主任教授挨拶
greeting
藤田医科大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座は1973年の大学病院開院と共に開設されました。1975年に初代主任教授として高須照男教授が就任された後、1976年より岩田重信教授、1999年より内藤健晴教授が歴任され、2019年に私が第4代主任教授として就任しております。また、1983年には坂文種報徳會病院(現藤田医科大学ばんたね病院)にもう一つの耳鼻咽喉科学講座が開設され、以後は耳鼻咽喉科同門会の下で2つの講座が共に切磋琢磨しつつ発展して参りました。2020年からはそれぞれ「耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座」、「耳鼻咽喉科・睡眠呼吸学講座」と改称しております。
一般的に耳鼻科というと耳、鼻、のどというイメージが強いと思いますが、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の扱う領域は広く、耳、鼻、のど、口、頸部、顔面など、首から上で脳、目、脊椎、歯以外の全て領域を扱います。また聴覚(聞こえ)、平衡機能(バランス)、音声(声)、嚥下(飲み込み)、呼吸、味覚、嗅覚など、人が良質な生活を送る上で重要な役割を担う機能を扱うと共に、口腔がん(舌がん)、甲状腺がん、咽頭がん、喉頭がんなどの頭頸部がんの治療を専門とする科でもあります。
医学部講座の使命は、臨床、教育、研究の3つです。当講座では「地域医療から世界水準の医療まで 次世代の人材と医療を生み出す」をテーマに掲げ、日夜努力を続けています。
臨床面において、当講座では耳鼻咽喉科・頭頸部外科の全ての領域において高度な診療を提供すると共に、地域の中核病院として心ある丁寧な対応を心がけています。良質な医療を実践するには多職種・多科の連携が必要不可欠ですが、頭頸部がん、口蓋裂、睡眠時無呼吸の治療に際しては、放射線科、腫瘍内科、形成外科、歯科口腔外科、リハビリテーション科、呼吸器内科等と定期的にカンファレンスを行い、患者さんにとって最適な治療を提供する体制を整えています。さらに当講座は、低侵襲かつ効果の高い内視鏡や手術支援ロボットを用いた次世代治療について国内有数の経験を有してます。併設する「頭頸部・甲状腺内視鏡手術センター」では甲状腺疾患や咽頭がん、喉頭がんに対するロボット支援手術・鏡視下手術を、「内視鏡下耳科手術センター」では内視鏡下の耳科手術を積極的に行っています。また、気道異物やめまいなどの救急疾患にも常時対応いたします。ありふれた疾患から高度な医療、救急疾患まで対応し、地域医療に貢献すると共に、世界水準の医療まで提供したいと思っております。
研究面において、当講座は吹鳴実験や電気生理を中心とした喉頭の基礎研究や喉頭アレルギーの病態解明など、歴代の教授によって喉頭科学の発展に寄与して参りました。喉頭研究の財産を引き継いで発展させていくと共に、当学先端ロボット・内視鏡手術学講座と連携を取りながら、耳鼻咽喉科・頭頸部外科手術の新たな内視鏡手術、ロボット支援手術の開発を行っています。また、画像診断、アレルギー、口蓋裂などの分野においても、次世代の医療を生み出して社会に貢献すべく、教室員が各々のテーマに取り組んでおります。本HPで各研究テーマの一端をご紹介しておりますので、是非ご覧頂ければと思います。
若手医師の教育面では、系統的な臨床教育、手術手技トレーニング、科学的思考のトレーニングの3つに重点を置いております。豊富な臨床経験は臨床医としての成長に不可欠であり、当講座には耳鼻咽喉科・頭頸部外科の全てを学べる豊富な症例があります。現場を経験して生きた知識を身に着け、更に系統的に学んでそれらの知識を定着して頂くため、1年を通じて定期的に系統的講義を行っています。また、ご献体を用いた手術手技研修(Cadaver Surgical Training、CST)施設を有するという当学の恵まれた環境を生かし、手術解剖実習を積極的に行うことで手術手技を安全に学んで頂いています。科学的思考を持つことは優れた臨床医になるために不可欠な要素です。若手医師には研究テーマを一つ持って頂き、研究を遂行して新しい知見を生み出すことを通じて、科学的思考を養って頂くようにしています。
最後に、医師の労働環境問題が取りざたされていますが、働きやすい職場環境は、医師が健全に働き、患者さんに良質な医療を提供するのに欠かせません。また、女性医師の割合は年々増加しておりますが、就労環境の問題から本邦では女性医師の就業率は子育て期に大きく低下しているのが現状です。ワークライフバランスに配慮した働きやすい職場を作り、妊娠、出産、育児、介護など、人生における様々な局面で医局員がキャリアを継続して成長し、人生における各々の夢を達成できるよう、そのお手伝いができる講座を作ることで、次世代の人材を育成し、社会に貢献していきたいと思っております。