研修
ばんたね病院脳神経外科での研修を通して感じた
診療看護師の役割
藤田医科大学病院中央診療部FNP室
診療看護師 大久保麻衣
診療看護師 大久保麻衣
医師とともに手術の助手をしたり、医師の代わりに抜糸を行ったりする職種が日本にもある事をご存じでしょうか。日本では、看護師は厚生労働省の免許を受けて、「療養上の世話や診療の補助を業とする人」とされています。国に資格として認められているのは、看護師、保健師、助産師です。これまで看護師の上位資格としては日本看護協会が創設した、専門看護師、認定看護師などが存在していました。2011年に新たに誕生したのが、診療看護師(NP)です。アメリカのNPのように医学的知識を持ち、高度な看護実践や一部の医療行為を行える看護師の育成を目指しました。
当初は、国家資格を目指していましたが、諸々な事情があり現在は学会認定の資格となっています。臨床経験5年以上を経て大学院で医学の知識と視点を学び、厚生労働省の定める特定行為(21区分38行為)全てを習得し、日本NP教育大学院協議会の試験に合格すると、診療看護師(NP)となります。現在日本には約500人のNPがいます。
私の所属する藤田医科大学病院では、2014年からNPを採用しており、既に心臓血管外科や消化器外科、麻酔科などに配置され病棟管理や手術助手、集中治療管理などを医師とともに行っています。当院では卒後2年間の研修期間が設けられており特定の科に配属される前に様々な診療科で研修を行います。
現在私は研修先の一つであるばんたね病院脳神経外科で研修を行っています。研修では周術期管理を医師とともに行い、時には手術の助手を行ったりして様々な脳神経外科疾患に関する知識や技術を学ぶ事が出来ます。
現在私は研修先の一つであるばんたね病院脳神経外科で研修を行っています。研修では周術期管理を医師とともに行い、時には手術の助手を行ったりして様々な脳神経外科疾患に関する知識や技術を学ぶ事が出来ます。
ある夜60代男性が、頭部外傷で運ばれてきました。緊急で開頭血腫除去をする必要があったため、医師の指示の元すぐに手術室へ行き、麻酔の準備を行い、手術に必要な器械などの準備を行いました。その後麻酔科医師、看護師が到着したので交代し、第一助手として医師と2人で手術を行いました。挿管のまま集中治療室へ帰室となり、人工呼吸器の設定を行い、循環動態が保たれるように管理を行いました。翌朝、医師とともに頭部CTの確認を行い、呼吸や循環状態を判断し抜管を実施し、患者さんの病態が落ち着いたため病棟へ移動となりました。その後、新たに消化器疾患が見つかったため消化器外科へ転科となりましたが、転科後も、創部の抜鈎を実施するまで関わる事が出来ました。
看護師は基本的に各部署への配属となるため、手術室なら手術室で、ICUならICUでの関わりになります。ですが、診療看護師は部署固定ではなく患者とともに動きます。今回の事例を通して、入院から周術期、回復期の全てにおいて患者に主体的に携われる事がNPの大きなメリットであると感じる事が出来ました。
また、患者さんの中には「傷はくっつくの?」や「骨ってどうやって閉じるの?」などといった疑問を口にする人がいます。私が自らの立場を説明すると「先生には説明してもらったけど、よくわからなくてあなたならわかるかしら?」と聞かれた事がありました。閉頭の様子を絵を書きながら再度説明すると、「やっと理解が出来て安心した」と笑顔になりました。患者さんにとってこんなこと医師に聞いていいのかな?でも看護師さんに聞くわけにもいかないしといった、ちょっとした疑問を医師とも看護師とも違うNPだからこその関わりで解決する事が出来たのではないかと感じた瞬間でした。
医学的知識を持ち、高度な看護実践や一部の医療行為を行える診療看護師は、周術期におけるチーム医療の中で、患者さんのちょっとした疑問や、医師のちょっと手伝ってほしい事、看護師のちょっと聞きたいことなど、そんな隙間を埋めていく可能性を秘めているのではないかと感じています。判断の難しさや責任の重さを日々痛感していますが、自らの知識・技術の修得に努め、チームのパフォーマンス力を向上させていくそんなNPを目指していきたいと思います。