皮膚の幹細胞

応用細胞再生医学講座では、皮膚の幹細胞について研究を進めています。


◆ 皮膚の幹細胞について

方針イメージ

 

応用細胞再生医学講座では、皮膚の幹細胞を病理学的手法を用いて染色し、その存在する部位や状態について研究しています。
上記の画像は、皮膚の幹細胞を特殊な染色法により可視化した画像です(緑色が幹細胞)。表皮、真皮ともに幹細胞が存在しており、これらの幹細胞が皮膚の再生に大きく関わっていると考えられます。

◆ 表皮と真皮の幹細胞

さらに詳しく観察してみると、表皮幹細胞は基底層に存在し、乳頭層の頂上付近に存在していることが分かりました。また、真皮の幹細胞は真皮の上層部、乳頭層に点在していることが分かりました。どうやら、皮膚の幹細胞が存在する部位は決まっているようです。

◆ 20代と60代における皮膚の幹細胞

 

20代と60代の皮膚の幹細胞について比較したところ、20代に比べて60代では、皮膚の幹細胞が大きく減少していることが分かりました(緑色の矢印)。
この皮膚における幹細胞の減少が、皮膚の老化や機能低下につなげっていると考えています。

◆ 加齢にともなう皮膚の幹細胞の変化

 

20~80代の女性の皮膚における幹細胞の変化について解析したところ、表皮、真皮ともに加齢にともなって幹細胞の数が有意に減少していることが明らかとなりました(幹細胞マーカー:CD271)。
皮膚の幹細胞の減少は、皮膚の再生能力の低下させ、皮膚の老化や疾病の発症に大きく影響を及ぼすと考えられます。

* J Dermatol. 43(3):311-3. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26300383/

◆ その他の皮膚に存在する幹細胞について

これまでの研究から、皮膚には表皮、真皮の幹細胞以外にも毛包(バルジ)に存在している毛包幹細胞、色素幹細胞、脂腺幹細胞や皮下脂肪組織に存在している皮下脂肪幹細胞など、幾つかの幹細胞が存在していると考えられています。これらの幹細胞が役割分担することで、効率的に各組織の恒常性維持に努めていると考えられています。