学園月報ふじた第65号原稿 


「摂食・嚥下リハビリ」食べる楽しみを取り戻す

人間にとって、『食べる』ことは本質的な悦びです。けれども脳血管障害などによって生じる摂食・嚥下に必要な器官の障害は、食べる際に誤嚥や窒息の危険を生み、しばしば生きる楽しみである『食』を奪います。

Aさんは58歳男性で、脳硬塞の発症3ヶ月後に転院されてきました。前の病院では誤嚥の危険があるという理由で鼻から胃へのチューブが留置され、流動食で栄養を取っていました。けれども御本人の食べることへの意欲はとても強く、懸命なるリハビリによって2ヶ月後の退院時には、チューブが外れ、ほぼ普通の食事がとれるようにまでなりました。自宅に帰った現在も、家族と同様な食生活を送っておられます。

危険だという理由で食べることを諦めるのは容易です。しかし、適切なリハビリによって少量でも口から食べることが可能な場合も多いのです。

私達言語聴覚士は、人間らしい生活の基本となる『食べる』ことを回復させる『摂食・嚥下リハビリ』を日々研摩し、発展させていきたいと考えています。

藤田保健衛生大学病院 リハビリテーション部
言語聴覚士 副主任  久納 俊雄

(掲載時の原稿を一部修正してあります)

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2001.2. 6 Tsuzuki