遺伝子発現機構学研究部門(前田教授)の福村助教らの研究成果が国際速報誌(Biochemical and Biophysical Research Communications)に発表されました。
Splicing activator RNPS1 suppresses errors in pre-mRNA splicing: A key factor for mRNA quality control.
Kazuhiro Fukumura, Kunio Inoue and Akila Mayeda
Biochem. Biophys. Res. Commun. 496: 921–926 (2018).
DOI: 10.1016/j.bbrc.2018.01.120.
Kazuhiro Fukumura, Kunio Inoue and Akila Mayeda
Biochem. Biophys. Res. Commun. 496: 921–926 (2018).
DOI: 10.1016/j.bbrc.2018.01.120.
概要
生物の基本単位である細胞の核の中に、生命活動をつかさどるほとんどすべての情報が遺伝子に含まれていますが、必要に応じて遺伝子は転写されmRNA前駆体ができ、そこからイントロンと呼ばれている不要な部分が丁寧に取り除かれて、やっとタンパク質の設計図であるmRNAができあがります。mRNAに不必要なイントロンを切り取り、必要なエクソンをつなぎ直す過程を『スプライシング』と呼んでいます(図1)。mRNAの連続した3つの文字(塩基)がアミノ酸に対応するので、スプライシングは正確無比に行われなければ、目的のタンパク質を作れません。ひとたびスプライシングに狂いが生じると、細胞機能に障害をひき起こし、しばしばがんや重い病気の原因になっていることが知られています。
今まで、どのような仕組みで正確なスプライシングが起こっているかは、よくわかっていませんでした。この度、私たちは、この正確なスプライシングを導いている決定的な因子RNPS1を見いだしました。AURKB遺伝子は細胞分裂に重要な役割を果たす遺伝子でがんに深く関わり、実際に肝細胞がんで、不正確なスプラシングが起こっています。私たちは、RNPS1がこの不正確なスプライシングを抑制し、その結果、正常な細胞分裂を導いていることを明らかにしました(図2)。さらに、RNPS1は、その他の遺伝子の正確なスプライシングにも必要なことを見つけています。従って、RNPS1は一般的にスプライシング精度を保ち、タンパク質合成の鋳型であるmRNAの品質管理の鍵となっている因子と考えられます。
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