健康アドバイス

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旅行をされる方や空港島を利用される方の健康の維持や増進、また万が一体調を崩されてしまった場合の対応策など、空港診療所での頻度の高い疾患を中心にまとめました。みなさまのお役に少しでもお役立ていただければ幸いです。


【これから出発する方・到着する方へ】
旅行は、普段の生活から離れ、いつもと異なる気候や食文化に触れることができます。楽しい思い出を作られる方も多いことでしょう。しかし、無理な日程や過密なスケジュールは、体に少なからずストレスがかかってしまいます。そのような環境下では、体調への悪影響を及ぼしやすくなっています。

機内での変調

地上とは異なる飛行機内の特殊な環境は、体調への影響を及ぼしやすい環境となっています。

気圧対策

飛行機はフライト中、上昇や降下を繰り返すため、気圧の変化が生じます。そのために、耳に痛みを感じることがありますが、これを「航空性中耳炎」といいます。
軽症の場合、耳が詰まるような感じや軽い痛みが出ますが、数分から数時間で治ってしまうことが多いです。もし痛みを感じたら、次のような方法を試してみましょう。

■治療(軽症の場合)
1.水などを飲む
2.ガムを噛む
3.欠伸(あくび)をしたり、鼻をつまんで唾を飲み込む
4.首を左右に動かしたり、アゴを上下に大きく動かす

それでも違和感がとれないときは、スキューバダイビングで行われている、「耳抜き」を試してみましょう。

■「耳抜き」の手順
1.最初に鼻をかみます。
2.鼻をつまんで空気を吸い込み、口を閉じて吸い込んだ息を耳へ送り込みます。

ただし、あまり強く行うと鼓膜を痛めるので注意が必要です。
風邪をひいていたり、アレルギー性鼻炎などがある方は、針で刺されるような激しい痛みや、ゴーという低い耳鳴りなど症状が現れやすいため、旅行前に治療を受けられることが望ましいです。このような症状は、適当な治療や処置を行わなければ、数時間から数日間続くことがあります。上記の方法で効果がみられない場合、機内で行える対処として、うっ血除去点鼻薬の使用、抗ヒスタミン薬の服用、または鎮痛剤の服用が挙げられます。地上についても治らない場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

防寒・保湿対策

飛行機内は空調がしっかりときいていることが多いと言われます。一方、湿度はきわめて低くなっており乾燥しやすい状態にあります。そのため、適度な水分摂取が必要であり、コンタクトレンズ装着者は、点眼回数を増やしてください。体温のバランスを保つために、防寒対策等が大切となります。長袖シャツやソックスを機内に持ち込んだり、毛布を借りるなどして、体を冷やさないように工夫をしましょう。

飛行機酔い

飛行機は気流が不安定で揺れる場合もあり、乗り物に弱い方は、あらかじめ予防対策をとっておくことが好ましいでしょう。酔い止めの薬を服用することも効果的です。
席に着いたら、ベルトやネクタイなどを緩めて、頭を座席などにもたれかけさせて、イスをリクライニングさせたり、座席に余裕がある場合は横になったりして、ゆったりと楽な姿勢をとりましょう。また、過度な飲食、アルコール摂取は禁物です。簡単な食事を何度かに分けて食べるとよいでしょう。
もし座席の場所が希望できるようでしたら、翼の上の揺れにくい場所を予約しておくのもよいでしょう。

アルコール酔い

フライト中は、機内の気圧が下がっています。そのため、酔うスピードは地上の3倍だと言われています。いつもの勢いでお酒を飲んでいると、急に吐き気が込み上げてくるなんてことも。気をつけましょう。

妊婦さんの飛行機搭乗

正常な妊娠経過をたどっている妊婦さんに対しては、一般的には危険はないと考えられています。しかし、機内環境の特殊性を鑑み、妊婦ならびに胎児への影響を考慮すると、飛行機利用のもっとも適している妊娠時期は、安定期である妊娠12週から28週頃までとされています。
妊婦さんの状況にもよるので、まずはかかりつけの産婦人科で飛行機を利用することについて相談してください。また、出産間近の飛行機の利用は、航空会社において診断書の提出が必要です。航空会社によって、対応が異なるため、事前に確認をとっておきましょう。また、診断書はかかりつけの産婦人科で準備してください。

■搭乗前に・・・
予約時には必ず、妊娠中であることを伝えておきましょう。航空会社のスタッフが、荷物や席などの配慮をしてくださることもあるようです。
■搭乗中に・・・
締め付けの強くない、ゆったりとした服装を心がけましょう。また、長時間同じ姿勢で座ったままでいることで起こる、ロングフライト症候群(エコノミー症候群)には、注意が必要です。座ったまま足をこまめに動かしたり、かかとの上下運動をしたり、気分転換を兼ねて、1~2時間ごとに通路を歩行するなどして、血流を良くしましょう。また、水分を充分に取ることも必要です。

動物に噛まれたら

万が一動物に噛まれた場合、どんなに小さな傷でも、まずは低刺激性抗菌石けんおよび水でよく洗い流してください。傷の回りの唾液が付いているところも、良く洗い流します。動物による咬創は化膿しやすく、動物が病気に感染していることもあります。動物種を確定して、できるだけ早く医療機関へ受診しましょう。

わが国では、現在狂犬病の発生はありませんが、狂犬病流行国を旅行中に感染したり、流行国から運ばれたペットから感染する危険性があります。また、狂犬病ウイルスは、イヌばかりでなく、ネコ、キツネ、オオカミなどによっても感染します。万が一、狂犬病流行国で噛まれた場合、できるだけ早く医療機関でワクチン接種を受けることが必要です。

その他、ハチなど虫による刺傷、サソリによる刺傷、ヘビによる咬傷、海での咬傷刺傷等、多くの危険があります。「咬まれない、刺されない」が重要ですので、注意して行動してください。

当診療所でも、狂犬病ワクチンを取り扱っています。ワクチン接種は予約制となっておりますので、事前にお問い合わせください。


急性胃腸炎

ウイルスや細菌などの病原微生物によって、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状が急発する様々な病気の総称です。食物を介して起こる場合を、食中毒といいます。腸炎ビブリオ、腸チフス、赤痢、病原性大腸菌、ノロウィルス、ロタウィルスなど、ご存知の通りたくさんの病気があります。 運悪く発症した場合には、薬の服用とこまめな水分補給そして、食事療法が主な治療法です。お茶や白湯、またお粥など胃腸に負担をかけない刺激物を含まないものを摂取しましょう。
子供はとくに脱水になりやすいため、急激な体重や尿量の減少、皮膚粘膜の乾燥、いつもより元気がなくすぐ眠ってしまうといった意識状態の変化がある場合には、治療を急ぐ必要があります。
嘔吐のために水分が充分に補えなかったり、激しい下痢で脱水が激しいときは、点滴や入院の治療が必要とされる場合もあります。

予防のためには、汚染されている可能性の高い生もの、生水や水道水の摂取を避け、食器の清潔にも気をつける必要があります。 食中毒が起こりやすい暑い季節には、食物は十分加熱してから食べるように心掛けましょう。また、食事前や外出から帰ったときは、必ず手を洗う習慣をつけましょう。
また、旅行では、環境の変化や心身のストレス、異なる食文化に触れることにより、下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こしてしまうことがあります。多飲・過食は避けられることをおすすめします。


腹膜透析(CAPD)患者さんの旅行

当診療所において、ベッドのご利用が可能です。
診療状況によって混み合っていることもありますので、事前にご連絡を下さい。


常備薬を忘れないように

高血圧など、慢性疾患の治療薬を家に忘れてきてしまった場合、薬の再処方は健康保険の適応外です。そのため、自費診療となります。

旅行・出張に出発される前に、もう一度忘れ物がないか、ご確認ください。

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【空港島をご利用される方へ】

熱傷(やけど)

レストランでの食事中、飛行機内での熱い飲み物、また調理の際など、日々の生活の中にはやけどの危険性がいたるところに潜んでいます。また、夏の強い紫外線による日焼けもやけどの一種で、重症化する場合もありますので、確実な紫外線予防対策を行ってください。熱傷は、受傷後の対処の早さやその内容によって、その後の経過が大きく左右されます。

受傷後の手当て

第一に、患部を冷たい流水で冷やします。痛みが取れるまで充分に冷やしてください。(ただし、熱傷範囲が広い場合、広範囲を冷やし続けることも低体温になる危険がある為、注意が必要です。)

■すぐに治療開始が必要な場合
広範囲の熱傷(やけど)やその程度によっては、すぐに治療を開始することが必要です。
手のひらよりも大きな熱傷や、患部が汚れている場合、また、水疱ができている場合はもちろんのこと、とにかく早目に医師の診察を受けましょう。
水疱(水ぶくれ)ができてしまったときは、決して潰さないようにしましょう。傷口から感染を起こしてしまうおそれがあります。

外傷(捻挫・骨折)

捻挫や骨折、突き指が疑われるときは、無理に動かすことは禁物です。「RICE処置」が基本となります。

Rest(安静)
患部を安静に保ち、動かさないようにします。
Ice(冷却)
氷や水で患部を冷やします。皮膚損傷のおそれがあるので、氷は清潔なタオルなどで覆った上で使用しましょう。
Compression(圧迫)
包帯や大きめのハンカチなどを使って、軽く患部を押さえます。その際、皮膚が変色したり、痺れが起こるほどの強い圧迫は危険です。
Elevation(高挙)
患部を心臓より高く挙げます。出血の程度を少しでも抑えることができます。

外傷(すり傷・切り傷)

どんなに小さな傷口でも、その後の処置が適切なものでないと感染を起こし、治療の長期化、難治化、場合によっては合併症の発生等があり、命に関るような大事に至ってしまうこともあります。ここでは、受傷後の応急処置をご紹介いたします。

手順

  • 1.傷口が汚れているときは、流水(水道水)できれいに洗い流します。
  • 2.水分を拭き取ります。
  • 3.出血がある場合は、きれいなハンカチやガーゼを使って傷口をおさえながら、患部を心臓より高く挙げます。
  • 4.早目に受診しましょう。

特に、出血が止まらない、水で洗っても汚れが取れない、化膿してきた、などの場合は、早急に医療機関を受診しましょう。


熱中症

強い日差しが降り注ぐ炎天下、また熱がこもった夏場の車中で、暑さにぐったりする経験は多くの方がされているのではないでしょうか。
熱中症は、高温多湿下での運動や労働の際に、身体から空気中への熱の放出が難しくなり、大量の発汗にも関わらず体内に熱がこもり、著しい脱水、深部体温の上昇を来たして、身体の代謝・生理機能に悪影響をもたらします。このために、時にはけいれんや昏睡など、生命の危険に至ることもあります。
「高温多湿下」の環境が引き起こす障害ですので、室内で過ごしていても起こりえます。
また、熱中症は夏だけの病気ではありません。激しい運動や労働では季節を問わず、また冬の暖房のよく効いた室内でも起こる場合があるのです。

では、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。そして、応急処置はどんなことをすればいいのでしょうか?

熱中症にならないために

■体調を整える
睡眠不足や風邪気味のときなど、体調が悪いときの外出は、朝方や日中の暑さが和らいだ夕方以降にするなど、調整を行いましょう。
■服装
通気性のよい洋服や、日傘、帽子などを用いましょう。
■こまめな水分補給
「のどが渇く」と感じたときには、すでに水分不足になっていることが多いといわれます。こまめな水分補給を心掛けましょう。また、夏場は汗と一緒に塩分が失われます。汗をかいた後には、スポーツドリンクなど、電解質が含まれている飲料がおすすめです。

体温調節機能が未発達である乳幼児や、年齢に伴って身体機能が低下してきている高齢者においては、熱中症にかかりやすい状態にあります。なってしまう前に、予防を心掛けましょう。

熱中症かなと思ったら

高温下でめまいや、クラクラと立ちくらみを感じる、また体のだるさを感じたら、「たいしたことはない」と過信せず、早めに対処することが大切です。

  • 1.涼しい日陰やクーラーの効いた室内に移動する。
  • 2.水分・塩分(スポーツドリンクがよいでしょう)を補給する。
  • 3.体を冷やす。(手足に水をかけたり、水で冷やしたタオルを首筋や脇の下に当てる、うちわで扇ぐなど、体にこもった熱を発散させましょう。)
  • 4.衣服をゆるめて休む。

意識がはっきりしない場合は

反応が鈍い、言動がおかしい、意識がはっきりしない、意識がない。
すぐに救急車を呼んでください!救急車が到着するまでも、水をかけて体温を下げるなどの応急処置を行いましょう。しかし、意識がはっきりしない状態での水分補給は決して行ってはいけません。また、吐いてしまった場合、のどに詰まらせないように横向きに寝かせてください。


肘内症

肘内障とは、肘関節が抜ける状態をいいます。腕を強く引っ張ったりねじったりすることで、起こりやすい症状です。肘の関節が未成熟な幼児・小児期に多く見られる障害です。

症状

激しい痛みが突然起こり、痛がり泣き出すことが多いでしょう。また、患肢をだらんとたらしたまま曲げようとしません。骨折とは異なり、腫れを認めないのが特徴です。
治療(整復)をすれば、すぐに普段どおりに腕を動かしだします。治療後の固定は特別な場合を除き、必要ありません。

小児の腕や手を引っ張ることは注意して行いましょう。


膀胱炎

膀胱炎は、膀胱に細菌が入って感染し、炎症を起こす病気ですが、体の構造上、女性に多い病気とされています。

1.頻尿、2.排尿時の痛み、3.残尿感、4.尿が濁っている、などが主な症状です。
治療を開始すれば、数日後に症状が和らぎます。
しかし、自分の判断で治療を中止すると、再発しやすい病気ですので、医師の指示通り、処方された薬は正しく服用しましょう。
早く病気を治し再発を防ぐために、次のような注意を守りましょう。しっかりと治癒したかどうかを判断するために、もう一度医師の診察を受けていただくことをお薦めします。

発症防止のための注意事項

  • ■尿意をがまんしないこと。
  • ■水分(お茶など)をよくとること。
  • ■外陰部を清潔に保つこと。
  • ■体、特に下腹部を冷やさないこと。
  • ■過労を避けること。
  • ■便通をよくすること。
  • ■刺激部(酒、わさび、こしょう、とうがらし等)をさけること。

花粉症

花粉症は、症状が軽い段階で治療を開始することで、症状の重症化を防ぐことができます。早期の治療開始により、粘膜の炎症の進行を食い止めることができ、早く正常化させることができるためです。

花粉症の治療には、抗ヒスタミン薬が最も多く使われています。抗ヒスタミン薬には、眠気・だるさ・めまい・口渇などの副作用が出ることがありますので、仕事や車の運転などには注意をしましょう。
また、抗ヒスタミン薬は、アルコールを一緒に服用すると薬の効果が強く現れることがあります。お酒と一緒に服用することは避けましょう。


風邪症候群

「風邪症候群」とは、鼻からのどまでの上気道を中心とする部分に、ウイルスや細菌が感染して起こる急性の炎症です。鼻やのどの粘膜が炎症を起こしてのどが痛くなったり、鼻水が出たりする上気道炎や、頭痛、のど痛、発熱などの感冒を総称します。いわゆる「かぜ」と呼ばれているものです。インフルエンザもその一つに含まれます。

原因としては、80~90%がウイルスによるもので、これらのウイルスや細菌は空気中に常在しており、季節の変わり目による気温・湿度の変動や、心身の疲労・ストレスなどの要因が重なると、体力や免疫力、抵抗力が低下し、感染します。

風邪にかからないために

 「風邪は万病の元」と言うように、こじらせると肺炎など重篤な疾病を引き起こすおそれもあります。そうなる前に、日頃から体力や免疫力、抵抗力をつけられるよう、日常生活の中に取り入れられる自分なりの工夫・方法を見つけてみましょう。

  • 睡眠を十分にとり、栄養のあるものをバランスよく食べる。
  • 心身ともにストレスを溜め込まない。
  • 適度な運動を取り入れる。
  • 食事前・帰宅時には、手洗いをしっかりと行う。

風邪を早く治すために

風邪の初期症状が出始めたら、早めに休養を取ることが、早い回復への道です。室温を快適なレベルに調節して、睡眠を十分にとり、消化のよいものを食べましょう。
症状が辛いときは、医療機関に受診しましょう。
小児やご高齢の方は合併症を起こしやすいため、ぐったりしていて元気がないなど、いつもと違う様子がみられるときには、要注意です。
また、喫煙はのどや気管支の粘膜に傷をつけます。そのため喫煙者は風邪をひきやすい状態にあります。せめて風邪のときは喫煙を控えましょう。 
疲れたなと思ったら、睡眠を多めにとる、栄養バランスを気にかけてみる、趣味を見つけて自分の時間を楽しむなど、ちょっとした自分への心遣いで、日々のストレスと上手に付き合えるような方法を見つけられるといいですね。

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