第47回
日本リハビリテーション医学会中部・東海地方会

 

開催期間:2020年8月29日(土)〜9月6日(日)

Web開催

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1.当センター小児部門でバクロフェン髄注療法を導入した21例の臨床像と治療効果の検討
1千葉県千葉リハビリテーションセンター小児神経科
2千葉県千葉リハビリテーションセンター小児整形外科
3千葉県千葉リハビリテーションセンターリハビリテーション科
1田邉 良,2染屋政幸,3菊地尚久

バクロフェン髄注療法(以下ITB療法)は痙縮治療の一選択肢であり,当センター小児部門ではGMFCSレベルXで,かつ痙縮が強く他の痙縮治療では痙縮のコントロールに難渋している症例で多く導入されている.2019年までに計21例でITB療法を導入し,痙縮の軽減のみでなく,睡眠障害,呼吸障害,嚥下障害の改善も多くの症例で認めた.また,ITB療法開始前に併用していた抗痙縮薬の減量や,ボツリヌス療法の施注量の減量も多くの症例で行えた.

 

 

2.令和2年7月豪雨災害における急性期避難所支援の経験 
藤田医科大学医学部リハビリテーション医学I講座
細川 浩,大高洋平

令和2年7月3日に発災した豪雨災害で人吉球磨圏域の急性期避難所支援を行ったので活動報告を行う.7月6日より6日間,人吉球磨圏域の現地保健医療調整本部で日赤の災害医療コーディネートチームと避難所支援活動で協働した.活動内容は全避難所把握と初期・詳細アセスメントのコーディネートであった.また熊本県庁職員と協働して人吉市内の避難所での環境改善のための段ボールベッド導入を行なった.この活動は亜急性期以降のJ R A Tの活動につながる活動であった.被災者の健康支援の観点から急性期からの避難所支援は必須でありその重要性を報告する.


 

 

3.術前補高により人工股関節術後の対側下肢アライメントの改善が予測された一例
名古屋第二赤十字病院整形外科・リハビリテーション科 
樋口善俊,鵜飼淳一,安藤智洋,佐藤公治

16歳時に右股関節脱臼骨折と右下腿骨幹部骨折を受傷.58歳時に右股関節痛と左膝痛にて当院紹介.右股関節は末期変形性股関節症,右下腿は変形治癒しており右下肢は左下肢よりSMDで4cm短縮し,左膝は外反変形していた.右下肢に補高3cm施行後の下肢全長X線は補高前FTA145度からFTA167度に改善していた.右人工股関節置換術を施行し,3cm脚延長した.術後のFTAは167.5度に改善した.術前補高後と人工股関節術後の対側下肢アライメントはほぼ同等であった.

 

 

4.言語機能評価法としてのSLTA及びTLPAの比較 〜rTMSによる失語症治療効果判定法として〜
長野県JA厚生連鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院
村岡俊春,片井 聡

失語症の言語機能評価法として標準失語症検査(SLTA)やWeatern Aphasia Battery(WAB)が一般的であるが,今回軽度から中等度の失語症患者を対象としたrTMS治療前後の言語機能を評価する目的で失語症語彙検査(TLPA)とSLTAを比較した.TLPAは単語の表出と聴覚的理解を掘り下げて評価できる特徴があり,治療前後でSLTAとTLPAの結果に明らかな差違がみられたことからTLPAの有用性について報告する.


 

 

5.MRIを用いた隣接する上下椎間板間の距離の加齢変化の検討
医療法人孝友会 孝友クリニック
佐久間英輔,水谷哲也,小里公二,石坂陽平,浅井貴裕

MRIを用い,頚椎・腰椎の加齢変化を検討した.対象は30〜89歳の男女660人.
頚椎・腰椎の全領域で加齢に伴う椎間板間距離の減少が確認できた.
頚椎は,男性は全年齢層を通じC6で最小値をとり,女性は年齢に伴いC6が急速に減少していた.腰椎は,男女とも全年齢で,L2・L3で最大値をとり,女性では,年齢に伴ってL3・L4が急速に減少していた.以上の結果から,頚椎・腰椎ともに加齢変化には男女間で若干の差を生じる可能性が示唆された.

 

 

6.大腿骨近位部骨折患者に対するバランス訓練ロボット(Balance Exercise Assist Robot: BEAR)の効果
国立長寿医療研究センター
近藤和泉,尾崎健一,堀 博和,平岡繁典,大沢愛子

高齢の大腿骨近位部骨折患者では,その70%近くが術後5年以内に対側の骨折を起こすという報告がある.ADLの改善がプラトーとなり在宅復帰直前の大腿骨近位部骨折患者27名(男性3名,女性24名,平均年齢81.0±6.3歳)を対象とし,2週間のバランス訓練ロボット(Balance Exercise Assist Robot: BEAR)による治療を行うことで,バランス能力の改善が起こるかどうかについて検討を行った.その結果TUG, FRT, BBS, SIDEなどのバランス評価指標全てにおいて有意な改善(p<0.001〜0.010)が見られた.今後,退院後調査を行い,再骨折の予防にどの程度寄与できるかを検討したい.


 

 

7.開頭腫瘍摘出術で皮質動脈切離後に出現した失読失書の一例
信州大学附属病院リハビリテーション科
長峰広平,石田ゆず,池上章太,堀内博志

症例は71歳男性で感覚性失語を呈していた.左側頭葉脳腫瘍を認め,開頭腫瘍摘出術を施行した.術中にtemporo-occipital arteryを切離して腫瘍を摘出した.術後,感覚性失語は改善傾向であったが,著明な失読失書を認めるようになった.術後MRIで左側頭葉・後頭葉に新規脳梗塞を認めた.病理診断は膠芽腫であったため,後療法として化学放射線療法を追加して自宅退院となった.腫瘍摘出のため止むを得ず皮質動脈を処理した結果,失読失書を呈したと考えられた.

 

 

8H/M比を用いた筋緊張抑制効果の検討
1藤田医科大学医学部リハビリテーション医学T講座
2藤田医科大学保健衛生学部リハビリテーション学科
1木曽昭史,1前田寛文,1加賀谷斉,2尾関恩,1大高洋平

健常者を対象とし,われわれの開発した小型の磁気刺激器機と経皮的末梢神経電気刺激(TENS)による即時的筋緊張抑制効果をH/M比を用いて評価した.腹臥位でヒラメ筋に15分間の磁気刺激またはTENSを行って刺激前後のH/M比を算出し,15分間の安静前後のH/M比と比較した.その結果,安静時にはH/M比に変化は生じなかったが,磁気刺激,TENSともに刺激直後にはH/M比の低下を認め,即時的筋緊張抑制効果が得られることが示唆された.


 

 9.ディープラーニングを用いた脳卒中患者の帰結予測−データ標準化の影響

1藤田医科大学医学部連携リハビリテーション医学講座
2藤田医科大学医学部リハビリテーション医学II講座
1岡崎英人,2水野志保,2岡本さやか,2園田 茂

近年コンピュータの処理能力の向上に伴い,ディープラーニング(DL)が容易に行えるようになった.DLは画像判別や予測など多岐にわたって利用されている.DLで数値データを用いる場合,高い予測精度を得るために基データを標準化を行うが一般的である.今回,回復期病棟入退院した脳卒中患者を対象に入院時の臨床データから退院時Functional Independence Measureの帰結予測を行い,データの標準化が精度改善に寄与するか検討したので報告する.

 

 

10.右橋梗塞後嚥下機能障害患者に干渉波刺激が奏効した1例
1藤田医科大学医学部リハビリテーション医学II講座
2藤田医科大学七栗記念病院 内科
3藤田医科大学医学部連携リハビリテーション医学
1佐々木駿,2高橋雄,3岡崎英人

症例は48歳男性.右橋梗塞による呼吸不全があり気管切開施行.左片麻痺,嚥下機能障害が残存しリハビリテーション目的に第77病日転院.転院時嚥下造影検査で嚥下反射惹起遅延などを認めDSS 4であった.干渉波刺激を用いて訓練を行い,嚥下反射惹起の改善を認め,退院時には気管カニューレ抜去,トロミなしでの水分摂取が可能となった.干渉波刺激が訓練経過に良い影響を与えたと考えられ,若干の考察を加え報告する.