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難治疾患細胞制御学寄附講座(がん細胞免疫治療部門 )


寄附講座(部門)の概要

■課題
CAR-T細胞療法はこれまで、急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫あるいは骨髄腫などの血液悪性腫瘍患者を中心に応用され、目覚ましい効果・発展を遂げてきました。しかしながら、CAR-T細胞は”magic bullet”ではなく、再発もみられること、全く効果を示さない難治性血液悪性腫瘍もみられることも明らかになってまいりました。さらに、癌腫、肉腫をはじめとした腫瘤形成性の悪性腫瘍には効果が乏しく、保険適応となるような治療法には程遠いことも大きな問題として抱えています。

■目的
そこで当部門ではこれらの問題を解決すべく、再発難治血液悪性腫瘍患者のみならず、固形腫瘍を有する患者に対しても新規CAR-T細胞を作成し、臨床応用することが目的であります。

■課題解決のために
新規標的分子に対するCAR-T細胞の作成をはじめとして、生体内において効果的に抗腫瘍効果を及ぼすCAR-T細胞を作成し、また、T細胞のみならず、ほかの細胞も利用し、免疫ネットワークを構築する「マルチファンクション免疫療法」を開発することにフォーカスしています。
これにより、担癌患者に対して少しでも希望をもってもらえるよう、我々は日々研究・努力を行っております。この2-3年の研究にて、再発難治骨髄腫、希少癌である悪性骨軟部腫瘍に対し、マウスにて腫瘍細胞の著明な縮小が認められており、臨床応用へ向けてさらなる研究を行っているところです。

寄附講座(部門)責任者のコメント

国際再生医療センター TR(Translational Research)研究部門
大学院医学研究科 先進がん免疫療法学
三原 圭一朗

我々の研究の1つ、CAR-T細胞を用い、難治性骨髄腫細胞に対する抗腫瘍効果をご紹介いたします。これは日本骨髄腫学会においてプレナリーセッションにて発表予定のものです。この研究にさらに応用を重ね、臨床研究を行う予定です。

骨髄腫は新規治療により予後が改善しましたが、再発難治骨髄腫の予後は依然不良です。抗BCMA-CAR-T細胞療法が臨床的に使用できますが、個別化治療ゆえ、時間とお金がかかること、CAR-T作成不良などの問題が存在します。我々はこれまで骨髄腫細胞に発現するCD38に対する抗CD38-CAR-T細胞を開発し、このCAR-T細胞が骨髄腫細胞を効率的に除去することを報告しました。このCARをいつでも使えるようoff-the-shelfとして使用すべく抗CD38-CAR-iPS由来細胞傷害性Tリンパ球(iPS-rCTL)の開発を試みました。通常、遺伝子導入刺激によりT細胞はCD38が誘導されfratricideが起こります。ところが、iPS-rCTLは活性化した場合でもCD38は陰性であり、CD38遺伝子のノックアウトなどを行う必要がないことがわかりました。iPS-rCTLに抗CD38-CAR遺伝子をレトロウイルスで導入したところ70%以上の導入効率でした。次に、in vitroで抗CD38-CAR-iPS-rCTLと骨髄腫細胞の共培養実験にてこれらの細胞は時間依存的、細胞数依存的に骨髄腫細胞を効率的に死滅させました。次に、骨髄腫細胞株RPMI8226細胞を接種したNOGマウスの異種移植モデルでも抗CD38-CAR-iPS-rCTLは骨髄腫細胞の増殖抑制およびマウスの生存改善もみられました(図)。驚くべきことに抗CD38-CAR iPS-rCTLは現在、臨床で使用しているダラツムマブ(DARA)またはイサツキシマブ(ISA)存在下でin vitroにて骨髄腫細胞を効率的に死滅させました。これらの結果は抗 CD38-CAR iPS-rCTL が認識するエピトープはDARAやISAとは異なることを示唆しています。抗CD38-CAR-iPS-rCTL はoff-the-shelfとして骨髄腫患者に対し、最先端の治療選択肢となる可能性があります。