藤田保健衛生大学病院 リハビリテーション科 研修内容

2007.2.17 記載


I. 目的と特徴

 高齢者時代にあたって,さまざまな生活上の問題.すなわち「障害」の特性とそのリハビリテーション(以下,リハビリ)を理解し治療に当たることは臨床医として必須課題である.当科は.我が国でも数少ない独立したリハビリ医学講座であり,リハビリ医学・医療に関する積極的な臨床・研究・教育活動を行っている.特に,学内関連諸部署を横断的に統括した組織「藤田リハビリ部門」(構成員:医師,療法士など総勢200名)の中心として,活発で綿密なチームワークを展開し国内外から注目を浴びている.研修の場となる第1教育病院では,豊富な臨床例をもとに日本リハビリ医学会の専門医制度に合致した卒後教育プログラムが展開されている.


II. プログラム責任者

 才藤栄一教授(日本リハビリ医学会専門医,日本リハビリ医学会認定臨床医,日本脳卒中学会専門医)


III. 運営指導体制および指導医数

 10名の常勤医師(日本リハビリ医学会専門医7名,日本リハビリ医学会認定臨床医5名,整形外科学会専門医1名,脳神経外科学会専門医1名,日本脳卒中学会専門医1名)が指導にあたる.

第1教育病院リハビリ部は,日本リハビリ医学会研修指定施設であり,施設基準は総合リハビリ施設基準IAである. 施設設備(リハ専用診察室3室・運動療法室・作業療法室・言語聴覚療法室・整形外科病棟内専用訓練室)はもとより,職員の人数(リハビリ医師12名,理学療法士21名,作業療法士12名,言語聴覚療法士6名,リハビリ工学士1名,看護師2名,リハ補助4名)も愛知県内でトップ水準にある.


IV. 臨床実績

 症例は豊富で,年間初診患者2,586例,取り扱い患者80,342例を数える(平成17年度).内訳は,神経疾患40%(脳卒中20%),運動器疾患30%,内科疾患15%,小児疾患5%,その他10%であり,多彩な患者例を急性期から慢性期まで幅広く診ている.中央診療科としての治療の他,主科として常時10〜15床の患者を受け持っている.特に,脳卒中,脊髄損傷,外傷性脳損傷,摂食・嚥下障害,歩行障害については,我が国で最高水準の臨床と研究がなされている.


V. 研修内容

 一般目標:脳卒中患者,脊髄損傷患者などを指導医とともに主治医として,あるいは,担当医として受け持つ.運動機能障害,認知機能障害のリハビリを知り,必要に応じて治療計画を立てて訓練処方を出せるようになる.リハビリ的検査,手技を知る.廃用症候群を理解し,各科の医療を行う際に,過剰な安静状態とならないように配慮できる.すなわち,リハビリ医学をよく理解した臨床医となる基礎を習得すると同時に,将来,リハビリ専門医になるにあたって,最良の臨床経験を積む.

行動目標:

1)基本事項:リハビリに関連する職種名とその内容を知る.リハビリの問題点を機能障害,能力低下,社会的不利に分類する.運動学を知る(筋の作用,関節運動など).安静の弊害を知る(廃用症候群).リハビリカンファレンスに出席し,チームアプローチを知る.脳卒中の運動麻痺,ADLの予後を知る.脊髄損傷の損傷高位と達成活動レベルとの関係を知る.リハビリを必要とする原疾患の医学的管理を行う.

2)評価:以下の評価方法を知り,実践する.

面接技法.徒手筋力検査(MMT).関節可動域(ROM).中枢性麻痺(Brunnstrom stage).脳卒中機能評価法SIAS(Stroke Impairment Assessment Set).ADL(FIM:Functional Independence Measure).失語症検査(SLTA:Standard Language Test for Aphasia).半側視空間無視検査.

3)訓練処方:歩行訓練,筋力増強訓練,関節可動域訓練,ADL訓練.装具・義足,車椅子,家屋改造立案.嚥下訓練,言語訓練,構音訓練.注意・記憶障害管理.物理療法.

4)対応・検査・治療手技:移乗・移動基本技術.神経伝導速度検査,針筋電図検査.嚥下造影検査,喉頭内視鏡検査.尿流動態検査,膀胱尿道造影検査.歩行分析,動作解析.神経・筋ブロック.


VI. 研修スケジュール

 1ヶ月以上5ヶ月までであり,2〜3ヶ月の研修を推奨する.もちろん,研修期間に応じて達成水準は異なる.週間スケジュールの1例を示す.

月:午前 病棟,午後 検査(嚥下造影検査など)

火:午前 外来補助,午後 病棟

水:早朝 抄読会,午前 病棟,午後 回診,検査(筋電図など),カンファレンス

木:午前 病棟,午後 検査(尿流動態検査など),夕方 症例検討会

金:午前 外来補助,午後 検査(嚥下造影検査など)

土:午前 病棟


VII. 評価法

 基本的には,出席,研修意欲,研修態度,患者さんへの態度,チームにおける態度,医学的知識などを加味して総合評価する.主任教授,指導医との面談の上,自己評価も行う.また,研修医からみた指導医評価を取り入れる.最終的評価はオンライン臨床研修評価システム(EPOC)を用いて行う.


(2003年の記載はこちら)