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医学研究演習報告


本学の医学部3年生と海外のMOU締結大学では、様々な最先端の医学研究に触れることによるリサーチマインドの涵養や自発的な医学研究参加などを目的に学生の交換留学を実施しています。

2024年4月25日、フジタホール500にて渡航学生による医学研究演習成果発表会が行われました。海外への渡航先はタイのみで、マヒドン大学へ3名、シラパコーン大学へ2名の計5名の学生が医学研究演習に参加しました。

マヒドン大学では、公衆衛生学修士課程プログラムに参加しているタイの学生と共に7日間のフィールドスタディーを、Nackhon Rathasima県というバンコクから車で3時間ほどの地域で行いました。現地調査では1日に2つの施設を訪ね、Government levelから市町村レベルの施設を訪ねて回り、医師不足や医師の地域偏在が大きな課題となっていることを知りました。その対処法を毎日夜遅くまでチームメンバーと議論し、最終日に各施設の職員向けに発表会を開催しました。
また、タイの人口構成や死因、国民健康保健制度についても学ぶことができ、貴重な経験となりました。

成果発表会では、上述した内容の紹介に加え、タイで対策として実行されている課題の対処法も紹介しました。地域住民ボランティアによる疫病の予防活動、タイ古式マッサージなどの伝統医療の導入、高齢者向けの健康増進プログラム等、国民が主体となった様々な対処法を紹介し、人口が減少していく日本の医療課題と照らし合わせながら、日本の保険・医療制度を持続・改善するために学び、考え続けたいと熱く語りました。

大勢の人が聴講しました

発表者の小島さん、寺澤さん、村野さん

もう一つの渡航先であるシラパコーン大学では、各々が興味のある講義や研究室に参加することができるといった自由な選択が可能なプログラム構成となっており、各自自身の研究テーマに沿った内容を選択し、シラパコーン大学の教授の指導の下、日々研究に取り組みました。

派遣生の一人である勅使河原さんの所属していた研究室では様々な研究をしており、各週で薬学に関する実験や研究の手伝い、大学内にある薬局と病院の見学などをしました。in vitroで入手しやすい子豚の皮膚を用いて製剤間の吸収性の比較、表皮への吸収を評価する皮膚透過性試験やMTTと呼ばれる試薬が生細胞の代謝によって紫色もホルマザン色素へ還元される原理を用いた細胞毒性試験であるMTT assay、創傷治癒を促進する光架橋性ハイドロゲルを作成し、人体と同じ温度・体温条件下でのハイドロゲルの動態を観察することで有用性を評価する実験を行う等、充実した研究内容となりました。

成果発表会では、もう一人の派遣生である笹原さんが、昆虫が分泌する天然のポリマーに注目し、安全性が高く安価で製造が容易な腸溶性カプセル原料の研究内容を英語で発表をしました。このポリマーを無加工で用いると、カプセルの製造工程で適切な温度で融解しなかったり、そもそもカプセルが腸に届く前に胃のなかで溶けてしまいますが、このポリマーに炭酸ナトリウムを追加すると、このポリマーが固体から液体に変わる融点や、溶けてしまう酸性の度合いを変化させることができる成果が出たことを説明しました。発表内で笹原さんは、この研究成果を応用し、カプセルの製造工程に理想的な融点の実現や、強酸への耐性を材料に加えるための実験を繰り返したこと、また今後は自身で出した結果に基づきポリマーの有用性を高める探索をしたいと力強く語りました。

研究演習を実施したシラパコーン大学

演習修了式での笹原さん(左から3人目)と
勅使河原さん(左から4人目)

医学研究演習で学んだこと、今後に活かしたいこと

【小島 佳連さん】
タイのマヒドン大学で1週間フィールドトリップを行い、タイでは日本よりもボランティアによる地域全体で疾病予防に努めていたり、LINEを用いて診療を行うなど日本よりも患者と医師との距離感が近いと感じました。
またフィールドトリップの間、ルームメイトがミャンマーの方だったということもあり、ミャンマーのことについてたくさん教えてもらい、日本とミャンマーの文化を交流するとても貴重な経験をさせて頂きました。

【寺澤 仁香さん】
医師や医療従事者としての実務経験のある方々と共に勉強する機会をいただき、コンピュータを用いた検討の仕方を学び、アクティブな議論に参加できたことが印象に残っています。また、ミャンマーの学生との会話でミャンマーの状況を聞き、カルチャーショックを受けたと共に、自分の見聞の狭さを実感したので、今後は医療に限らず様々な分野の見聞を広げていきたいです。

【村野 夏海さん】
マヒドン大学の公衆衛生学博士課程の学生とのField studyを通して、ヘルスプロモーションの重要性を再認識しました。また、タイと日本の医療制度の違いから、国民が主体的にヘルスプロモーションに取り組む必要性を感じました。この経験を活かし、今後も日本の医療制度改善に向けて、学び続けたいと決意しました。

【勅使河原 萌さん】
現地での困ったことや分からないことはアドバイザーの先生に気軽に相談することができ、とても親切で親身に対応してくださったので充実した生活をすることができました。
学んだことは頼れる人に相談してみる、掛け合ってみることの重要性です。ごく当たり前なことかもしれませんが、何かの問題に直面したとき性格的に自分で何とかしようという節があり、今までは人に相談することは二の次になっていました。しかし人に相談することで自分では考えつかなかったような解決法を見つけることができました。同時に、普段から積極的にコミュニケーションを取ることが大切ということも学びました。なので今後は英語や異文化の勉強をしたいと思います。

【笹原 将さん】
私は、医学研究演習を通じて、タイという国が大好きになりました。研究室では、指導教官やポスドクに生活面から実験作業にいたるまで丁寧に支援してもらいました。大学施設内の充実した食生活は日本に帰国した今でも思い出します。
また、実験作業を地道に繰り返して、データを取るという営みの尊さを学びました。