リハビリ専門医からの解説

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Q先生の発言にコメント好きの才藤教授が補足をしました.

解説1: わが国における今世紀の前半は,長寿社会の決算としての多死・多障害の時代といえます.障害者の激増が予測される中,リハビリテーション医学・医療の中核となるリハビリテーション医(physiatrist)の需要には極めて大きいものがあります.リハビリテーション医は,障害者の主治医として,「運動学」を基盤とし,「活動障害」に精通し,リハビリテーションチームをマネージする医師です.しかし,全国で80校存在する医学部・医科大学において,講座としてリハビリテーション科を持っている施設は16のみです.特に国立大学で乏しいといえます.大学で卒前教育を受けてこなかった医師にとって,リハビリテーション医学・医療は分からないだけでなく,その取り付くきっかけも得にくい存在かも知れません.

参考:「極初期の騙され易さに引き続いて起こる,それに対抗するほどの信念の揺るぎなさ,この溜め息もの」(Dawkins R: Sense of Wonder)

解説2: 2000年12月31日現在における全国の届出医師数は255,792人で,1998年に比べ,7,181人,2.9%増加しました.また,人口10万対医師数は201.5人で,4.9人増加しました.医療施設従事医師数は,全体で243,201人,しかし,リハビリテーション科医師は,1,273人(0.5%)と極めて少数です.また,2001年現在,専門医数は774 名にしかすぎません.わが国では,リハビリテーション医療が極めて中途半端な形で展開されているといえます.ちなみに米国では6,500名の専門医が存在します.
リハビリテーション医の勤務形態は,1)リハビリテーション専門病棟での主治医,2)総合病院での中央診療科の管理医,3)大学での臨床系教員,4)開業医,と幅広いですが,いずれも大きな需要に応えられないでいる状態が続いています.

解説3: なぜ患者さんは病院に来るのでしょうか?それは病名をつけてもらうためや医学に貢献したいからではなく,困っていて,助けて欲しいからです.今まで,医師は病気を治すという方法で患者さんの「困っていること」を解消し,助けてきました.けれども,慢性疾患や障害を残す疾患では「病気を治す」という発想だけではうまくいきません.自分の社会生活を可能にするための方略が必要になりました.それが,リハビリテーション医学・医療の発想です.

解説4: リハビリテーション医学・医療は,システムとして目指すという柔軟な方法論を持っています(総論を参照ください).この概念は,今までの医学だけを学んでいては決して生まれない考え方です.

参考:「情報は,重要で,かつ,偏って分布しているときに価値がある」,「重要だけれども皆が知っている情報には価値がない」

2002.8.10 Layout by Shigeru S