第32回
日本リハビリテーション医学会中部・東海地方会

 

日 時:平成25年2月2日(土)10:00〜

場 所:大正製薬株式会社 名古屋支店
     名古屋市千種区千種2-17-18   TEL:(052)733-8112
   (地下鉄桜通線:吹上駅下車徒歩12分,JR中央線:鶴舞駅下車15分)
   (※駐車場の利用ができなくなりました. 公共交通機関をご利用ください.
    全館禁煙のためご協力願います)

 

◎日本リハビリテーション医学会専門医・認定臨床医生涯教育単位の取得について
1)本地方会参加により10単位が認定されます.
2)本地方会の筆頭演者は年度末自己申請により1演題10単位が履修できます.
 

当番幹事:河村美穂 
     〒486-0819愛知県春日井市下原町字村東2090番地
      あさひ病院リハビリテーション科   
                TEL:0568-85-0077 / FAX:0568-85-8020

                 E-mail:mhanamura@md.ccnw.ne.jp

  

 


一般演題 10:00-12:15 受付開始9:30

 

 

 

座長:あさひ病院リハビリテーション科 河村美穂

1.横紋筋融解症に対するリハビリテーション
1藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学I講座
2藤田保健衛生大学医療科学部リハビリテーション学科
1小杉美智子,1加賀谷 斉,1小野木啓子,1柴田斉子,2尾関 恩,1平野 哲,

1石原 健,1戸田芙美, 2太田喜久夫,1才藤栄一

 2004年6月から2012年10月の期間に当院に入院した横紋筋融解症のうち,リハビリテーションを行った48例について検討した.男性29名,女性19名,平均年齢69歳,訓練開始まで平均10.2日,平均訓練期間32.0日であり,関節可動域訓練,筋力強化訓練,ADL訓練などを行った.FIM運動項目の中央値は訓練開始時35点,終了時63点であった.転帰は入院継続中の1名を除くと,自宅退院26名,施設入所2名,転院16名,死亡3名であった.

 

2.当院回復期リハビリ病棟を退院した脳卒中患者の主介護者についての検討
NTT東日本伊豆病院リハビリテーション科 
一瀬亮吾,西島邦子,馬渡敏也,鯉田俊哉

 2006年度と10年度に退院した脳卒中患者を退院時セルフケア自立群(FIM運動項目70点以上),非自立群に分け,性,年齢,病型,主介護者(配偶者,実子,嫁,その他),在宅復帰率,在宅日数を調査した.4年間で主介護者の割合は配偶者が減少,実子,嫁はほぼ不変,その他(独居など)が増加した.在宅復帰率は,各年度とも自立群の主介護者が配偶者の場合最も高く,非自立群の主介護者がその他の場合最も低く,全体的には4年間で上昇していた.


3.各種の注意障害を有する脳卒中片麻痺患者に対する多様的注意喚起装置の試み
1藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学II講座
2藤田保健衛生大学藤田記念七栗研究所
1岡本さやか,1園田 茂,2富田 豊,2Abbas Orand ,2宮坂裕之,1尾関保則,
1水野志保,1成田 渉,1尾崎幸恵,1前田寛文

脳卒中片麻痺患者で移乗の動作自体が安定して行えていても,半側空間失認や注意障害が併存しているために,患側のブレーキやフットレストなどの車椅子管理ができず移乗自立とならない患者が時折みられる.我々は,入力センサーおよび出力刺激を選ぶことができる,多様的注意喚起装置を作製した.今回この装置を訓練内で使用することにより,その移乗動作および車椅子管理がどのように変化するかを検討し,一定の効果を得られたので報告する.

 

4.著明に運動機能の回復を認めたSurfer’s myelopathyの1症例
中部労災病院リハビリテーション科
渡邊友恵,田中宏太佳,長谷川隆史,八谷カナン,井上虎吉

22歳(女性):サーフィンのパドリング中に対麻痺が出現.前医受診時には運動完全対麻痺と重度感覚・膀胱直腸障害を認めた.MRIでTh7-11の脊髄内にT2WIとDWIにて高信号を認め,Surfer’s myelopathyと診断し,保存的治療が行われた.第44病日に中部労災病院へ転院.初診時第12胸髄節残存ASIA D,肛門収縮・球海綿体反射なし.対麻痺に対するリハビリテーション及び排尿排便管理を行い,退院時にはADL自立,残尿が軽減したので自排尿のみの管理が可能となったが,難治性便秘は残存した.わが国では報告の少ないSurfer’s myelopathy症例の経過と文献的考察を報告する.

 

座長 刈谷豊田総合病院リハビリテーション科 小口和代

 

5.春日井市特定高齢者介護予防事業「いきいき健康教室」運動器機能向上プログラムの効果
三仁会あさひ病院リハビリテーション科  
松橋 彩,猪田邦雄,河村美穂

 「いきいき健康教室」に参加した特定高齢者362名,一般高齢者176名に対し,基本チェックリスト,体力測定,事前・事後変化に関する聞き取り調査,アンケートから効果判定を行った.基本チェックリストの運動器の機能,閉じこもり,うつ症状,生活機能全般に有意な向上を認め,体力測定では全項目で,聞き取り調査では転倒不安,運動頻度,主観的健康感に有意な改善を認めた.「いきいき健康教室」の介入は心身の機能向上に寄与できた.


6.アンケート調査による母子入院の現状
信濃医療福祉センター 朝貝芳美

脳性麻痺児の通院訓練頻度を増やすことは困難な状況である,また,重症児の在宅支援としての母子入院による集中訓練の役割は増してきている.2005年から2009年までの利用者220名へのアンケート調査を実施し,回答率は81%だった.重度例であっても,集中訓練により児の状況が1段階向上すると,扱いやすくなり在宅でできることを増やすきっかけとなる.通院訓練だけで,児が持っている機能を十分発揮できているか,生活に取り入れることのできない訓練室内だけの訓練を漫然と行っていないか,常に検証する必要がある.
 

7回復期リハビリテーション病棟における嚥下障害患者の栄養状態とADLとの関係
1藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学II講座
2藤田保健衛生大学七栗サナトリウム歯科
3藤田保健衛生大学七栗サナトリウムリハビリテーション部
1尾関保則,2藤井 航,3金森理恵子,1岡本さやか,1水野志保,1成田 渉,
1尾崎幸恵,1前田寛文, 1園田 茂

 脳卒中後遺症によって摂食・嚥下障害を有し,栄養状態が不良である症例は少なくない.そこで,脳卒中症例の回復期リハビリテーション病棟における嚥下障害の状況,治療と栄養状態,ADLとの関係を検討することにした.当院回復期リハビリテーション病棟の入院時に経管栄養であった患者を抽出し,後方視的に栄養状態(Alb),ADL(FIM),栄養量,摂食状態,摂食・嚥下重症度分類の変化,嚥下訓練の内容,胃ろう造設の有無を調査した.各変数の関係,帰結への影響を考察した.

 

8.拡散テンソル法FA比0.75以上の症例で片麻痺機能に差がでる要因の検討
岩砂病院・岩砂マタニティリハビリテーション科
森 憲司,岩砂三平

拡散テンソルトラクトグラフィー(Diffusion Tensor Tractography:DTT)を用いた左右大脳脚FA比が0.75以上である症例で,片麻痺機能が相関係数より上方の群(良好群9例)と下方の群(不良群8例)を対象とし,失語症,注意障害,半側空間無視,感覚障害,筋緊張異常の有無,発症から回復期病棟入院までの期間,回復期病棟の入院期間,病巣の範囲について片麻痺機能に影響するか否かを検討した.

 

座長 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学T講座 青柳陽一郎

 

9表面筋電信号による前腕切断者用筋電義手の研究
1岐阜赤十字病院整形外科 
2岐阜大学医学部看護学科 
3岐阜大学医学部整形外科 
4岐阜大学工学部 
1榮枝裕文,2西本 裕,3青木隆明,4川崎晴久,4毛利哲也,4粥川正康

我々は高機能筋電義手の開発を進めている.義手の制御は患者前腕からの表面筋電位により行っている.制御則としてニューラルネットワークを用いることで,拇指,示指,尺側三指の分離運動が高精度に実現できることが期待できる.現在,これらの各単独動作において,平均89.1%の精度を得ることに成功している.この精度の改善を行うために筋電信号の取得時に利用する訓練システムの構築を行っている.本研究はJA共済医療研究助成を受けた.
 


10.変性側弯症による拘束性肺機能障害に対し外科的治療を行った症例に対するリハビリテーション
浜松医科大学医学部附属病院リハビリテーション科 
煖エ七緒,赤津嘉樹,安田千里,永房鉄之,美津島隆

56歳女性.変性側弯症による胸郭変形のため重度の拘束性肺機能障害をきたしていた.その後CO2ナルコーシスを認めるようになり夜間NIPPVを使用していた.呼吸機能改善目的にT9-L5後方矯正固定術,L1-4後方椎体間固定術を施行された.術後は人工呼吸器管理となったが,術後約3か月で人工呼吸器離脱,術後約11か月の現在は酸素投与不要となっている.しかし,まだ唾液の流入があるため気管切開口閉鎖を目指している.経過を文献的考察を加えて報告する.
 


11.頸椎前縦靱帯骨化症(OALL)により嚥下障害を呈した4症例
1藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学T講座
2坂文種報徳会病院整形外科
1平岩文子,1青柳陽一郎,1加賀谷 斉,1才藤栄一,2加藤慎一

OALLは,まれに嚥下障害の原因となることがあり,手術例の報告もある.今回,嚥下障害を呈した4例を経験したので報告する.VF検査では,全例で咽頭から食道入口部の増殖骨による圧迫のため通過が阻害され,複数回嚥下を必要とした.3例で喉頭蓋反転障害,2例で誤嚥,1例で喉頭進入を認めた.また,食道での停滞・逆流を3例で認めた.唾液誤嚥の1例は骨棘切除術,誤嚥性肺炎の1例は保存的治療によりそれぞれ改善した.経口摂取可能なその他の2例は追加嚥下,頸部回旋の指導を行った.

 

総会
13:30〜13:45
研修会に先立って総会を行います.ぜひご出席下さい

 

 

 

専門医・認定臨床医生涯教育研修会
特別講演14:00〜16:15 受付開始13:00

「Clinical gait analysis in CP: how to apply in practice
                Rehabilitation department, Khon Kaen University
                  Assist professor, Samerduen Kharmwan, MD.
                    司会:国立長寿医療研究センター 近藤和泉

 

「運動器リハビリテーションの治療体系を変える骨関節動態の解明」
                          大阪大学医学部附属病院リハビリテーション部 副部長
      大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学 教授 菅本一臣先生
                           司会:あさひ病院 猪田邦雄

 

 

◎日本リハビリテーション医学会専門医・認定臨床医認定単位について
研修会認定単位:1講演毎に10単位
受講料    :1講演(10単位)毎に1,000円.
       認定単位非取得者は単位数に関係なく受講料1,000円を当日受付します.

◎認定臨床医資格要件
認定臨床医認定基準第2条2項2号に定める指定の教育研修会(必須以外)に該当します.                                     
平成19年度より「認定臨床医」受験資格要件が変更となり,地方会で行われる生涯教育
研修会も1講演あたり10単位が認められます.

 

 

           専門医・認定臨床医生涯教育研修会 特別講演


Clinical gait analysis in CP: how to apply in practice

Rehabilitation department, Khon Kaen University, THAILAND
Assist professor, Samerduen Kharmwan. MD.

Cerebral palsy (CP) is a disorder of movement and posture caused by a non-progressive lesion of the immature brain1. A variety of the etiologic causes has been reported, such as birth asphyxia, infection or intracerebral hemorrage2. However, there are  approximately 20% of patients do not know etiologic caused. Classification of CP are commonly related to abnormal motor tone and topographic involvement. Regarding abnormal motor tone, spastic is the most common found approximately 80% of CP. Although the brain lesion is static encephalopathy, potential progressive musculoskeletal pathology3 are common in CP. Reduction of spastic is one of the importance part in CP to balance agonist and antagonist muscles. This approach easier muscle stretching, prevent contracture, train the weaken muscle and consequently improve patient’s function. Classification of gait patterns in CP was remarkably described by Rodda and Graham. There are assessments such as clinical evaluation, VDO gait, and instrumental gait analysis for treatment plan4 in CP. The instrumental gait analysis has some limitation for routine practice such as high cost; inappropriate use of equipment for small children; time constrain; and the needed for technical and clinical experience for interpretation. Those reasons mentioned demonstrate that a comprehensive clinical evaluation and VDO gait are critical features recommended to be utilized in management of CP. More importantly, these recommended technique are attributed to the main purpose of CP treatment so as to prevent disability, enhance patient’s function, and improve patient’s quality of life.
  The concluding remark of this paper is to present the clinician involved should understand the process of clinical evaluation, nature of disease progression, potential muscles caused of abnormal gait and posture in CP in order that a thorough plan can be made to obtain successful treatment.

  1. References

1. Mattews DJ, Wilson P. Cerebral palsy. In: Molnar GE, Alexander MA, editors. Pediatric rehabilitation. 3rd ed. Philadelphia: Hanley & Belfus; 1999. p. 193–217.
2. Shevell MI, Majnemer A, Morin I. Etiologic yield of cerebral palsy: a contemporary case series. Pediatr. Neurol. 2003 May;28(5):352–9.
3. Kerr Graham H, Selber P. Musculoskeletal aspects of cerebral palsy. J Bone Joint Surg Br. 2003 Mar;85(2):157–66.
4. Rodda J, Graham HK. Classification of gait patterns in spastic hemiplegia and spastic diplegia: a basis for a management algorithm. Eur. J. Neurol. 2001 Nov;8 Suppl 5:98–108.

 

 


「運動器リハビリテーションの治療体系を変える骨関節動態の解明」

           大阪大学医学部附属病院リハビリテーション部 副部長
           大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学 教授 菅本一臣 先生

 

様々な関節の動きが組み合わされて体の動きが形成されている。丁度車のパーツが組み合されて車全体ができあがるのと同じである。乗り心地や故障について論じる際にはそのパーツの構造やメカニズムに精通しなければどこに原因がありどう治すべきかを論ずることはできない。
 しかしこれまで関節の動きを知ることの必要性は痛感されていたが、皮膚内に覆われた関節動態を正確に評価することは方法が確立されていなかったために不可能であった。肩の運動は肋骨に対する肩甲骨(肩甲胸郭関節)、肩甲骨に対する上腕骨(肩甲上腕関節)により構成されているが、肩関節拘縮の際の肩甲骨の動きは異常であることは予想されているものの、どのように異常であるかはほとんど明らかにされていない。皮膚マーカーを用いた動態解析手法では肩甲骨上に設置されたはずのマーカーの下を肩関節動作に伴い肩甲骨が大きく動くことが確認でき、如何に誤差の大きい手法であるかがわかる。
 この問題を解決する手法の確立を我々はこれまで目指してきたが、現在までに主に2種類の手法を確立できている。
(2D-3D registration法)ひとつはX線イメージ画像を用いたものであるが、これはX線像がいわば骨の影絵であることから、その輪郭情報をもとにそれが撮影された骨の空間位置を開発したコンピュータソフトを中心とした解析システムにより算出する方法である。(voxel based registration法)もうひとつは通常のMRIまたはCT装置を用いる。複数肢位で撮影を行い、各肢位での画像から構成される骨情報のみを抽出する。各肢位間での骨どうしを輝度値を素にした骨画像の重ねあわせを行う。重ねあわせの結果から肢位間での移動距離などの6自由度を算出する。
 提案する2種類の解析手法は精度誤差や解析可能動態速度、被爆問題などの点からそれぞれ利点と欠点があるが、それらを組み合わせることによりほぼすべての解析が可能となっている。
 それらの解析手法を用いて正常例でのすべての関節動態を解析してきた結果、いくつかの重要なことが明らかになっている。我々が明らかにした生きている人間における関節動態はこれまで屍体を用いた研究から導き出された多くの結果と異なることが多いことである。2点目は、そもそも骨形態は個人間により様々であり、個人差が大きいにもかかわらず、共通の動態が存在すること。さらには関節も様々な方向に動くものであるが、関節の動きは限られた特定の動きがあるのみで、その組み合わせにより様々な動きが可能となっていることが明らかとなった。
 この概念はリハビリテーションの方法を大きく変えうる可能性のあるものとして我々は注目している。手関節のある方向への動きによりそれぞれの手根骨がどの方向にどのように動かされるのか、特定の関節のみの動きを制限させながら、影響を及ぼさない関節の訓練を行うにはどのようなことが必要であるか。感と経験に基づく治療体系を科学的根拠のもとに確認することが今後重要と思われる。