第1回 総医研・最先端医学研究セミナーのお知らせ
従来の総医研・研究交流セミナーを、リニューアルして再開します。
学生、教職員のみなさんのご来場をおまちしています。
第1演題:「 癌細胞特異的成熟mRNA再スプライシング現象の発見と意義 」
演者: 本学 総合医科学研究所 遺伝子発現機構学研究部門
助教 亀山 俊樹 先生
第2演題:「 均衡型相互転座が配偶子形成に与える影響の性差 」
演者: 本学 総合医科学研究所 分子遺伝学研究部門
助教 堤 真紀子 先生
日時: 平成27年 9月28日(月) 17時30分 〜 19時00分
※1演題 45分( 研究発表 30分、質疑応答 15分 )
場所: 生涯教育研修センター1号館9階 901講義室
座長: 前田 明 教授(総合医科学研究所 遺伝子発現機構研究部門)
倉橋 浩樹 教授(総合医科学研究所 分子遺伝学研究部門)
講演要旨
第1演題:「 癌細胞特異的成熟mRNA再スプライシング現象の発見と意義 」
真核生物のゲノムにコードされる遺伝子の多くはイントロンと呼ばれる介在配
列によって分断されており、転写されたmRNA前駆体から正確にイントロンが除去
されエクソンが連結する過程がスプライシングである。スプライシングではmRNA
前駆体中のイントロンは1つの単位としてまとまって取り除かれるとこれまで考
えられてきたが、最近我々を含む複数のグループによってヒトでも複数回に分け
てイントロン除去を行う段階的スプライシングがあることが示された(文献1、2)。
一方で、我々は『癌細胞特異的成熟mRNA再スプライシング』という現象を発見
した(文献3)。この成熟mRNA再スプライシング現象も一種の多段階的スプライ
シングであるが、イントロンの無い完成形のmRNAが余計にスプライシングされ異
常産物となる。正常細胞ではイントロンを含むmRNA前駆体と成熟mRNAを識別する
未知のmRNA品質管理機構が存在し、癌細胞ではそれが破綻している可能性が示唆
されると現在我々は考えている。
1. Christopher R Silbley et al. Recursive splicing in long vertebrate
genes. Nature. 2015. 521, 371-375.
2. Hitoshi Suzuki et al. Nested introns in an intron: evidence of multi-
step splicing of a large intron in the human dystrophin pre-mRNA.
FEBS Letters. 2013. 587. 555-561.
3. Toshiki Kameyama et al. Re-splicing of mature mRNA in cancer cells
promotes activation of distant weak alternative splice sites.
Nucleic Acids Research, 2012. 40. 7896-7906.
第2演題:「 均衡型相互転座が配偶子形成に与える影響の性差 」
異なる染色体間で染色体の一部が互いに入れ替わっていることを均衡型相互転
座という。このような染色体を持つ保因者は遺伝子の情報量に過不足がないため
無症状であるが、習慣流産になりやすく、不均衡転座を持つ児の出生の原因にも
なる。これらの表現型には男女差があり、男性では無精子症あるいは乏精子症に
よる不妊となることも多い。この違いは生殖細胞の形成過程の性差に起因すると
考えられ、特に男性における性染色体の異質性と減数分裂期の転座染色体の挙動
との関連が示唆されているが、十分に解明されていない。
私たちは均衡型相互転座モデルマウスを用いて、保因者の減数分裂過程を研究
している。モデルマウスのオスは産仔数の減少(ヒトの習慣流産に相当)あるい
は完全不妊に近い表現型を示し、精母細胞の多くはパキテン期と分裂中期に細胞
死が起きていた。パキテン期の転座染色体は対合不全を示し、そのほとんどが性
染色体からなるXY bodyと共局在していた。このことがXY bodyに異常をもたらし
雄特有に細胞死を導くと考えられる。
本セミナーではその細胞死のメカニズムについても最新の研究データを交えて
考察する。
Kurahashi et al. Failure of homologous synapsis and sex-specific
reproduction problems. Front Genet. 2012; 3:112.
※本最先端医学研究セミナーは、大学院医学研究科の医学セミナー(1回分)としても扱います。
医学研究科の大学院生には講演後に出席認定シールを配付します。
※多くの教職員、学生諸君の参加を歓迎いたします。皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
世話人・連絡先:藤田保健衛生大学 総合医科学研究所
分子遺伝学研究部門 倉橋 浩樹 (内線9391)
学生、教職員のみなさんのご来場をおまちしています。
第1演題:「 癌細胞特異的成熟mRNA再スプライシング現象の発見と意義 」
演者: 本学 総合医科学研究所 遺伝子発現機構学研究部門
助教 亀山 俊樹 先生
第2演題:「 均衡型相互転座が配偶子形成に与える影響の性差 」
演者: 本学 総合医科学研究所 分子遺伝学研究部門
助教 堤 真紀子 先生
日時: 平成27年 9月28日(月) 17時30分 〜 19時00分
※1演題 45分( 研究発表 30分、質疑応答 15分 )
場所: 生涯教育研修センター1号館9階 901講義室
座長: 前田 明 教授(総合医科学研究所 遺伝子発現機構研究部門)
倉橋 浩樹 教授(総合医科学研究所 分子遺伝学研究部門)
講演要旨
第1演題:「 癌細胞特異的成熟mRNA再スプライシング現象の発見と意義 」
真核生物のゲノムにコードされる遺伝子の多くはイントロンと呼ばれる介在配
列によって分断されており、転写されたmRNA前駆体から正確にイントロンが除去
されエクソンが連結する過程がスプライシングである。スプライシングではmRNA
前駆体中のイントロンは1つの単位としてまとまって取り除かれるとこれまで考
えられてきたが、最近我々を含む複数のグループによってヒトでも複数回に分け
てイントロン除去を行う段階的スプライシングがあることが示された(文献1、2)。
一方で、我々は『癌細胞特異的成熟mRNA再スプライシング』という現象を発見
した(文献3)。この成熟mRNA再スプライシング現象も一種の多段階的スプライ
シングであるが、イントロンの無い完成形のmRNAが余計にスプライシングされ異
常産物となる。正常細胞ではイントロンを含むmRNA前駆体と成熟mRNAを識別する
未知のmRNA品質管理機構が存在し、癌細胞ではそれが破綻している可能性が示唆
されると現在我々は考えている。
1. Christopher R Silbley et al. Recursive splicing in long vertebrate
genes. Nature. 2015. 521, 371-375.
2. Hitoshi Suzuki et al. Nested introns in an intron: evidence of multi-
step splicing of a large intron in the human dystrophin pre-mRNA.
FEBS Letters. 2013. 587. 555-561.
3. Toshiki Kameyama et al. Re-splicing of mature mRNA in cancer cells
promotes activation of distant weak alternative splice sites.
Nucleic Acids Research, 2012. 40. 7896-7906.
第2演題:「 均衡型相互転座が配偶子形成に与える影響の性差 」
異なる染色体間で染色体の一部が互いに入れ替わっていることを均衡型相互転
座という。このような染色体を持つ保因者は遺伝子の情報量に過不足がないため
無症状であるが、習慣流産になりやすく、不均衡転座を持つ児の出生の原因にも
なる。これらの表現型には男女差があり、男性では無精子症あるいは乏精子症に
よる不妊となることも多い。この違いは生殖細胞の形成過程の性差に起因すると
考えられ、特に男性における性染色体の異質性と減数分裂期の転座染色体の挙動
との関連が示唆されているが、十分に解明されていない。
私たちは均衡型相互転座モデルマウスを用いて、保因者の減数分裂過程を研究
している。モデルマウスのオスは産仔数の減少(ヒトの習慣流産に相当)あるい
は完全不妊に近い表現型を示し、精母細胞の多くはパキテン期と分裂中期に細胞
死が起きていた。パキテン期の転座染色体は対合不全を示し、そのほとんどが性
染色体からなるXY bodyと共局在していた。このことがXY bodyに異常をもたらし
雄特有に細胞死を導くと考えられる。
本セミナーではその細胞死のメカニズムについても最新の研究データを交えて
考察する。
Kurahashi et al. Failure of homologous synapsis and sex-specific
reproduction problems. Front Genet. 2012; 3:112.
※本最先端医学研究セミナーは、大学院医学研究科の医学セミナー(1回分)としても扱います。
医学研究科の大学院生には講演後に出席認定シールを配付します。
※多くの教職員、学生諸君の参加を歓迎いたします。皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
世話人・連絡先:藤田保健衛生大学 総合医科学研究所
分子遺伝学研究部門 倉橋 浩樹 (内線9391)