グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム >  Topics >  分子遺伝学研究部門 堤助教の研究成果がプレスリリースされました。

分子遺伝学研究部門 堤助教の研究成果がプレスリリースされました。


論文名:Age-Related Decrease of Meiotic Cohesins in Human Oocytes
著者名:Makiko Tsutsumi, Reiko Fujiwara, Haruki Nishizawa, Mayuko Ito, Hiroshi Kogo, Hidehito Inagaki, Tamae Ohye, Takema Kato, Takuma Fujii, Hiroki Kurahashi
PLOS ONE 9(5): e96710

ウォール・ストリート・ジャーナル朝日新聞時事通信日本経済新聞毎日新聞中日新聞読売新聞などで紹介されました。
NHK総合テレビのニュースで放映されました。

【高齢妊娠で起こる染色体数の変化の原因を解明 〜生殖医療の新たなアプローチ法の開発に期待〜】
ヒトの染色体は、人間の体を作る設計図である遺伝情報を含む大切な役割をしています。ヒトは46本の染色体を持っていますが、卵や精子の形成過程で染色体の分配がうまくいかないと、受精卵の染色体数が多すぎたり少なすぎたりすることがあり、これを染色体異数性と呼んでいます。受精卵の染色体異数性は不妊や流産、ダウン症候群などの染色体疾患の子どもが生まれる原因となります。しかもその発生頻度は女性の加齢に伴い増加することが知られており、このことは昨年始まった新型出生前診断の対象として高齢妊娠が含まれる理由となっています。藤田保健衛生大学総合医科学研究所の倉橋浩樹教授、堤真紀子助教らの研究グループは、高齢女性の卵では、染色体数を正常に保つために重要なタンパク質が減少していることを突き止めました。
 研究グループは、卵の中で染色体同士をつなぎ止める役割を持つタンパク質「コヒーシン」に注目し、年齢とコヒーシンの量との関係を詳細に調べました。ヒトの卵は胎児期に作られ、染色体がコヒーシンでつなぎ止められます。その後、卵は休止状態になり、その期間は排卵を迎えるまで10年から数十年にもおよびます。そして排卵に伴い減数分裂と呼ばれる特殊な細胞分裂を行って23本の染色体を卵子に分配します。研究グループは、20歳代と比べて40歳代の卵ではコヒーシンの量が減少していることを明らかにしました。休止期間が長くなればなるほどコヒーシンが減少し、染色体同士のつながりが失われるために染色体の正確な分配ができなくなり、結果として染色体数が多すぎたり少なすぎる染色体異数性の卵が生じやすくなります。
 女性の加齢によって不妊や流産、ダウン症候群の発症頻度が増加することは以前から知られていましたが、その原因は解明されていませんでした。今回の研究成果により、コヒーシンの減少の関与が示唆されましたが、その減少を防ぐ方法が開発されれば、将来的には高齢妊娠による染色体異数性の発生リスクを軽減できると研究グループでは考えています。