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代謝


代表者:伊藤哲哉

先天代謝異常症とは、生まれつき生体内の代謝経路に障害があることで発生する疾患群です。体内の代謝経路は多岐にわたるため、この疾患群に分類される疾患も非常に多彩で、疾患一つ一つは稀なものがほとんどですが、疾患の種類が多く全体で見れば決して稀な疾患群ではありません。我々のグループでは、愛知県内唯一の先天代謝異常症専門外来を開設し、新生児マススクリーニングの精査施設として全ての要精検例を受け入れているほか、さまざまな代謝異常症に対する検査・治療を行っております。また、高アンモニア血症発作、重症急性代謝不全に対する血液浄化療法や、尿素サイクル異常症、有機酸代謝異常症などに対する生体肝移植は、麻酔科、小児外科との連携のもと多数の治療経験を有しています。
活動内容
我々は、アミノ酸代謝異常症、尿素サイクル異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症、ライソゾーム病、糖代謝異常症、ミトコンドリア病など広く先天代謝異常症の診療を行っており、その症例数は全国でも有数のものとなっております。この中での診療、研究活動は以下のものが挙げられます。

1. プリン・ピリミジン代謝異常症の診断と治療
長年、オランダ・アムステルダム大学との共同研究にてピリミジン代謝分解経路の代謝産物測定、遺伝子解析などを行っており、プリン代謝異常症ではLesch-Nyhan症候群の酵素活性測定も行っております。その他、近年発見されたピリミジン合成障害に対しても治療薬の検討を行っております。

2. 有機酸代謝異常症の診断と治療
プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症の診断、重症度判定等のため、本学共同利用研究設備サポートセンターと協力して、タンデム型質量分析系を用いた酵素活性測定法を確立し、臨床症状との関連、適切な管理法の検討等を行っております。

3. 尿素サイクル異常症の病態解析
豊富な臨床経験から、高アンモニア血症発作のマーカーとなるアミノ酸分析の解析、カルバミルリン酸合成酵素活性化因子の測定法の確立、高アンモニア血症急性発作に対するアミノ酸投与療法の必要性に関する検討などを行っております。

4. 新規拡大マススクリーニングの実施
2017年からは名古屋大学小児科、免疫不全グループ、愛知県健康づくり進行事業団と協同し、ライソゾーム病・重症複合免疫不全症の新生児マススクリーニング検査体制を確立しました。重症複合免疫不全症に対するマススクリーニング検査は全国初の試みでライソゾーム病についても熊本地区に続く全国2番目の検査開始となりました。現在、愛知県では重症複合免疫不全症・脊髄性筋萎縮症とも国と地方自治体の実証事業に組み入れられたため我々が行う拡大スクリーニング事業からは外れましたが、ライソゾーム病4疾患(ポンペ病、ムコ多糖症I型、II型、ファブリー病)、副腎白質ジストロフィー、アデノシンデアミナーゼ欠損症について拡大スクリーニング事業を展開しており成果を上げています。

5. 新規治療薬の臨床試験
製薬企業と連携し、新規治療薬の臨床試験を、患者さんへの効果や負担、総合的な利益をよく吟味した上で積極的に行なっております。希少疾患を扱うことが多いため、全国で10例程度のエントリーとなる治験でも数例は当院でエントリーしたり、先天代謝異常症に対する日本初となる遺伝子治療の治験を行ったりと、新規治療薬の開発にも貢献しています。