第55回日本リハビリテーション医学会中部・東海地方会学術集会
ならびに専門医・認定臨床医生涯教育研修会
日 時
2024 年8月3日(土)
会 場
名古屋市立大学病院 中央診療棟3階
大ホール
名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1
日本リハビリテーション医学会中部・東海地方会
事務局:藤田医科大学医学部リハビリテーション医学講座内
学術集会
一般演題 9:00 - 12:00
座長 聖霊会聖霊病院 安藤智洋
1.Microsoft Kinect V2®による急性期脊椎椎体骨折患者の経時的歩容評価と転倒リスク評価指標の検討
1名古屋市立大学大学院医学研究科リハビリテーション医学分野
2三重北医療センターいなべ総合病院整形外科
3三重北医療センターいなべ総合病院リハビリテーション科
1加藤夏実,1,2黒柳 元,1,3松原弘記,2水野雄一郎,1稲熊祐輔,1井田塁童,1榎本啓行,
1佐藤美紀,1深見彩英,1岡本秀貴,1植木美乃
【目的】Microsoft Kinect V2®(以下,Kinect)で急性期脊椎椎体骨折患者の歩行解析を行い,その歩容評価が転倒リスクの評価指標に有用か検討した.【方法】脊椎椎体骨折患者18名の歩行解析を行い,歩行パラメータ・股関節膝関節角度を比較検討した.【結果】発症1週後と比較し3週後で歩行パラメータの有意な改善を認め,その改善は膝関節角速度の増加に関連していた.これらを一般的転倒リスク指標と比較すると,3週後でも転倒リスクが高い状態であった.【考察】Kinectによる歩行解析は急性期脊椎椎体骨折患者の歩容評価に有用で,転倒リスク評価指標となる可能性が示唆された.
2.脊髄腫瘍術後の退院先に影響を与える要因の検討
1名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科
2善常会リハビリテーション病院
3愛知県医療療育総合センターリハビリテーション診療部
4名古屋大学医学部保健学科
1寺澤 慧,1山口英敏,1真野頌子,1河邉 貴,1中村匡孝,1山本英知,1山口大貴,
2岡田貴士,3門野 泉,4杉浦英志,1西田佳弘
2019年1月から2023年12月までの間に当院で手術,リハビリテーション治療を行った脊髄腫瘍患者において自宅退院出来ず転院となる要因について調査した.入院時のModified McCormick Scale高値,Barthel Index(BI)低値,脊髄髄内腫瘍の患者は転院となる可能性が高かった.自宅退院に対する入院時BIのカットオフ値は85,退院時は90であった.退院時BIが高値でも十分な歩行機能を獲得できていない患者は転院となった.
3.ミドドリンの投与により高血圧をきたした頚髄損傷の2例
善常会リハビリテーション病院
下野圭子,岡田貴士
症例1は54歳男性,神経損傷高位C5,Frankel B.起立性低血圧に対しミドドリン2mgを使用したが,収縮期血圧が180mmHgを超えたため1mgに減量した.症例2は83歳女性,神経損傷高位C5,Frankel B.起立性低血圧に対しミドドリン2mgを開始したが既往の高血圧症が悪化したためイミダプリルを併用した.2例とも自律神経障害によると思われる臥位時高血圧と起立時低血圧のため,血圧コントロールに難渋した.
4.乳癌髄内転移により下肢麻痺を認めた症例
1名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科
2善常会リハビリテーション病院
3愛知県医療療育総合センターリハビリテーション診療部
4名古屋大学医学部保健学科
1山本英知,1山口英敏,1真野頌子,1河邉 貴,1中村匡孝,1寺澤 慧,1山口大貴,
2岡田貴士,3門野 泉,4杉浦英志,1西田佳弘
56歳女性,乳癌多発転移の治療中に両側の下肢麻痺が出現,MRIでTh12からL1高位に髄内転移を認め入院となった.放射線療法と化学療法が行われ,併存する骨転移に注意しながら理学療法・作業療法を実施した.両下肢麻痺は運動・知覚の完全麻痺で,入院中に筋力の改善は認めなかったが,自宅退院を希望されたため,移乗練習やADL練習を実施し,多職種で環境調整を行い,入院41日目に自宅退院となった.
5.腰痛と脊椎後弯変形の調査
岐阜大学医学部リハビリテーション科
青木隆明,秋山治彦,國枝顕二郎
【はじめに】外来に上肢障害におけるリハビリテーションで来院した腰痛を訴える患者で,背筋と脊椎後弯について調査したので報告する.【対象】患者85名で20代から70代を対象とした.【方法】筋膜から横突起までの脊柱起立筋の距離を超音波エコーで計測し,脊柱後弯の頂部の角度との相関を各年代で検討した.【結果】筋肉の距離が1cm近く減少することで男女ともに急激に後弯が進むことがわかった.【考察】筋力の低下により後弯が進行し,腰痛の原因となっている場合,筋量の状態を把握することで,リハビリテーションを助言する手段となる.
座長 名古屋大学医学部附属病院 山口英敏
6.大腿切断と下腿切断による両下肢切断者にPower Kneeを使用した一例
中部ろうさい病院リハビリテーション科
渡邊友恵
両下肢切断者の義足訓練や処方には,残存する身体機能を適切に評価し訓練や指導を進めるとともに,義足選択や作成の過程でも,安全性や実用性,操作性など多くの問題点を検討していく必要がある.Power Kneeは,マイクロプロセッサを搭載したモーター駆動の膝継手で,大腿切断者の起立や歩行を能動的に補助する.今回,労働災害による両下肢切断者で,Power Kneeを使用し歩行を再獲得した症例を経験したので報告する.
7.回復期リハビリテーション病院における入院中転倒とそのリスク因子
1社会医療法人愛生会上飯田リハビリテーション病院
2名古屋市立大学大学院医学研究科リハビリテーション医学分野
1大野由衣,1伊東慶一,1平田貴大,2植木美乃
回復期リハビリテーション病院(以下,回復期リハ病院)における入院中転倒防止は管理上の重要課題である.今回は,回復期リハ病院における入院中転倒とそのリスク因子について検討した.回復期リハ病院における入院患者390名を対象とし,入院中の転倒回数について,0回群,1回群,複数回群に分け,入院時FIMを含む患者背景を比較した.また,これらの群を統計学的に分析し,転倒のリスク因子と,リスク因子を活用した入院中転倒予防対策について考察する.
8.人工股関節感染のインプラント抜去後にリハビリテーションを行った1例
1名古屋市立大学大学院医学研究科リハビリテーション医学分野
2名古屋市立大学大学院医学研究科整形外科
1深見彩英,1,2黒柳 元,2坂井宏章,2高橋綾香,1稲熊祐輔,1井田塁童,1榎本啓行,
1松原弘記,1佐藤美紀,1加藤夏実,1岡本秀貴,1植木美乃
人工股関節置換術は患者満足度の高い標準化された手術である.一方,感染を起こすとインプラントを抜去する必要があり,再置換までの期間は通常自立歩行ができず車椅子での入院生活を余儀なくされADLやQOLの低下を招く.今回我々は人工股関節置換術後に感染を起こした50代女性にカップ抜去と骨頭形状の抗生剤入りセメントスペーサーを挿入し再置換までの期間に歩行器歩行が自立可能であった症例を経験したので報告する.
9.シャルコー関節に対してリハビリテーション治療を行った1例
信州大学医学部附属病院リハビリテーション科
長谷部敬子,池上章太,石田ゆず,長峰広平,丸田大貴,堀内博志
私たちは,シャルコー関節に対して人工膝関節置換術(TKA)を施行した1例のリハビリテーション治療を経験したので報告する.症例は47歳男性で建設業に従事していた.X年4月に誘因なく左膝痛が生じ,他院を受診した後,当院整形外科紹介となった.経時的に骨破壊を伴う膝関節変形が進行し骨欠損がみられるようになったが,疼痛は軽度であった.TKAが計画されたが術前からリハビリテーション科紹介となり,膝装具やADL指導を行った.治療はX年11月にTKAが施行されたが,荷重制限を行うなど個別性のある後療法を行った.手術検体の病理組織検査では,シャルコー関節と診断された.術後3か月で現職復帰しADLも自立しているが,慎重な経過観察を行っている.
10.ロコモティブシンドロームの一般住民コホート調査
信州大学医学部附属病院リハビリテーション科
丸田大貴,長谷部敬子,長峰広平,松島 聡,池上章太,堀内博志
運動器障害のために移動能力が低下した状態・ロコモティブシンドローム(ロコモ)が進行すると,介護が必要になるリスクが高くなる.高齢者の増加に伴いロコモになっている住民の数は多いと考えられるが実態調査の報告は少数しかない.我々は一般住民運動器疫学研究「おぶせスタディ」にて50歳以上の住民に対し検診を行い,ポピュレーションベースでのロコモの有病率について調査した.この結果を報告する.
座長 愛知県医療療育総合センター 門野 泉
11.能登半島地震における愛知JRATの活動から得られた課題
医療法人珪山会鵜飼リハビリテーション病院
津金慎一郎,倉地英志,今井幸恵,鵜飼泰光
愛知県災害リハビリテーション支援協会(愛知JRAT)は,能登半島地震後に,石川県へ避難所活動チームとして医師1名と理学療法士3名の支援チームを派遣した.派遣後の報告から,大規模災害発生時の活動に,二つ課題があると考えたので報告する.一つは,JRATの認知を向上させること.もう一つは,避難所活動チームが赴く必要がある避難所の情報を,迅速に得られるようにすること.ご意見をお願いしたい.
12.入院関連能力障害のリスク因子の検討
1鈴鹿中央総合病院
2三重大学医学部附属病院リハビリテーション部
3東京女子医科大学病院リハビリテーション科
4順天堂大学医学部附属順天堂医院薬剤部
5長崎リハビリテーション病院栄養管理室
6大阪大学医学部附属病院摂食嚥下センター
1小笠原嬉乃, 2百崎 良, 2牛田健太, 3若林秀隆, 3永井多賀子, 4小瀬英司, 5西岡心大, 6橋田 直
本研究では入院関連能力障害のリスク因子の検討を目的とし,2023年2月~2024年5月に急性期病棟に入院した高齢者を対象として国内7施設から収集した61例のデータを解析した.対象患者の平均年齢は79歳であり,入院関連能力障害の発生割合は21%であった.入院関連能力障害発生群では入院時フレイルが多く(53.8% vs 31.3%),低栄養が多かった(30.8% vs 9.8%).高齢者の入院におけるフレイルや栄養状態の評価が重要であることが再認識された.
13.急性期病院におけるHAD(Hospital Acquired Disability)の検討
藤田医科大学医学部リハビリテーション医学講座
稲垣良輔,柴田斉子,大高洋平
【目的】急性期病院におけるHADの実態を明らかとし,HADに影響を与える因子を検討する.【方法】2020年1月1日から2020年12月31日の間に入院し,15日間以上入院の上,2021年12月31日までに退院した成人患者を電子カルテから後方視的に情報収集し解析を行なった.【結果】6,440例中399例(6.2%)にHAD発症を認めた.HAD発症例は有意に高齢で,入院時Barthel Indexが低く,入院前生活場所が非自宅で,介護保険取得者が多かった.また,HAD発症例は入院期間が長く,退院時に嚥下食・経管栄養・点滴管理となる割合が多かった.【考察】高リスク群に対して,リハビリ・栄養管理を含む包括的な介入やその効果を検討していく必要がある.
座長 東名古屋病院 竹内裕喜
14.錠剤嚥下障害を呈した右延髄外側梗塞の一例
浜松市リハビリテーション病院リハビリテーション科
津幡拓也,梅林建吾,斎藤亜野,重松 孝,髙橋博達,藤島一郎
74歳男性.右延髄外側梗塞による重度嚥下障害に対してバルーン訓練などで経口摂取は可能となった(FILS 8)が,錠剤の右梨状窩残留を認め,嚥下も喀出もできず苦慮した.本症例の様に錠剤以外の嚥下は保たれているが,錠剤の嚥下障害を強く認める例がある.残留薬剤によって局所に炎症が生じ新たな嚥下障害を来たす可能性があり,薬剤の効果減弱もあり得る.当院での他の経験例も含めて報告する.
15.Wallenberg症候群に伴う慢性嚥下機能障害に対して代償法を工夫し経口摂取が可能となった一例
浜松医科大学リハビリテーション科
川崎裕大,高橋麻美,李 純理,佐藤知香,高嶋俊治,和泉未知子,永房鉄之,安田千里,
山内克哉
【症例】81歳男性,Wallenberg症候群による嚥下障害を認め,発症6か月間回復期病院で訓練したが経口摂取が困難であった.当院入院後にバルーン拡張法による訓練や嚥下代償法として右頚部回旋や左側臥位,頚部前屈位での鼻つまみ嚥下を行うことで,嚥下調整食2-2の自力摂取が可能となり自宅退院となった.【結語】Wallenberg症候群による慢性嚥下機能障害に対し代償法を工夫することで経口摂取が可能となった.
16.両側視床梗塞後の重度記憶障害の代償手段としてスマートウォッチの使用を試みた
一例
1藤田医科大学医学部リハビリテーション医学講座
2藤田医科大学医学部連携リハビリテーション医学講座
1安次嶺栄人,1木曽昭史,2角田哲也,1平野 哲,1大高洋平
症例は57歳の女性.意識障害が出現して前医へ搬送となり,両側の視床内側梗塞の診断を受けた.保存的に加療され,発症後29日で当院リハビリテーション科へ転院した.初診時運動麻痺は明らかでないが,重度の記憶障害を中心とした高次脳機能障害を呈し,ADL障害を強く認めた.記憶障害の改善は軽微に留まったが新しい代償手段としてスマートウォッチを導入したところ,日課の遂行に改善が得られたので文献的考察を加え,報告する.
座長 小牧市民病院 千田 譲
17.気管カニューレ抜去や内側股継手付長下肢装具を用いた歩行練習を含むリハビリテーションを施行した遷延性意識障害患者の長期経過
藤田医科大学医学部リハビリテーション医学講座
松浦広昂
遷延性意識障害患者に対して,気管カニューレ抜去や内側股継手付長下肢装具を用いた歩行練習を施行した一例を報告する.79歳女性.急性大動脈解離による意識障害が遷延し,発症2か月後に当院に転院した.無反応性覚醒症候群 (UWS)であったが,嚥下・呼吸訓練の後,発症3か月で気管カニューレを抜去でき,内側股継手付長下肢装具を作製した.UWSのまま経口摂取は訓練時のみで,定頚もせず発症4か月後に回復期病院に転院したが,その後定頸は得られ,啼泣や反射的な上肢運動の出現を認めている.
18.脳性麻痺の既往に加えて片麻痺を呈した症例
1中部国際医療センターリハビリテーション科
2中部国際医療センターリハビリテーション技術部
3中部脳リハビリテーション病院リハビリテーション技術部
1舟橋怜佑,2荘加克磨,3千賀 空,3原 耕太
【序論】小児期の脳性麻痺を既往に持つ患者が脳出血による片麻痺をきたしたことで,重度の三肢麻痺となった症例について報告する.【症例】脳性麻痺を既往に持ちながらも独自の移動手段などでADLが自立していた50代の男性.11.6ml程度の右被殻出血を発症し,保存的加療.第23病日に他院回復期リハビリテーション病棟へ転院した.【経過】電動ベッドと車椅子間の移乗修正自立レベルを目標に本人用装具作製,調整された環境下での動作確立を試みたが,介入当初の想定とは異なる手法となり,また,監視レベルに留まった.
19.当院でのボツリヌス療法に併せた短期集中リハビリテーション入院の取り組み
1 藤田医科大学医学部連携リハビリテーション医学講座
2 藤田医科大学医学部リハビリテーション医学講座
1角田哲也,2平野 哲,2 福島立盛,2赤塚 功,2木曽昭史,2水野志保,2大高洋平
当院では,維持期の脳血管疾患や頸髄損傷における上下肢痙縮に対して,ボツリヌス療法に併せた2-3週程度の短期集中リハビリテーション入院を実施している.目的に応じたボツリヌス投与,投与筋の持続伸長,振動刺激,ロボット支援練習,自主トレ指導などのリハビリテーションを行う.2024年1月から6月までの半年間で当院にてボツリヌス療法+短期集中リハビリ入院を行った24名について,投与筋,投与量,主な治療目的,リハビリテーションの内容等を後方視的に検討し,文献的な考察を加え報告する.
20.ボツリヌス療法の継続により線条体手変形による手指機能障害の改善が得られたパーキンソン病の一例
鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院リハビリテーション科
森泉秀太郎,吉村智樹,片井 聡
66歳女性.X-8年頃にパーキンソン病と診断.X-7年に脳梗塞を発症後,軽度右片麻痺等が残存.右上下肢痙縮に対しX-4年にボツリヌス療法を開始.X-3年に右手指スワンネック様変形が出現し,生活動作の中で右手が使用できなくなった.パーキンソン病による線条体手変形と考え,内服調整と並行し,虫様筋等へボツリヌス療法を行ったところ手指機能の改善を得た.その後もボツリヌス療法を継続して行った結果,生活動作における右上肢使用機会を増加することができた.
総会
12:50 - 13:00
研修会に先立って総会を行います.ぜひご参加ください.
専門医・認定臨床医生涯教育研修会
特別講演 13:00 - 15:00
講演1
弘前大学におけるロボットリハビリテーションの現状
弘前大学大学院医学研究科リハビリテーション医学講座 津田英一 司会:名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科 西田佳弘
講演2
骨転移のマネジメントにおけるリハビリテーションの重要性
静岡県立静岡がんセンター 片桐浩久
司会:名古屋大学医学部保健学科 杉浦英志
◎日本リハビリテーション医学会専門医・認定臨床医認定単位について
地方会学術集会:学会参加は専門医1単位,認定臨床医10単位
発表筆頭演者は専門医1単位,認定臨床医10単位
参加費:1,000円
生涯教育研修会:1講演毎に専門医1単位,認定臨床医10単位
受講料:1講演毎に1,000円
認定単位非取得者は単位数に関係なく受講料1,000円
◎認定臨床医資格要件
認定臨床医認定基準第2条2項2号に定める指定の教育研修会(必須以外)に該当します.
平成19年度より「認定臨床医」受験資格要件が変更となり,地方会で行われる生涯教育研修会も1講演あたり10単位が認められます.
当番幹事:西田佳弘 〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞65
名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科