『Scientific Reports』に、アルコール中毒症に関する研究の成果が掲載されました。
大学院生(D2)の村野友幸さんの研究成果が論文に発表されました。アルコール中毒症のメカニズムについてその一端が解明されました。
本研究の成果は、国際的電子ジャーナル『Scientific Reports』(日本時間3月15日)に掲載されました。
本研究の成果は、国際的電子ジャーナル『Scientific Reports』(日本時間3月15日)に掲載されました。
アルコール中毒症における脳の擬似未成熟性を発見
研究の背景と経緯
アルコール中毒症は大変頻度の高い病気ですが、その発症メカニズムはよくわかっていません。これまでに当研究室では統合失調症や双極性障害などの精神疾患に罹患している患者さんや、これらの疾患のモデルマウスの脳において、大人(成体)であるにもかかわらず、その一部分の細胞が擬似的な未成熟状態にあることを明らかにしてきました。今回、私たちはアルコール中毒症の患者さんの死後の脳においても同様の擬似的な未成熟状態が見られることを明らかにしました。
研究の内容
今回の研究ではランニング・フィッシャー法という情報科学的な方法を用いて、アルコール中毒症の患者さんの死後の脳における遺伝子の発現パターンを調べました。その結果、患者さんの脳と幼若期(0歳〜5ヶ月)の脳では、海馬や前頭葉において遺伝子の発現パターンがよく似ていることがわかりました。さらに、患者さんの脳において抑制性の神経細胞の成熟度の低さが特に顕著であることが示唆される結果が得られ、そのために相対的に神経の興奮性が亢進していることが、この成熟異常の原因となっている可能性も提唱しました。
今後の展開と期待
今回の私たちの研究成果によって、アルコール中毒症のメカニズムのさらなる理解が進むことが期待されます。
発表論文
Transcriptomic immaturity of the hippocampus and prefrontal cortex in patients with alcoholism.
Tomoyuki Murano, Hisatsugu Koshimizu, Hideo Hagihara, Tsuyoshi Miyakawa.
Scientific Reports 7:44531, 2017.
Tomoyuki Murano, Hisatsugu Koshimizu, Hideo Hagihara, Tsuyoshi Miyakawa.
Scientific Reports 7:44531, 2017.
研究費
本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
1. 科学研究費補助金・新学術領域研究「マイクロエンドフェノタイプによる精神病態学の創出」
(領域代表者:喜田 聡 東京農業大学 応用生物科学部 教授)
研究課題名:「非定型炎症を伴う精神疾患モデル動物を活用したマイクロ精神病態の同定と分子機序解明」
研究代表者:宮川 剛(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 システム医科学研究部門 教授)
2. 科学研究費補助金・新学術領域研究「スクラップ&ビルドによる脳機能の動的制御」
(領域代表者:榎本 和生 東京大学 大学院理学系研究科 理学部 教授)
研究課題名:「成体脳におけるスクラップ&ビルドの高次機能の解明」
研究代表者:宮川 剛(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 システム医科学研究部門 教授)
3. 科学研究費補助金・基盤研究(A)
研究課題名:「双方向性神経成熟度変化のメカニズム解明とその制御」
研究代表者:宮川 剛(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 システム医科学研究部門 教授)
1. 科学研究費補助金・新学術領域研究「マイクロエンドフェノタイプによる精神病態学の創出」
(領域代表者:喜田 聡 東京農業大学 応用生物科学部 教授)
研究課題名:「非定型炎症を伴う精神疾患モデル動物を活用したマイクロ精神病態の同定と分子機序解明」
研究代表者:宮川 剛(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 システム医科学研究部門 教授)
2. 科学研究費補助金・新学術領域研究「スクラップ&ビルドによる脳機能の動的制御」
(領域代表者:榎本 和生 東京大学 大学院理学系研究科 理学部 教授)
研究課題名:「成体脳におけるスクラップ&ビルドの高次機能の解明」
研究代表者:宮川 剛(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 システム医科学研究部門 教授)
3. 科学研究費補助金・基盤研究(A)
研究課題名:「双方向性神経成熟度変化のメカニズム解明とその制御」
研究代表者:宮川 剛(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 システム医科学研究部門 教授)