アレルギー疾患対策医療学講座
寄附講座の概要
■目的
藤田医科大学 医学部 アレルギー疾患対策医療学講座はアレルギー疾患で困っている患者さんのために、原因アレルゲンの解明、診断・病態把握の検査方法を開発し、治療方法および発症予防の対策を研究する目的でホーユー株式会社寄附講座として設立されました。2015年4月1日に私が皮膚科学教授と併任して講座責任者となり専任教員 は永井晶代講師で開講しました。2016年4月より2024年3月まで、私が専任の教授を務めました。
■成果
即時型アレルギーの診療を行うエキスパート集団(加水分解コムギによる即時型アレルギーの登録施設)と連携し、即時型アレルギーの抗原解析、検査・治療方法の開発研究を行うと同時に、アレルギー性接触皮膚炎の診療を行っているエキスパート集団(SSCI-Net登録医療施設)と連携し、遅延型アレルギーの検査・治療方法の確立、防御対策の研究を推進しました。ホーユー株式会社とは、プロテオミクスを中心とした食物アレルギーの原因抗原の解明を行い、ヘアカラーの安全性の研究では検査方法の確立に反映できる研究結果を得ることができました。また、より安全な新しいヘアカラーの開発も行いました。パッチテストの判定をAI でサポートするアプリを共同開発し完成させました。一方、講座独自の研究として、化粧品の安全性、接触皮膚炎の研究を行い、化粧品等のアレルギーの原因を確定するために必要なパッチテストの11成分を選定し、検査方法の標準化の提案を行いました。
藤田医科大学 医学部 アレルギー疾患対策医療学講座はアレルギー疾患で困っている患者さんのために、原因アレルゲンの解明、診断・病態把握の検査方法を開発し、治療方法および発症予防の対策を研究する目的でホーユー株式会社寄附講座として設立されました。2015年4月1日に私が皮膚科学教授と併任して講座責任者となり専任教員 は永井晶代講師で開講しました。2016年4月より2024年3月まで、私が専任の教授を務めました。
■成果
即時型アレルギーの診療を行うエキスパート集団(加水分解コムギによる即時型アレルギーの登録施設)と連携し、即時型アレルギーの抗原解析、検査・治療方法の開発研究を行うと同時に、アレルギー性接触皮膚炎の診療を行っているエキスパート集団(SSCI-Net登録医療施設)と連携し、遅延型アレルギーの検査・治療方法の確立、防御対策の研究を推進しました。ホーユー株式会社とは、プロテオミクスを中心とした食物アレルギーの原因抗原の解明を行い、ヘアカラーの安全性の研究では検査方法の確立に反映できる研究結果を得ることができました。また、より安全な新しいヘアカラーの開発も行いました。パッチテストの判定をAI でサポートするアプリを共同開発し完成させました。一方、講座独自の研究として、化粧品の安全性、接触皮膚炎の研究を行い、化粧品等のアレルギーの原因を確定するために必要なパッチテストの11成分を選定し、検査方法の標準化の提案を行いました。
寄附講座教授コメント
藤田医科大学名誉教授
医療法人大朋会刈谷整形外科病院 副院長 皮膚科・アレルギー科
一般社団法人SSCI-Net 理事長
松永 佳世子
私の皮膚科学講座教授任期があと2年を切った2014年の秋でした。食物アレルギーの抗原解析を行う研究技術が、企業として社会に貢献できると考え、臨床の現場と基礎研究のHubとなる講座が必要であること、また、ヘアカラーを含む化粧品等の安全性研究も重要であり、即時型、遅延型両方のアレルギーに対して抗原解析をサポートし、治療と生活指導の対策を研究する講座として、年間3000万円で3年間の寄附講座をホーユー株式会社より提案されました。私は医師ですから、皮膚科学教授職終了後は、義兄の病院で皮膚科の診療に従事することを考えていましたので、診療科ではない講座の教授になること、また、企業からの寄附による講座の専任教授に1年後になることにも迷いました。
しかし、臨床の現場では、アレルギーの原因を確定する検査のための抗原は十分ではなく、検査手法の開発も必要でした。また、皮膚科学教授時代にはじめたSSCI-Netの構想、化粧品の安全性のAMED研究も継続が必要でした。アレルギー疾患を診療できる医師を増やし、全国でその診療能力を均てん化することが求められている社会の要望に応える研究を続けることにしました。
寄附講座は、基本的には医学部に寄附された講座で、その講座責任者等が自分の行いたい研究を自由に選択することが基本であり、公的資金、他の企業の研究資金も受け入れることが可能です。ホーユーとの共同研究は、三期には、共同研究費としてクリアに分離され、依頼された新ヘアカラー等のヘアカラーの安全性に関する研究費は受託研究として研究を遂行しました。
2020年には新型コロナ感染症が世界的な流行となり、人を対象とした臨床研究は困難な中、さまざまな工夫により、研究を継続完遂できたことが特に印象深く思い出になりました。また、ホーユー総合研究所の優秀な若手研究者と、全国の小児科、皮膚科のアレルギーの専門医とともに、原因を解明していく研究は、非常に刺激的でやりがいのある仕事でした。加水分解コムギ末によるコムギアレルギーの疫学研究、なりやすさ、なりにくさのゲノム研究も国際雑誌のJACIに掲載することができました。そのほか多くの英文論文を残すことができました。また、特許を数多く申請・登録することができました。講座客員教員であったホーユーの中村政志氏、下條尚志氏、佐藤奈由氏、青木祐治氏には、今後は総合アレルギー科 矢上晶子教授のご指導のもと、すばらしい研究を続けていただけると思います。
症例情報から皮膚の健康被害を最小化する目的でAMEDの研究プロダクトとして2016年4月に設立した一般社団法人SSCI-Net (Skin Safety Case Information Network) も産官学の情報ネットワークとして順調に活動でき、認知度を高めてきました。設立当初より、理事長を務めておりますが、ライフワークとして今後しばらく続けていく所存です。講座独自の研究である接触皮膚炎の研究もより深くすることができました。化粧品等の安全性の研究もAMEDの研究費をいただき、進めることができました。
振り返ると、寄附講座ではワクワク・ドキドキすること、そして、うれしいことが日々ありました。一方、大学に寄附講座教授として8年間も残ったことで、悲しかったこと、辛かったことも少なからずありました。そして、思い出と業績を残すことができました。一緒に歩んでくださった、スタッフのみなさまと、客員教員、そして、すべての共同研究者に心より御礼申し上げます。
講座を終了するにあたりまして、長きにわたり、お世話になりました、藤田学園 星長清隆理事長、藤田医科大学 湯澤由紀夫学長、岩田仲生医学部長、杉浦一充皮膚科学教授をはじめ藤田医科大学の関係の皆様に心より御礼申し上げます。また、寄附講座を提供いただきましたホーユー株式会社の水野真紀夫会長をはじめ、関係の皆様に心より御礼申し上げます。
寄附講座は、基本的には医学部に寄附された講座で、その講座責任者等が自分の行いたい研究を自由に選択することが基本であり、公的資金、他の企業の研究資金も受け入れることが可能です。ホーユーとの共同研究は、三期には、共同研究費としてクリアに分離され、依頼された新ヘアカラー等のヘアカラーの安全性に関する研究費は受託研究として研究を遂行しました。
2020年には新型コロナ感染症が世界的な流行となり、人を対象とした臨床研究は困難な中、さまざまな工夫により、研究を継続完遂できたことが特に印象深く思い出になりました。また、ホーユー総合研究所の優秀な若手研究者と、全国の小児科、皮膚科のアレルギーの専門医とともに、原因を解明していく研究は、非常に刺激的でやりがいのある仕事でした。加水分解コムギ末によるコムギアレルギーの疫学研究、なりやすさ、なりにくさのゲノム研究も国際雑誌のJACIに掲載することができました。そのほか多くの英文論文を残すことができました。また、特許を数多く申請・登録することができました。講座客員教員であったホーユーの中村政志氏、下條尚志氏、佐藤奈由氏、青木祐治氏には、今後は総合アレルギー科 矢上晶子教授のご指導のもと、すばらしい研究を続けていただけると思います。
症例情報から皮膚の健康被害を最小化する目的でAMEDの研究プロダクトとして2016年4月に設立した一般社団法人SSCI-Net (Skin Safety Case Information Network) も産官学の情報ネットワークとして順調に活動でき、認知度を高めてきました。設立当初より、理事長を務めておりますが、ライフワークとして今後しばらく続けていく所存です。講座独自の研究である接触皮膚炎の研究もより深くすることができました。化粧品等の安全性の研究もAMEDの研究費をいただき、進めることができました。
振り返ると、寄附講座ではワクワク・ドキドキすること、そして、うれしいことが日々ありました。一方、大学に寄附講座教授として8年間も残ったことで、悲しかったこと、辛かったことも少なからずありました。そして、思い出と業績を残すことができました。一緒に歩んでくださった、スタッフのみなさまと、客員教員、そして、すべての共同研究者に心より御礼申し上げます。
講座を終了するにあたりまして、長きにわたり、お世話になりました、藤田学園 星長清隆理事長、藤田医科大学 湯澤由紀夫学長、岩田仲生医学部長、杉浦一充皮膚科学教授をはじめ藤田医科大学の関係の皆様に心より御礼申し上げます。また、寄附講座を提供いただきましたホーユー株式会社の水野真紀夫会長をはじめ、関係の皆様に心より御礼申し上げます。
2024年4月から、大学を離れ、皮膚科専門医・アレルギー専門医として、義兄が院長の医療法人大朋会 刈谷整形外科病院に副院長として勤務し、皮膚科・アレルギー科で多くの患者さんを診療しております。その一人一人に「早く、きれいに、親切に治す」医療を提供できるように、日々勉強の毎日ですが、皮膚科学教授であった経験、そして、アレルギー疾患対策医療学教授であった経験が大いに生きていると感じています。また、藤田医科大学名誉教授として、研究も続けてまいります。
寄附企業からの所感
ホーユー株式会社
総合研究所 シニアサイエンティスト
中村 政志 様
ホーユー株式会社は1905年の創業以来、ヘアカラーを中心とした商品やサービスを通じて、世の中の人々に健康で美しい髪を提供するとともに、心の彩り、すなわち生活の中での新たな発見・喜び・充実感といった心からの豊かな美を創造し提供し続ける企業でありたいとの思いで歩んできました。
安全性の高い商品をお届けすべく、安全性向上技術、評価技術の開発にも長年注力しており、その一環として、2011年より、化粧品の安全性に関する第一人者であった皮膚科学講座(当時)の松永佳世子先生との共同研究を実施しました。化粧品の安全性だけではなく、松永先生の専門分野であった、接触皮膚炎、蕁麻疹、食物アレルギーなど、多様な研究が行われました。
このような中で、アレルギー疾患が、生活環境に関わる多様かつ複合的な要因によって発生、重篤化し、対応が難しく、国民生活に多大な影響を及ぼしている一方で、その多くが根本的な解決にいたっていないことを強く実感し、さらに2014年6月にはアレルギー疾患対策基本法が成立するなど、わが国全体でもアレルギー疾患対策の早期実現が求められました。そこで、アレルギー疾患が抱える様々な課題の早期解決のため、松永先生に寄附講座「アレルギー疾患対策医療学」の開設をご相談し、2015年4月に開設されることとなりました。
同講座では、「アレルギー疾患対策基本法」を活動の基盤概念とし、2015年度から2023年度までの9年間、精力的に研究に取り組んでいただき、わが国のアレルギー疾患対策に資する多くの業績が残されたと感じています。
中でも、化粧品成分による接触皮膚炎・経皮感作食物アレルギーの実態把握や機序の解明、ヘアカラーアレルギーの研究(予防・検査・サンプル評価など)や啓発活動などを進めていただいたことは、当社に限らず、化粧品業界全体にとって、またその消費者である国民全体にとっても大変有益な成果であったと思います。
また、同講座を中心に行われた主に食物アレルギーに関する全国の医療機関との共同研究が、最先端のITシステムの活用により困難を乗り越え実現し、プロテオミクスを中心とした最先端の解析機器が設置されたアレルギー研究に特化した当社研究所「イノベーションセンター」(「愛知県21世紀高度先端産業立地補助金」制度の補助対象、2016年9月開所)と連携され、機序の解明、診断・治療・予防に繋がる数多くの成果を出していただきました。その成果は、今後の患者さんに寄り添った医療や研究に役立てられ、広く国民の健康と福祉に貢献していくものと期待されます。
寄附講座設立時に当社が込めた思い(アレルギー疾患が抱える様々な課題の解決)は、わが国が抱える大きな課題であり、その点においては道半ばかと思いますが、同講座には充分な役割を果たしていただけたものと感謝しています。9年間のご活躍、誠にありがとうございました。
安全性の高い商品をお届けすべく、安全性向上技術、評価技術の開発にも長年注力しており、その一環として、2011年より、化粧品の安全性に関する第一人者であった皮膚科学講座(当時)の松永佳世子先生との共同研究を実施しました。化粧品の安全性だけではなく、松永先生の専門分野であった、接触皮膚炎、蕁麻疹、食物アレルギーなど、多様な研究が行われました。
このような中で、アレルギー疾患が、生活環境に関わる多様かつ複合的な要因によって発生、重篤化し、対応が難しく、国民生活に多大な影響を及ぼしている一方で、その多くが根本的な解決にいたっていないことを強く実感し、さらに2014年6月にはアレルギー疾患対策基本法が成立するなど、わが国全体でもアレルギー疾患対策の早期実現が求められました。そこで、アレルギー疾患が抱える様々な課題の早期解決のため、松永先生に寄附講座「アレルギー疾患対策医療学」の開設をご相談し、2015年4月に開設されることとなりました。
同講座では、「アレルギー疾患対策基本法」を活動の基盤概念とし、2015年度から2023年度までの9年間、精力的に研究に取り組んでいただき、わが国のアレルギー疾患対策に資する多くの業績が残されたと感じています。
中でも、化粧品成分による接触皮膚炎・経皮感作食物アレルギーの実態把握や機序の解明、ヘアカラーアレルギーの研究(予防・検査・サンプル評価など)や啓発活動などを進めていただいたことは、当社に限らず、化粧品業界全体にとって、またその消費者である国民全体にとっても大変有益な成果であったと思います。
また、同講座を中心に行われた主に食物アレルギーに関する全国の医療機関との共同研究が、最先端のITシステムの活用により困難を乗り越え実現し、プロテオミクスを中心とした最先端の解析機器が設置されたアレルギー研究に特化した当社研究所「イノベーションセンター」(「愛知県21世紀高度先端産業立地補助金」制度の補助対象、2016年9月開所)と連携され、機序の解明、診断・治療・予防に繋がる数多くの成果を出していただきました。その成果は、今後の患者さんに寄り添った医療や研究に役立てられ、広く国民の健康と福祉に貢献していくものと期待されます。
寄附講座設立時に当社が込めた思い(アレルギー疾患が抱える様々な課題の解決)は、わが国が抱える大きな課題であり、その点においては道半ばかと思いますが、同講座には充分な役割を果たしていただけたものと感謝しています。9年間のご活躍、誠にありがとうございました。