日本摂食・嚥下リハビリテーション学会論文賞受賞(2004年9月)コメント
この度,私たちが2002年に発表した論文が,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の論文賞という名誉に輝くこととなりました。この嚥下学会論文賞は,今年度から始まったということで,学会誌創刊から今年まで発表された全ての論文の中から選ばれたものであり,大変名誉なことと感じています。この仕事は,私が摂食・嚥下の勉強のため藤田保健衛生大学に一年間留学していた時に,才藤先生をはじめとするリハビリテーション医学講座の先生方の下で進めていたプロジェクトの一つであり,その成果は,柴田(旧姓武田)斉子先生の2002年度のリハビリテーション医学最優秀論文賞受賞に続く快挙となりました。
このプロジェクトは,Dr. PalmerのProcess Model (Palmer and Hiiemae, 1997)を発展させたものでした。異なった食物形態を食べたときに,摂食中での食塊の咽頭への送り込みは様々な様相を呈し,特に,液体と固形物を同時に食したときには,その食塊先端は嚥下開始前に下咽頭にまで達していました。そして,その送り込みには,舌による能動的な輸送とともに,重力による受動的な輸送が大きく関与していることがわかりました。この研究により,摂食・嚥下障害者への安全な食物形態や検査時の負荷の与え方など,これからの摂食・嚥下リハビリテーションの臨床応用への大きな発展につながると考えられ,また一方で,咀嚼メカニズムと嚥下メカニズムの関連性などのこれから解明すべき基礎的研究の課題も見つかりました。
この仕事をしてきた中で,たくさんのご指導,ご協力をいただいた,才藤先生,柴田先生をはじめとする共同研究者の先生方に心から感謝いたします。またこれからも摂食・嚥下リハビリテーションに貢献できる研究を続けていきたいと思います。
Johns Hopkins University
松尾 浩一郎
2004.10.1 Layout (SS)