藤田保健衛生大学精神科

研究内容

精神遺伝学チーム (Psychiatric Genetics Team)

当チームは岩田教授の下、大河内准教授、牧之段准教授、鳥塚講師、齋藤講師、青木講師、竹田助教が所属し、この他大学院生3名が所属しています。

主な研究テーマは以下のとおりです。

  • 1)精神疾患感受性(リスク)遺伝子の探索
  • 統合失調症、双極症などの精神疾患は、過去の疫学的研究から遺伝的要因がその発症に関与していると考えられており、疾患感受性遺伝子の探索が古くから行われてきました。とくに2003年のヒトゲノム計画の完了により、精神科遺伝学はそれまでの候補遺伝子研究(Candidate Gene Approach)から全ゲノム関連解析(Genome-Wide Association Study : GWAS)に軸足を移しており、数々の成果をあげております。
    当チームでは国内外の研究機関と連携し、GWASの手法を用いた日本人統合失調症や双極症の疾患感受性遺伝子を日本で初めて同定するなど、日本にとどまらず世界の研究チームと渡り合える成果を上げております。

  • 2)うつ病における遺伝環境相互作用の解析
  • うつ病は有病率・自殺率の高さ、社会的損失の大きさから近年もっとも注目されている精神疾患の1つです。過去の研究から、うつ病の発症には遺伝要因とストレスなどの環境要因が相互に影響を与えていることが示されていますが、確定的な報告はまだありません。
    チームでは職場におけるストレスや、日常に起こるストレスなどのチェックをしながら(環境要因の計測)、前述の全ゲノム関連研究を同時に行うことで、遺伝環境相互作用を同定することを目指しています。

  • 3)精神科疾患において使用される薬剤に対する薬理遺伝学的研究
  • 精神科疾患の治療の1つに薬物療法があります。薬物は適切に使用すれば病気で苦しむ方の症状を軽くし、再発を予防することによって生活を支えることができます。しかし、数多くある薬剤の中には、重要な役割を果たすにもかかわらず重篤な副作用を持つものもあります。
    当チームでは、遺伝学的な視点から、向精神薬の効果・副作用を規定する遺伝子多型の探索を行っております。将来的には、遺伝子検査によって、1人1人に適切な医療を行う「プレシジョンメディシン」の実現を目指しております。

  • 4)精神科疾患の病態解明に対する解明プロジェクト
  • 多くの精神科疾患の病態は未だ明らかになっておらず、病態を解明することには重要な意義があります。例えば、精神科疾患の原因や発生のメカニズムが明らかになり、それが予防策や治療法の開発つながります。また、病態解明にたどり着くことで、精神科疾患に対する社会的な誤解や偏見を減少させることに役立ちます。
    当チームは、日本医療研究開発機構の「脳神経科学統合プログラム 精神・神経疾患メカニズム解明プロジェクト」に採択されており、他の研究機関と連携しながら、全ゲノム関連解析を基盤とした精神疾患感受性遺伝子の機能の解明を目指しています。

  • 5)新規作用機序抗精神病薬探索プロジェクト
  • 抗精神病薬は統合失調症の治療薬として世界で幅広く知られた薬物です。効果や副作用には個人差があり、現在用いることができる抗精神病薬では十分に治療効果が得られない場合や、副作用のために中断せざるを得ない場合もあり、病態解明も含め新規作用機序抗精神病薬の登場が期待されます。
    当チームは、日本医療研究開発機構の「ゲノム研究を創薬等出口に繋げる研究開発プログラム」に採択されており、他の研究機関とも連携しながら全ゲノムデータを基盤とした新規作用機序抗精神病薬探索のプラットフォームの開発を目指しています。

以上様々な観点から精神科疾患における遺伝的要因の探索を行うことにより、その病態生理や発症要因の解明に寄与し、「より良い」医療の実現に向けて研究を行っております。