Q&A - 経皮感作による食物アレルギー
化粧品が原因で食物アレルギーを発症することがあるのですか?
- あります。近年、特定の化粧品を使用する前は食物アレルギーの既往が無かったのに、化粧品使用後に、含有成分に関連した食物アレルギーを新たに発症された方が散見されています。
- 代表的な事例は、2,000例以上の(旧)茶のしずく石鹸の使用者が発症した小麦アレルギーです。当該石鹸に含有された加水分解コムギ(グルパール19S)に経皮的に感作し、小麦を含む食品を摂取した際に食物アレルギーの症状が誘発されるようになりました。
(旧)茶のしずく石鹸による小麦アレルギーとはどんな疾患でしたか?
- 日本アレルギー学会に設置された「タンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」の調査結果では、全国に2,111例の小麦アレルギーの発症者が確認されました。
- この患者さんたちは、当該石鹸を使用する以前には、小麦アレルギーの既往はありませんでした。
- 特別委員会の調査では、小麦摂取後に患者さんの約半数でアナフィラキシー症状が確認され、多くの患者さんが重篤な症状を経験していました。
- (旧)茶のしずく石鹸の使用を中止することで、多くの患者さんは小麦摂取後の症状は改善し、現在では症状なく摂取できるまでに回復した方が大多数になっています。
(旧)茶のしずく石鹸以外にどのような化粧品で食物アレルギーを発症していますか?
- カルミン(赤色の色素成分)を配合した口紅などの化粧品で食物アレルギーを発症された方が比較的多くみられます。
- カルミンとは、コチニールカイガラムシから抽出される色素成分を加工したもので、類似の加工品(コチニール色素など)が食品にも使用されています。
- カルミン含有化粧品で感作した患者が、コチニール色素の配合された飲料や食品を摂取し、アナフィラキシーなどを起こすことがあります。
- カルミン以外では、トウモロコシ、大豆、オートムギ(=カラスムギ)由来の成分を含有した化粧品の使用者に、化粧品成分に関連した食物アレルギーの発症事例が報告されています。
化粧品による経皮感作食物アレルギーの特徴を教えてください
- 化粧品を頻繁に使用される方、つまり成人女性に偏った疾患になります。
- 多くの患者さんは、化粧品使用時に接触部位の痒みや蕁麻疹が出現しています(全身症状が出る方は少ないです)。
- (旧)茶のしずく石鹸の事例では、3割もの患者さんが石鹸の使用部位(顔)に何も症状がなかったと報告されており、化粧品による皮膚の症状ではなく、突然の重篤な食物アレルギー症状がきっかけで初めて受診される方も少なくありません。
- このように、化粧品による経皮感作食物アレルギーは、食物アレルギーの症状の方が化粧品使用時の皮膚症状よりも目立つため、原因である化粧品との関連に気づきにくく、重篤化・大規模化しやすい点が特徴です。
化粧品にはどのような食物由来成分が使用されているのですか
(旧)茶のしずく石鹸が問題となった2012年頃の調査では、小麦や甲殻類、牛乳や大豆など、頻繁に摂取する食物由来成分が使用されていました。
化粧品の成分はどうやったら確認できますか
- 化粧品は必ず内容成分が記載されていますので、パッケージ等を確認すれば分かります。
- 化粧品は「医薬品医療機器等法」で“全成分表示を行う”と定められており、記載する成分の名称は、日本化粧品工業連合会作成の「化粧品の成分表示名称リスト」等を使用すること、となっています(平成13年3月6日付厚生労働省医薬局審査管理課長、厚生労働省 医薬局監視指導・麻薬対策課長通知)。
- 薬用化粧品(医薬部外品)というカテゴリーもありますが、日本化粧品工業連合会の“自主基準として”全成分表示となっていますので、多くの製品で全成分が記載されています。