研究情報
化粧品等による皮膚障害症例の調査解析および情報ネットワークの確立
承認番号:HM17-207
製品や化学物質の皮膚や身体への健康被害は誰にでも、どのような製品でも起こりうる可能性があるが、本邦においてはそれらの副作用情報を迅速に収集するシステムは確立されておらず、それらの情報を共有するネットワークも十分に確立されていない。
今回、我々はSSCI-Net症例登録協力医療施設(日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会員の医療施設および日本皮膚科学会の専門医主研修施設)から化粧品等による皮膚および身体への障害症例の情報を収集し調査解析すること、また、それらの情報を発信するシステムの確立を目的に本研究を実施する。
接触皮膚炎診断におけるAIによる判定の技術検証
承認番号:HM21-449
本研究では、AIを利用したアレルギー性接触皮膚炎の画像診断システムの構築可能性の検証を行う。アレルギー性接触皮膚炎の診断は、原因物質を背部などに貼付し、アレルギーの反応を国際接触皮膚炎研究班(ICDRG)基準で評価することにより行われている。ところが、ICDRG基準は目視による判定であるため、医師毎に誤差が生じることもあることから、その解決が課題とされている。よって本研究では、医師による判定誤差を最小化することを目的に、AIによる画像診断システムの構築ができるのか、について評価・検証を行うこととした。AIによる評価ができることが確認された際には、医療関係者に対しては、医療現場におけるパッチテストの判定サポート、パッチテストを施行する皮膚科医の育成の教材(e-ラーニングなど)としての使用が想定され、一般の方に対しては、ヘアカラーなど製品使用前にパッチテスト(セルフテスト)が必要とされる場合の判断サポートなどへの利用が考えられるなど、社会貢献度の高い研究である。
オプトアウト文書ヘアカラーアレルギー患者に対する新ヘアカラー剤の安全性試験
承認番号:HM21-404
本研究では、パラフェニレンジアミンなど主要な酸化染料を用いず、従来の酸化染毛剤のように、色持ちがよく、明るい色/暗い色にも染めることができる新たなヘアカラーサンプルの安全性評価を目的とする。本研究で使用するサンプルは、ヘアカラーアレルギー患者のパッチテスト陽性率が低い(もしくは0%の)酸化染料のみが使用されており、既にヘアカラーアレルギーを発症した者の多くはアレルギー症状を誘発することなく染毛できると考えている。本研究成果により、ヘアカラーによる皮膚障害事例数の減少が期待できるだけでなく、既にヘアカラーアレルギーを発症した者であっても安全に使用できる酸化染毛剤の開発に繋がる可能性がある。
ヘアカラーアレルギーのインビトロ検査方法の開発
承認番号:HM20-278
本研究では、PPD(パラフェニレンジアミン)のパッチテストで陽性となった患者の血液から末梢血単核球を取得し、アレルギーの原因とな るヘアカラーの酸化染料存在下で培養したときに、抗原特異的なリンパ球の増殖 や特定のサイトカインの分泌などが確認できるか検討し、それらを指標とし たインビトロのヘアカラーアレルギー検査法の確立を目指す。これまでに、アレ ルギー性接触皮膚炎の検査を目的に様々なインビトロ検査法の検討が報告されて いるが、実現には至っていない。 本研究の成果によって、皮膚テストによる感作リスクの低減や、皮膚テストで の重いアレルギー症状の惹起を避けることが可能となる。
ヘアカラーアレルギーリスク低減のための問診票標準化の試み
承認番号:HM20-582
本研究は、対象者が過去に経験したヘアカラー施術後の症状などのアン ケート結果と、その対象者のアレルギーに関する診療情報を対比させ、ヘアカラ ーアレルギーに罹患しているか否かの判断材料となる特徴の特定を目的とする。 その成果によって、ヘアカラーリングを希望する方が、理美容室であれば理美 容師による施術前のヒアリングによって、また薬局等でヘアカラーを購入して自 宅でヘアカラーリングをする場合にはセルフチェックによって、ヘアカラーによ る重篤なアレルギー性接触皮膚炎を発症する患者数が減少すると期待できる。
医薬部外品及び化粧品配合成分の安全性確保のための規格等に関する研究
AMED医薬品等規制調和・評価研究事業
加水分解コムギアレルギー患者の事後経過観察や、その他の化粧品等に含有されるタンパク質成分によるアレルギー発症事例の調査・診断法の検討することにより、加水分解コムギアレルギー患者の予後規定因子が明らかになり、患者予後を改善するための手法や、的確かつ迅速なアレルギー発症例診断法の確立につながる。
(旧)茶のしずく石鹸による即時型コムギアレルギーの予後調査研究
承認番号:HM17-401
これまでに行なった研究から、社会問題となった「(旧)茶のしずく石鹸の使用者に発症した即時型コムギアレルギー疾患」は、①発症の原因抗原が「グルパール19S(小麦由来の化粧品原料)」であること、②当該石鹸の使用を中止するだけで継時的に治っていくこと、③症状が治まる傾向が血清中のグルパール19S特異的IgE抗体価の変動と相関していること、が確認されている。
当該疾患は、昨今発生した新たなコムギアレルギーであり、現時点において、その予後は明確ではない。本研究では、当該疾患の予後を明らかにすることを目的として、日本アレルギー学会「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」により報告された確実例2,111例(医療施設としては270施設)を主な対象として、血清中に含まれるグルパール19S特異的IgE抗体価の測定、および採血時における即時型コムギアレルギーの現状調査を実施する。
上記の通り、当該疾患は社会問題にもなったものであり、その予後を明確にすることは、社会的重要性の高い研究と言える。
経皮感作食物アレルギーの発症原因と予後などに関するアンケート調査
承認番号:HM16-353
茶のしずく石鹸の事例以降、食物依存性全身アレルギーの発症機序として、従来一般的と考えられていた経腸管感作だけでなく、経皮感作が注目されるようになった。現在までに、経皮的に感作され食物依存性全身アレルギーを発症した原因物質として“コチニール色素”が広く知られているが、化粧品に限らず、様々な物質でも生じている可能性が示唆されている。以上より、以下の3課題について調査することとした。
調査1:特別委員会に報告された(旧)茶のしずく石鹸によるコムギアレルギーの確実例について、現在の状況を調査する。
調査2:グルパール19S以外の化粧品原料に感作したことが疑われる食物アレルギーの存在を調査する。
調査3:化粧品以外での経皮感作が疑われる食物アレルギーの存在を調査する。
本研究により、アレルギー疾患(特に経皮感作食物アレルギー)の実態が把握できれば、(旧)茶のしずく石鹸の関わる患者や医療関係者、さらには国民全体にとって有益な情報となり、医療の質の向上、リスク管理、QOLの向上に繋がると期待される。
皮膚適用の医薬品等成分による有害事象の機序解明・予測手法の開発のための研究
AMED医薬品等規制調和・評価研究事業
皮膚適用の医薬品等成分による有害事象の機序を解明し、予測手法の開発、安全性試験の設定ならびに市販後安全対策において早期発見と原因究明方法の設定を目的とする。
化粧品等のアレルギー確認方法確立に関する研究
AMED医薬品等規制調和・評価研究事業
今後新たに有害事象が生じた際の原因究明の迅速化につなげるために、これまで医薬部外品、化粧品等で生じた有害事象について、症例情報の疫学研究を実施するとともに、収集した情報の分析等により、問題となり得る成分のリスト化をし、当該成分の最適な判定方法や的確な判定を行う医療従事者エキスパートの育成方法に関する研究等、今後医薬部外品、化粧品等で生じた際の原因成分確認方法確立に関する研究を行う。
プロテオミクス手法による各種アレルギー疾患の要因解析
承認番号:HM-21-590
様々なアレルギー疾患を対象とし、独自性を持った最新のプロテオミクス手法により、世界に先駆けて原因抗原を網羅的かつ詳細に解析することを試みる。より具体的には、患者さんから得た血液等を用い、イムノブロット法、二次元電気泳動法、質量分析法等の手法を組み合わせ、様々なアレルギー疾患の原因抗原を詳細に特定することを行う。得られた研究結果は、統計学的手法により各症例の臨床情報と相関解析される。臨床情報をより安全に取扱い、研究結果とより効率的に相互解析するため、最新のITシステムを活用する。
オプトアウト文書臨床研究データベース
ヘアカラーの皮膚アレルギー試験(セルフテスト)実施率向上に関する検討
承認番号:HM16-384
ヘアカラーによる皮膚障害が、毎年度200件程度、消費者庁の事故情報データバンクに登録されている。酸化染料でのアレルギー性接触皮膚炎が早急な対応課題であり、これは、皮膚アレルギー試験(セルフテスト)を実施することで予防できるものと考えられる。よって本研究では、サロンを対象に、セルフテストの実施率を向上させることを目的に、以下の項目について検討する。①メールによりセルフテストの時期を知らせることが有効か。②定期的に対象者のメールアドレスにセルフテストの説明サイトや関連データを送信することが有効か。③セルフテストの判断を、写真データなどで保存し、皮膚科医からアドバイスすることが有効か。
ロドデノール誘発性脱色素斑に関する調査研究
承認番号:HM16-363
本研究では、ロドデノール含有製品により脱色素斑を生じた患者を対象に、治療と予後をアンケート調査し、収集した患者情報から新しい治療法の可能性があるか調査する。また、文献、学会発表等で報告された治療法に関する情報を専門家の見地で吟味評価し、以上をまとめ、有用な情報として、医療従事者には学会誌への投稿、患者には独自のFAQとして、情報を提供する事を目標とする。
オプトアウト文書重篤な皮膚有害事象の診断・治療と遺伝子マーカーに関する研究
承認番号:HG16-030
近年、旧茶のしずく石鹸(株式会社悠香)に含まれたグルパール19S(加水分解コムギ末)が原因で即時型コムギアレルギーとなった症例が相次ぎ、社会問題となった。加水分解コムギ末は、本邦に限らず香粧品に多用されてきた原料であったが、旧茶のしずく石鹸による大規模な有害事例が出るまで、加水分解コムギ末含有香粧品で生じた有害事象は、欧米において接触蕁麻疹が散見される程度であった。日本アレルギー学会は、当該問題への迅速な対応を目的に「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会(委員長 松永佳世子)」を発足し、診断基準の策定、検査法の確立と実施、疫学調査、原因解明などを行った(疫学臨床倫理委員会<茶のしずく石鹸で生じた小麦アレルギーの検査法確立および臨床性能試験:承認番号11-210>)。疫学調査では、登録サイトを作成し、これまでの調査では、1830例に上る症例の登録を得た(2013年3月20日現在)。その結果、患者の約半数がアナフィラキシー等で生命の危機を脅かされた重症例であることを特定した。一方、原因としては、洗顔石鹸には加水分解小麦由来の成分が含まれており、それがグルパール19Sであることはわかってきたが、発症因子、病態、予後などは未だ不明である。そこで、今回の検討では、グルパール19S(旧茶のしずく抗原)を含む石鹸の使用により重篤な小麦アレルギーを呈した症例について遺伝的素因の確立を目的として、single nucleotide polymorphism (SNP)を使用して全ゲノム関連解析を行うこととした。また、疾患と関連するSNPまたはHLA遺伝子型が同定された場合には遺伝子型情報にもとづいた発症予測、健康被害を防ぐ方法の確立を目指す。
オプトアウト文書