石川グループ
主に精神疾患の病態解明や治療法の土台となるバイオテクノロジー開発を行っています。
神経精神疾患を細胞レベルで評価できるようにするためには、病気のモデルとなる神経系の細胞をシャーレ内で再現する必要があります。そのためには、患者さんから採取した血液などの細胞を一度iPS細胞として初期化させたのちに神経細胞やグリア細胞などに分化誘導させます。また疾患に関連する遺伝子を操作することで病態が再現される細胞を作ったりもします。
脳神経系には非常に沢山の細胞種(近年は、神経細胞だけでも何百種類も存在することが分かってきました。)が存在するため、精神疾患の病態中心が一体どのような細胞にあるのかを評価すること自体が重要な研究テーマです。そのために、我々はiPS細胞から標的の神経系細胞を正確につくりだす技術を開発しています。
また、神経精神疾患の治療標的や治療法を評価するには多数の検体を用いたスクリーニング試験が必要になります。我々は、神経機能を操作・可視化する技術を応用して多検体を取り扱うシステム開発を行っています。
ヒトES/iPS細胞からの体細胞分化技術開発
iPS細胞の発見から15年以上がたちますが、一方で未分化細胞からの成熟した体細胞に分化させる方法は未だに開発が求められています。とりわけ、種々の神経疾患に大きな関与があると考えられているにもかかわらず、これまで作ることのできなかった特殊な体細胞がたくさんあります。我々は遺伝子導入による転写制御技術を武器に、それらをシャーレ内に作り出す研究開発を行います。
実施例や共同研究を含む実績
神経機能モニターのための可視化やスクリーニング系開発
他の細胞と異なり、神経細胞が持つ最も特徴的な性質は、電気信号を使って情報を受け取り、統合し、伝える点です。一般的に、多くの検体や候補薬を利用した際に細胞の電気的情報を高スループット性に評価することは難しいです。我々は、電気情報を画像イメージングなどに置き換えた技術基盤開発を行っています。
米国MIT、Stanford大、およびシンガポール国立大学-米国Duke大医学部(Duke-NUS)との共同研究を進めています。
シャーレ内のヒト神経細胞のライブイメージング、赤:グルタミン酸神経細胞、青:GABA神経細胞、緑:細胞内カルシウム。 これらを経時的にモニターして、細胞の形態・移動・活動性を評価している