藤田リハビリテーション医学・運動学研究会会報
第1号 1998,9
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医療をめぐる環境の変化は大きく混沌としたものがあります.また,リハビリテーション医学・医療がしめる役割は今後ますま す大きなものになります.その中にあって新しい強靱な(robust)リハビリテーション医学・医療を創造することが我々の役割です.当研究会もこの目的のために設立されました.
当研究会を大いに活用することで,リハビリテーションの発展に寄与できることと考えます.
本会は,藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座を中心とした藤田保健衛生大学関連のリハビリテーション医学・運動学の研究,教育,啓蒙活動を促進,支援するための各種活動を行うことを目的とします.
目的達成のため次の事業を行います.
1)研修会の開催
藤田保健衛生大学リハビリテーション専門学校同窓会と協力して同研修会を原則として年2回(春,秋)以上開催します.
同研修会は,リハビリテーション医学・運動学に関連した優れた研究,臨床を会員に紹介するために適切な演者を選出し,その講演を企画します.2)藤田リハビリテーション医学・運動学研究会賞の授与
同賞は,毎年4月に前年度の最も優秀な研究を行ったと思われる本会会員に与えられます.
3)関連組織
藤田保健衛生大学 医学部リハビリテーション医学講座
同 リハビリテーション専門学校
同 第1教育病院リハビリテーション科
同 第2教育病院リハビリテーション科
同 第4教育病院リハビリテーション科
同 リハビリテーション専門学校同窓会
同 医学部リハビリ医学講座関連病院
毎週水曜日16時より17時まで行っている臨床主体のカンファレンスに加え,新しい試みとして以下8つのテーマにつき,各テーマごとに医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によるチームを編成し,15分のミニレクチャーを行なった
1.リハビリテーションと臨床検査
2.回復のメカニズム
3.体力と運動耐用
4.装具とバイオメカニズム
5.リハビリテーションテクニックの科学性
6.痛み・除痛
7.老化のすべて
8.歩行分析このうち「老化のすべて」を担当した鈴木美保,早川美和子,村田元徳,小田木千明,川口佳代チームがBest of Conferevce賞を獲得した.
健康政策調査研究事業分担研究.個人の摂食能力に応じた味わいのある食事内容・指導等に
関する研究
摂食・嚥下障害のスクリーニング法としての「反復唾液嚥下テスト法(Repetitive saliva swallowing test;RSST)の有用性を確認するために,1)嚥下障害患者におけるビデオレントゲン検査と反復唾液嚥下テスト法との関係,2)嚥下障害患者におけるRSST所見の経時的変化,3)RSSTによる温度刺激法の治療効果,の検討を行った.
RSST手技は,被検者を座位とし,検者は被検者の喉頭隆起・舌骨に指腹をあて,30秒間嚥下運動を繰り返させる.被検者には「できるだけはやく何回も“ごっくん”と飲み込むことを繰り返して下さい」と説明する.喉頭隆起・舌骨は,嚥下運動に伴って,指腹を乗り越え上前方に移動し,また元の位置へと戻る.この下降運動を確認し,嚥下完了時点とする.こうして嚥下運動時に起きる喉頭挙上から下降運動までを触診で確認し,30秒間に起こる嚥下回数を数える.
嚥下障害患者では,1回目の嚥下運動はスムーズに起きても,2回目以降,喉頭挙上が完了せず,喉頭隆起・舌骨が上前方に十分移動しないまま,途中で下降してしまう場合がある.これを真の嚥下運動と鑑別することに注意を要した.口渇が強く,嚥下運動を阻害していると考えられる患者には,人工唾液(サリベート)や少量の水を口腔内に噴霧し,同様にテストを施行した.結果
1.嚥下障害患者におけるビデオレントゲン検査と反復唾液嚥下テスト法の関係
全症例のRSST回数の平均値は2.13回であり,0回:26例,1回:29例,2回:26例,3回以上:55例であった.すなわち,1回までが55例(40.4%),2回までが81例(59.6%)となった.
VF所見とRSST所見との相関関係は,送り込み障害0.379,誤嚥量0.594,誤嚥頻度0.580,不顕性誤嚥0.238であり,誤嚥所見との相関が高かった.2.嚥下障害患者におけるRSST所見の経時的変化をみると,RSST所見が,1回以上改善した例では,11例中10例で誤嚥所見の改善があった.一方,RSST所見が,改善しなかった12例においては,誤嚥所見の改善を認めた症例は3例にとどまった.
3.RSSTによる温度刺激法の治療効果の観察
治療法である温度刺激後,嚥下惹起性が低下していた遅延群ではRSSTの1回目潜時が有意に短縮したが,非遅延群では有意差は認められなかった.結論
一連の検討から,摂食・嚥下障害を有する患者のスクリーニング法として,RSSTは簡便で有用な手法と結論できた.VF所見との相関から,咽頭期障害をよく反映し,その感度は十分高いテストと結論できた.またRSSTとVF所見の経時的変化もよく関連しており,その妥当性を裏づけた.治療効果をRSSTで見た場合,温度刺激法による惹起性の向上は確認できたが,遅延性効果や長期的効果の検討が課題として残った.
在宅歯科診療および老人保健施設等の施設における歯科診療適応のある高齢障害者において,歯科診療が,高齢障害者の全身状態,特に機能上や生活上の障害に及ぼす効果について検討した.歯科的介入前・後の障害の変化(知的状態,ADL,QOL,摂食機能,口腔状態などの指標を使用)を観察し,同時に,介入時期をずらした対照群を作成することによる対照研究を行った.また,歯科関係者による障害状態の採取が容易な評価表の作成を検討した.なお,ここで「障害」とは「疾病などの原因により日常の生活を困難にする状態」を意味する.
結果
1)評価表を用いた障害所見に関する検者間の信頼性は,ICCで0.6〜0.9と十分高く実用的であった.2)治療前後の比較で,改善例から増悪例を差し引いた頻度が10%を越えた項目は,神経学的所見で意識状態,人に対する見当識,ADLで食事,表出,起立,QOLで生活満足度,患者および治療者からみたFace scale(全般的満足度),食事項目で摂食状態,食事時間,全ての口腔機能(ガム咀嚼テスト,川口式咀嚼機能,RDテスト,義歯清掃度,口臭)となっていた.改善を認めた指標の割合,効果の程度から考えて,歯科的介入は,口腔機能の改善をもたらし,それが,食事機能を向上させ,QOL,ADLによい影響を与えると考えやすかった.また,これらの項目の改善度と訓練など他の介入の時期との間には全く相関がなかった.3)先発群と待機群の2群間で,Mann-Whitney U 検定にて改善度に有意差のあった項目は,治療者よりみたFace scale(p<0.03)とガムテスト(p<0.03)であった.
結論
1)歯科関係者のADL所見や神経学的所見採取の信頼性は,評価表を作成しマニュアル等を準備すれば十分高いと思われた.2)慢性期の障害高齢者のADL,QOL,食事機能に対する歯科的介入効果は,十分大きく明らかであると思われた.また,他の訓練などによる変動要因は十分に除外できた.3)対照試験での効果は,治療者よりみたFace scaleとガム咀嚼テストにとどまったが,これは試験数が少ない点が主たる要因と思われた.また,今後,盲検的手法が必要と思われた.
高齢化社会を迎え,疾病やその後遺症を抱えながら生活する高齢者は急増している.その中で,摂食・嚥下障害に悩まされている人々も数多い.食事は人間の根元的悦びであるのはもちろん,日々必要な行為であり,その障害により窒息や誤嚥性肺炎,脱水や低栄養の危険といった深刻な2次的問題を引き起こす.しかし,実際には摂食・嚥下障害への系統的対応が立ち後れている.急性期に救命のため用いられた経鼻経管栄養をそのまま慢性期まで使用する弊害は広く指摘されてきている.一方,嚥下障害は外部から観察しにくく,誤嚥という大きな危険を伴うため,安易な経口摂取への移行は問題である.
そこで,「摂食・嚥下障害高齢者に対する栄養摂取のあり方に関する研究」委員会を設置し,臨床検討を行った.すなわち,高齢者における摂食・嚥下障害の病態を適切かつ現実的に評価し的確な対応を行うために,系統的対応施設,非系統的対応施設,在宅,施設入所者における現況を実態調査し,また,全国での摂食・嚥下障害への取り組みをアンケート調査し,摂食・嚥下障害高齢者に対する栄養摂取のあり方の実用的ガイドラインを試作した.摂食・嚥下訓練を施行した89症例中,訓練開始時に経管栄養を必要とした30例に注目すると,訓練後16例(53.3%)で経管栄養が不要となった.
また,摂食・嚥下障害食を必要とした32例に注目すると,訓練後11例(34.4%)で普通食のみでの栄養管理が可能となった.
藤田保健衛生大学脳神経外科神野教授らとの共同研究の一環として,97年1月に6日間にわたり米国,Case Western Reserve University(CWRU)のFES(Functional Electorical Stimulation)研究グループ Professor Keith 主催のセミナーに脳神経外科庄田先生,大隈先生,リハ科馬場先生,リハ専門学校田中作業療法士とともに参加しました.
皆様ご存じのようにCWRUはFESの研究実績ではCanadaのアルバータ大学と並び世界を代表する研究グループです.以下に簡単ではありますが,FESについて概説し,後半では,CWRUのFESの研究状況について報告いたします.
まず,FESの原理について説明します.FESは中枢性の麻痺によって生じた運動制御の障害を電気刺激によって再建するものです.ご存じの様に興奮性組織である神経や筋は,電気刺激によって興奮し,筋は収縮します.FESは,その電気刺激波型をコンピュータによって制御し,機能的な動きを作りだす事を目的としています.
FESの歴史をひもとくと1960年にLiberson が片麻痺患者の腓骨神経を電気刺激することによって足関節の背屈を再建する装置を開発したことが最初でありました.当時は,刺激電極も1チャンネルで,その制御もフットスイッチを用いて足が浮いた時にスイッチが入るという単純なものでありました.その後,テクノロジーの進歩にともない制御できるチャンネル数も増え,また皮膚表面より刺激していた電極も経皮式のものがで,また完全埋込み式へと変化してきております.加えて,目的となる動きも手指の把持動作や対麻痺者の歩行再建といったより複雑なものへと進歩してきました.今回我々が受講したセミナーは,CWRUで開発された Freehand System という頸随損傷者(C5,C6)に対する,手指の把握機能再建を目的としたものでした.このシステムは,8chの刺激電極を持ち,完全埋込み式で外部から電磁誘導によって電力の供給を行うものであります.このシステムによって再建される手指機能は,2種類の把握(Palmar graspとLateral Grasp),保持,リリースです.したがって手指の機能に関しては,2〜4指の屈伸(FDS,FDP,EDC),母指の内外転(AdP,AbPB),屈伸(FPL,EPL)を主に各筋のモーターポイントで電気刺激することにより上記2種類の動きを再建していました.また,把握の開始,保持,リリースは反対側の肩に配置されたジョイスティックによって肩甲帯の挙上下制,または突出後退のどちらかを選択して行っていました.
このシステムの利点は,力強い把握が可能になる点にあると考えられ,実際に把握をしてもらうとかなり力強い把握が可能でありました.また,問題点としては,現在でもかなり大きなバッテリーを持ち歩く(実際には車椅子に乗せる訳ですが)必要がある点,および,ジョイスティックが対側の肩にマウントされることにより対側上肢の使用が制限を受けてしまう事が上げられるとわれました.
その他,Professor Kiethの話では,装具を全く用いない対麻痺者の歩行の再建も実験室レベルでは可能となってきたとのことでした.FESは今,リハビリテーションの中でも変化の最も盛んな技術であり,今後中枢性の麻痺に対する治療はその進歩によって塗り替えられるのかもしれません.ところで,我々の研究室でも,現在,対麻痺者の歩行再建法を検討しており,新しく開発しつつある内側股継手付き装具,モータ,FESを組み合わせて全く新しい歩行補助システム(hybrid assistive system)を構築しつつあります.また,この研究は全国的にも注目されてきております .
私は米国,Johns Hopkins University Dept. of Physical Medicine and Rehabilitation (JUH PM&R)のAssociate Professor;Jeffrey B Palmer 先生の元に留学する好機を得た. 正味10ヶ月という短い期間ではあったが,非常に有意義な時間を過ごすことができ,これからの私の仕事のみならず人生にも絶大な影響を及ぼすであろう期間であったと思う.最初にこの場をお借りして,今回の留学のお骨折りを頂いた才藤栄一教授ならびに,私の留守中の仕事をすべて引き受けて下さった医局員の皆様,さらに留学の許可を医学部より得る際に,ご尽力を頂きました吉沢英造教授,渡辺 正 第四教育病院長に深く感謝の意を表したいと思います.
私が最初にJHUへの留学を言われたときの感想は,あの有名なJHUで研究が勤まるのか?ところで,JHUはどこにあるの?日本人はいるの?生活は?という不安である.しかし,皆様の協力で,右も左も分からぬままであったが,1997年11月,妻と1歳の娘をつれて渡米することができた.
JHUはMaryland州Baltimore市 にある.Washington D. C. の北東約70 Km,人口50万人ほどの港町である.アメリカの中では最も歴史の古い町の1つで,ゴッシック調の建築物が残る風格のある町だ.学都として実に充実している.特に医学関連分野ではアメリカの中枢の一角を担っている.JHUはもとよりNational Institute of Health (NIH)の研究施設の一部はBaltimoreにある.また,University of Maryland Baltimore School(UOMB)に医学部,歯学部があり,優秀な研究者が集まっている研究施設がある.嚥下関連では,まず,JHUにはSwallowing Centerと称する組織や雑誌Dysphasiaの事務局がある.DirectorはBronwyn Jones先生で,上部消化管造影ことに嚥下造影の大家である.我が師Palmer先生もこの組織の重要なメンバーで,リハビリテーション関連の臨床や研究は彼の仕事である.
一方,UOMBには,あのJames F. Bosma先生 (嚥下運動の筋活動をEMGで観察し,1955年,世界で最初に報告した.今でもその報告は引用されている.)が健在だ.さすがに第一線からは退いているが,その発言力はまだ大きい.UOMBの歯学部にも嚥下の研究を行うグループができた.主には,音声言語の研究を行って来たグループで,その舌運動の解析技術を嚥下の研究に応用している.NIHにはBarbara C. Sonies先生 (超音波の研究で著名)がいる.このBaltimoreエリアは嚥下の研究者が多く集まっており,さしずめ嚥下のメッカといった感がある.さて,肝心の研究についてである.私は,JHUのPM&Rに所属していたのであるが研究の対象は嚥下である.しかも,ヒトの嚥下である.ヒトを対象に研究を行う場合,アメリカでは厳格な手続きを必要とする.研究計画書を決められた書式に従い作成し,JHUの研究評価委員会,倫理委員会に提出し許可を得なければならない.動物実験の場合でも同じような手続きを踏むのであるが,ヒトの場合の方が厳格である.この場でこの研究は意味があるのかどうか,被験者を十分に保護しているかどうかなど審査されるのである.嚥下の研究の場合,X線を使わねばならないので侵襲がある.このため許可が下りにくい.多くの留学者はすでに許可が下りているプロジェクトの一部を任されるので,研究申請の苦労はしなくても良いが,新たな研究を始めようと思うと十分な準備期間を考えなくてはいけない.私の場合幸いなことに,Palmer先生がおよそ10年間にわたり記録した膨大な基礎データがあり,それを解析するのが大きな研究の1つであったので,仕事ができなかったということはなかった.しかし,1つの研究を企画し,研究計画書を作成したが,X線の器械をだれが扱うかという問題で,却下されてしまったことがある.
ところで,JHUは特に基礎系の研究施設が充実しており,その研究費は膨大である.実は,日本人留学者は私以外は私の知るかぎり全員,基礎系の研究室に所属していた.彼らは最低2年以上の計画で仕事を行っている.1年目で研究のテクニックを身につけ,2年目以降で結果を出すといった具合である.この間,湯水のごとく研究費を使わせてもらえるのだそうだ.研究者の多くは自費留学者でこちらでは殆ど給料はないのだが,これだけの研究費を使わせてもらえるのは有り難いことであると口をそろえて言っていた.大学側も世界の優秀な研究者をほとんど人件費なしで集めることができるのである.面白いシステムである.
さて,私の行った仕事は,先にデータの解析したといったが,そのデータとは嚥下造影(VFG)の画像である.VFGの側面像から,全てのフレームの,上下の門歯,上下の第二大臼歯,舌骨の二次元の座標をおこしてあった.VFGは1秒間に30コマのフレームを記録する.1分間のVFGの記録は,1800組みのデータを生むことになる.
VFGは正常成人を対象に,りんご,マフィン,ピーナツ,ガムにバリウムペーストを付けたものを普通に食べるという課題で記録されていた.Palmer先生は前回の日本での講演で口腔期のStage II Transport について説明したが,それらを証明するために取られた記録のようであった.しかし,私は舌骨の運動に注目した.
ヒトにおいては,舌骨の運動について詳しい報告はない.動物においては詳しい報告があるが,ヒトと動物では舌骨の位置関係が全く異なるので,動物とは非常に異なるであろう.また,舌骨の動きを観察する場合,舌骨は下顎骨に連続しているので下顎骨との相対的な位置関係にも注目しなければならない.なぜならば下顎骨は動くからである.このような,舌骨と下顎骨との相対的な位置を観察した報告はない.そこで咀嚼時の舌骨の運動を解析することを計画した.すべてのデータをコンピュータの表計算ソフトに落とす作業までは終了していたので,データを検討しうるものに加工し,並べ替えたり,グラフを作成したり,と,四六時中コンピューターの前に座った.これは好きでなければやってられない.このため,他人と会話をする機会が少なく,私の英語会話の能力の改善は著しく乏しかった.しかし,苦労の甲斐あって,世に発表できる結果をえることはできた.また,私の留学中に幾つかの,研究プロジェクトが立ち上がった.そのうちの大きなものは,UOMB,NIH,JHUとの共同研究である「痛み」をテーマにした研究である.
痛みをテーマにあらゆる関連分野が研究をするように企画されたものである.私たちは,歯科と協力し,痛みが嚥下機能にどのような影響を与えるか?これは,痛みが運動プログラムを直接に修飾するであろうか?という問題の解決につながるかもしれないのであるが,これを企画し,実行に移すことができた.これを微力ながら,手伝うことができ,これを通して,嚥下研究の準備や企画の仕方,結果の出し方,考察の仕方など,いろいろなことを学ぶことができた.今回の留学は,正直申しあげて,自分の最初に思っていたことはできなかった.その思っていたことというのは,論文を数本書く.というものである.実際にはやっと1本書くことができたのみである(この1本は価値ありと思っている).しかし,さまざまなアイデアを仕入れることができた.前述したように,実際の研究は殆どできないのであるから,臨床留学はこちらの目的の方が有意義であろうと思う.米国の嚥下研究のレベルも感じることができた.これらの知識は私の日本での研究の礎になるであろう.
留学の意味は自分に礎をつくる格好の機会ではないかと思う.私はこのような機会を与えられて本当に幸福だと思う.
最後に,私のアメリカでのボス,Jeffrey B.Palmer先生のお言葉より,「日本の研究者はアメリカの研究者の知らないことを知っていることがある.それは,恐らく日本語の論文がすばらしいからであろう.しかし,是非,それを英語で書いてほしいな.」
藤田リハビリテーション医学・運動学研究会への参加希望の方は
事務局責任者 早川美和子(藤田保健衛生大学病院リハビリテーション科)へご連絡を
TEL 0562-93-2168
FAX 0562-95-2906
E-mail:rehastaff@fujita-hu.ac.jp
会員の年会費は,藤田保健衛生大学職員は無料とする(但し,会報は施設内に表示のみで郵送しない).その他の会員は年1,000円を徴収する.賛助会員の年会費は1口50,000円とする.
各病院各療法科の様子をはじめ,研究成果,研修会で取り上げて欲しい講演テーマ・講演者,研究会への感想ご意見など原稿をお寄せ下さい.随筆なども歓迎いたします.
原稿の長さは,1000-2000字程度.パソコン使用の場合は,出力された原稿とTEXT形式で保存したフロッピーを添付してください(使用機種とソフトを明記してください).
手書きでもかまいません.
お寄せ頂いた原稿は,紙面の都合で割愛または分割掲載となる場合がありますので,ご了承ください.
自分が藤田学園に就職をする時,就職担当の先生から藤田学園の使命として,臨床・教育・研究の3つを教わりました.特に,藤田学園は私学であるために自分達で稼ぎ,後輩を教育し,自分から研究する事が藤田学園の発展にいかに大切であるか,これを行うことによっていかに自分自身の発展と環境作りに役立つかということを,その先生が熱弁され,自分が大きく感化されたことを昨日のことのように覚えています.
あれから十数年を経て,藤田学園は想像以上の発展を遂げていると思います.これは、第1から第4教育病院のリハ科の整備に始まり,リハビリテーション医学教室の創設,リハビリテーション専門学校の開設等です.このめまぐるしい発展の中から藤田学園リハビリテーション医学・運動療法研究会が発足しました.この会の発足にあたり,会長である才藤栄一教授(リハビリテーション専門学校校長を併任)は,私にその夢を語られました.1;この会は,藤田学園の教職員・在校生・卒業生を対象にしたものであるが,その
本質は愛知県全体のみならず,中部圏全体,ひいては日本全体のリハビリテーション
チームに携わる人を対象にした研究会である.
2;古い情報から新しい情報まで何でも検索し,常に新鮮な情報として会員に提供し,
リハビリテーションチームの臨床・研究・教育の啓蒙に役立つ手段とする.
3;閉鎖的である医学社会の中で,チーム医療を確立するために可能な限り斬新な心で
多くの問題に取り組み,また,世の中に訴えかける.
4;将来的にはリハビリテーション医学の牽引役としての研究活動を行う.これを聞いた私は,才藤先生の大きな野望に驚くとともに,藤田学園のみならず,日本全体のリハビリテーション医学の発展を心から心配されている先生の気持ちに,最近,忙しさの中で何かを忘れかけていた自分を恥じ,この野望に向けて自分も微力ではあるがお手伝いをできることはないかと考えています.
この研究会が今後どのように発展するか,これは,我々リハビリテーションチームに携わる一人一人の発展にかかっていると思います.
第1回 96年9月13日
1.廃用性筋萎縮について
講師 水野 雅康
藤田保健衛生大学医学部リハビリ医学講座講師廃用症候群はリハビリテーションの大きな柱の1つである.安静臥床による筋肉のミクロ的変化まで実験結果をふくめての講義をおこなった.
2.リハビリテーションは適応行動の学習
講師 大橋 正洋
神奈川リハビリテーションセンター部長患者はリハビリテーションに何を期待し,どう考え行動するのか.また我々はそれに対してどう対処すべきか,という訓練に際しての根本的な問題の行動療法学的アプローチについて解説した.
第2回 97年4月26日
脳卒中の理学療法の実際
講師 富田 昌夫
神奈川リハビリテーション病院理学療法科どうハンドリングしたら患者の能力を最大限に引き出せるのか.患者に参加していただき実際にポイントを解説し,実技を示した.
第3回 97年9月17,18日
1.リハビリテーション医療における心理学的諸問題
講師 Sara Palmer (サラ パーマー)
前ジョンズホプキンス大学リハビリ科講師リハ医療における患者心理の概要とそれへの対応の仕方を解説した.
2.摂食・嚥下障害のリハビリテーション
講師 Jeffrey B Palmer (ジェフリー パーマー)
ジョンズホプキンス大学リハビリテーション科助教授摂食・嚥下障害のリハビリテーションについての概要を解説.固形と液体の嚥下の違いに焦点をおいたPalmer氏の仮説が示された.
第4回 97年11月29日
1.計算理論-運動制御研究の最先端-
講師 小池 康晴
トヨタ自動車バイオ・ラボ担当員脳の機能を,計算機あるいは人工物で作れる程度に,深く本質的に理解するためのアプローチが計算理論であるである.難解と思われる理論を実際に即して解説した.
2.対麻痺者の歩行再建
講師 才藤 栄一
藤田保健衛生大学医学部リハビリ医学講座助教授対麻痺患者の歩行再建の概要を,装具療法,機能的電気刺激法をふくめて解説した.さらに当リハビリテーション科において開発中の装具についても紹介も行った.
第5回 98年5月9日
脳卒中片麻痺とADL
講師 柏木 正好
富士温泉病院食事をはじめとした座位中心の訓練につき,患者をモデルにして,アプローチ法を提示した.
編集後記 編集局長 鈴木美保
藤田研会員の皆様.待望の(?)機関紙が発行されました.予定より大幅にページ数が増えてしまいましたが,それなりに内容は吟味したつもりです.これから春秋2回の発行を予定しておりますのでご期待ください.原稿の依頼にはご協力のほどお願いいたします.
さて,ちょっとセンチメンタルな秋のはじまりには,とっておきのワインを味わいつつ「人生とは」などと哲学してみますか・・・.
恒例になりました当研修会も,回を増す毎に参加者数の増大がみられます.
運営側も今後更なるリハビリテーションの発展を願い,ますます充実した内容で会を運営する所存です.皆様のご意見,ご指導をよろしくお願いいたします.
なお,藤田リハビリテーション医学・運動学研究会入会ご希望の方は,
連絡先
藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座内
藤田リハビリテーション医学・運動学研究会
事務局 早川美和子
TEL 0562-93-2167 FAX 0562-95-2906
まで,ご連絡下さい.2000/9/6 Sonoda & Tsuzuki
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