお互い助け合っていきたいです。

若手へのメッセージ

悩んだときはすぐに相談。一人で抱えてはいけません。

私はどんな些細なことでも相談に乗るようにしています。しかし、あの時あの人が言ったから、と後悔しないよう「必ず最後は自分で決めること」。助言はたくさん求め、最終的な決断は自分自身で行うようにしてください。

腎泌尿器外科学の集合写真 腎泌尿器外科学の集合写真

働く女性医師として、様々な場所で活躍をしている佐々木先生。今後の目標は、介護と仕事の両立を成功させることだそうです。医師として、介護休暇の取得や在宅勤務がどこまで可能なのか、介護と仕事の両立を成し遂げたロールモデルとして将来紹介させていただく予定です。