第52回日本リハビリテーション医学会中部・東海地方会学術集会
ならびに専門医・認定臨床医生涯教育研修会
日 時
2023 年2月4日(土)
会 場
オンライン開催
日本リハビリテーション医学会中部・東海地方会
事務局:藤田医科大学医学部リハビリテーション医学I講座内
学術集会
一般演題 9:00 - 11:50
座長
相澤病院 大竹弘哲
1.脳出血脳梗塞別の発症-入院期間による入退院時SIAS麻痺側運動機能の違い
1医療法人鉄友会宇野病院
2藤田医科大学医学部リハビリテーション医学II講座
3藤田医科大学七栗記念病院リハビリテーション部
4藤田医科大学医学部連携リハビリテーション医学講座
1松原正典,2園田 茂,3渡邉 誠,3奥山夕子,4岡﨑英人,2水野志保
七栗記念病院回復期リハビリテーション病棟を入退院した脳卒中片麻痺患者3,497例を対象とした.発症から当院入院までの期間(発症-入院期間)を8区分し,発症-入院期間により入院時SIAS麻痺側運動機能合計点・退院時SIAS麻痺側運動機能合計点に差があるかの多重比較をSteel-Dwass検定を用いて脳出血・脳梗塞別に行った.発症-入院期間間での有意差の出方は,脳出血群と脳梗塞群とで異なっており,阻害因子の改善時期の違いが寄与している可能性があると考えた.
2.回復期脳卒中患者の入院時FIM合計から予測される退院時FIM合計の実測値とのずれへの片麻痺程度の関与
1藤田医科大学医学部リハビリテーション医学II講座
2藤田医科大学七栗記念病院リハビリテーション部
3藤田医科大学医学部連携リハビリテーション医学講座
1福島立盛,1園田 茂,2渡邉 誠,2奥山夕子,3岡﨑英人,1水野志保,1角田哲也,
1渡邊克章,1杉山由夏,1横手大輝,1村上 尚
2004年9月から2022年3月までに当院回復期リハビリテーション病棟を入退院した脳卒中患者7,606症例のうち,両片麻痺例,麻痺がない例,再発例などを除外した3,580例を対象とした.入院時FIM運動項目合計(FIM-M)と退院時FIM-Mのスプライン曲線を算出し,退院時FIM-Mとの残差を求めた.残差を目的変数,入院時SIAS Hip flexion
test(SIAS-h)の点数を説明変数としてノンパラメトリック多重比較を行なった.また,入院時SIAS-h別に残差の確率密度分布図を作成し,入院時SIAS-hによる違いを検討した.
3.脳卒中後のclaw toeに対してボツリヌス療法と集中リハビリテーション治療を行い歩行機能改善を認めた症例
浜松医科大学医学部附属病院リハビリテーション科
前川涼香,永房鉄之,高橋麻美,高嶋俊治,安田千里,山内克哉
症例は70代男性.脳出血後遺症の右上下肢痙縮・claw toe改善目的に400単位の上下肢ボツリヌス療法を行い,2週間の入院リハビリテーションを行った.ボツリヌス療法にインヒビターバーを追加し足趾の疼痛は改善し,足関節MASは2から1+,10m歩行試験は12.9秒から10.3秒,足関節のクローヌスは消失し,平均歩行速度は26.7m/minから34.5m/minと改善を認めた.治療後1か月でインヒビターバーを除去しても疼痛はなかった.痙縮治療について文献的考察を加えて報告する.
4.脳卒中後回復期リハビリテーションにおいて自動車運転再開評価を実施した3例の検討
鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院リハビリテーション科
加藤雄大,森泉秀太郎,片井 聡
当院では回復期リハビリテーション病棟において,脳卒中後の自動車運転再開支援を行っている.今回,我々は2022年5月から9月の間に運転再開評価を3例実施した.症例は右視床出血の57歳男性,右視床出血の55歳女性,左放線冠脳梗塞の75歳男性であり,前者2例は運転再開可能と判断し,後者1例は運転を控えるべきと判断した.これらの3例において,運転再開の可否を予測する因子について考察する機会を得たため報告する.
5.スマートフォンのフリック入力が障害された脳梗塞の一例
1東海記念病院
2名古屋市立大学大学院医学研究科リハビリテーション医学教室
1榎本啓行,1鈴木善朗,1影山 卓,2植木実乃,2村上里奈
【背景】スマートフォンのフリック入力操作に関する脳内機序は報告が乏しい.今回,我々は失語症の改善にも関わらずフリック入力障害が残存した症例を経験したので報告する.
【症例】88歳男性,右利き.主訴は錯語及び喚語困難.入院中にスマートフォンのフリック入力困難を訴えた.MRIにて左側頭葉から後頭葉に脳梗塞を認めた.【経過】言語訓練を行うことで失語症状は改善したがフリック入力障害は残存した.本症例について,既報告を踏まえて考察する.
座長
佐久総合病院 太田 正
6.認知症と失語を有する脳卒中患者のFIM運動項目
1藤田医科大学医学部リハビリテーション医学II講座
2藤田医科大学七栗記念病院リハビリテーション部
1横手大輝,1水野志保,2渡邉 誠,1園田 茂
七栗記念病院回復期リハビリテーション病棟を2017年6月〜2022年3月入退院した3,518名の脳卒中患者のうち,認知症行動・心理症状緊急対応加算を算定した症例68名を,失語症群11名と非失語症群57名とに分けた.両群で内服薬剤などの状況が,FIM運動項目にどのように影響するかを検討したので報告する.
7.軟骨無形性症に右被殻出血を合併しADL改善に難渋している一例
佐久総合病院リハビリテーション科
深澤美葉,吉村智樹,北上 朋,宍戸康恵,太田 正
軟骨無形成症に右被殻出血を合併する稀な例を経験した.症例38歳男性(身長113cm,独居,常勤職,改造車運転あり)左完全片麻痺を呈し,発症後6週で当院転院.麻痺は中等度に回復し起き上がりは自立したが,発症前に行っていた座面に飛び乗る移乗が困難で排泄が自立できない.高さの適合する歩行補助具も用意がなく実用的な歩行訓練が進まないなど活動制限の克服に難渋している.発症5か月現在,移乗の際の高低差解消と排泄形式の確立が課題である.
8.後頭骨頚椎固定術後に嚥下障害が出現した一例
長峰広平,宮岡嘉就,石田ゆず,池上章太,堀内博志
後頭骨頚椎固定(O-C固定)術は上位頚椎の不安定性を是正する目的で施行されるが,術後合併症として嚥下障害がある.先行文献ではO-C固定による咽頭腔の狭小化が嚥下障害の原因と推察されている.我々が経験したO-C固定術後の嚥下障害の症例では,過前弯している中下位頚椎が嚥下時に前方へ張り出すことで食道狭窄を起こし,食物の通過障害を来した可能性が示唆されたので,これを紹介する.
9.「イー」発声により口腔から咽頭への食塊輸送が改善した偽性球麻痺の1例
3浜松市リハビリテーション病院歯科
1,2國枝顕二郎,2棚橋一雄,3大野友久,2重松 孝,2藤島一郎
偽性球麻痺による口腔期障害に,「イー」の発声が有効だった症例を経験した.81歳男性.脳梗塞再発による嚥下障害を認めた(FILS 3).84病日のVFでは,口腔から咽頭への食塊輸送を奥舌でブロックすることがあった.「イー」と発声させると口峡は開き,食塊は咽頭に流入して嚥下反射が惹起された.偽性球麻痺による口腔期障害では,発声による舌根部の前下方への移動などにより口腔から咽頭への食塊輸送を改善できることがある.
10.当院における精神科患者の摂食嚥下障害への介入
2善常会リハビリテーション病院
3愛知県医療療育総合センター中央病院
4名古屋大学医学部保健学科
1河邉 貴,1山口英敏,2岡田貴士,1菱田愛加,1金野鈴奈,1中村匡孝,1玉井花菜子,
3門野 泉,4杉浦英志,1西田佳弘
2018年4月から2022年10月において,精神科から依頼を受けて嚥下機能評価を行った入院症例は18例で,うつ病6例,統合失調症3例,双極性障害3例,摂食障害3例,その他3例で,そのうち摂食嚥下訓練は5例に実施した.依頼時には意識障害や悪性症候群に由来する先行期障害,低栄養や絶食による嚥下関連筋群の廃用を認めたが,全身管理,栄養療法,摂食嚥下訓練などにより17例で経口摂取が可能になった.精神科患者の摂食嚥下障害では精神科治療だけでなく,多職種連携が必要である.
座長
安曇野赤十字病院 松永俊樹
11.高齢大腿骨近位部骨折患者における心拡大と筋肉量変化の検討
田中聖慈,橋詰玉枝子,尾川貴洋
【目的】心拡大を認める高齢大腿骨近位部骨折患者について筋肉量変化を検討すること.
【方法】2018年2月~2020年10月に回復期リハビリテーション病棟に入院した80歳以上の大腿骨近位部骨折患者を対象に後ろ向き観察研究を行った.調査項目は心胸郭比(CTR)とskeletal muscle mass index (SMI)とした.
【結果】CTRが拡大していてもSMIは増加する傾向を認めた.
【結論】高齢大腿骨近位部骨折患者に心拡大があったとしても筋肉量が増加する可能性が示唆された.
12.透析患者に対する当院でのリハビリテーション
西脇大雅,下平隆寛,田中靖男,太田 翼,尾関保則
我が国の透析患者数は年々増加傾向で,その年齢層も高齢化を見せている.輝山会記念病院においても,通院透析をしている患者の平均年齢は71.3±12.3歳と著明に高く,そのため合併症を有していることが多い.高齢の透析患者ではロコモティブシンドローム,フレイル,サルコペニアのリスクが高まるため,積極的にリハビリテーションでの介入を行いながら,活動量を維持することが重要である.今回,透析患者の活動量維持のために当院で取り組んでいることについて紹介する.
13.大腿骨内転筋結節部及び内側側副靱帯付着部剥離骨折の1例
水谷康彦,中村順之,北原
淳,瀧澤 勉
我々は大腿骨内転筋結節及び内側側副靱帯付着部剥離骨折に対して,観血的整復固定術を行った稀な症例を経験したので,術後後療法を含めて報告する.症例は45歳男性で,高所での作業中に転落した際,足部がひっかかり受傷した.受傷後3日目に手術を行い,内転筋結節部はスーチャーアンカーで固定し,内側側副靱帯部はスクリュー固定.後療法は,術後5週間免荷し7週間継ぎ手付き硬性膝装具を使用した.術後2か月の時点で疼痛はなく良好な膝機能が獲得できた.
14.小児陳旧性Monteggia脱臼骨折の術後リハビリテーション
1名古屋市立大学大学整形外科
2名古屋市立大学大学院医学研究科リハビリテーション医学教室
1岡本秀貴,2村上里奈,1,2黒柳 元,2青山公紀,2小林尚史,2松原弘記,2植木美乃
小児陳旧性Monteggia脱臼骨折に対して尺骨矯正骨切り術を行った5例について検討を行った.手術時年齢は6歳~17歳(平均9.6歳).術後リハビリは2週で回内外訓練を開始,3週でギプスシャーレ作成して入浴時に肘関節可動域改善訓練開始,4週で外固定を除去した.全例で脱臼の再発は認めなかった.術後可動域は肘関節伸展および屈曲はおおむね改善したが,回内および回外はやや悪化する症例もみられた.日本整形外科学会スコアは主に疼痛と関節動揺性の改善が得られ成績良好であった.
15.成人発症したグリセル症候群の1例
宮岡嘉就,池上章太,長峰広平,石田ゆず,畠中輝枝,鎌仲貴之,堀内博志
グリセル症候群は小児の鼻咽頭の炎症後に環軸関節亜脱臼を起こす稀な症候群である.咽頭痛や頚部痛が初発症状となるが,病状が進行すると環軸椎関節の不安定性を来すことがある.治療は装具療法や抗菌薬よる保存的加療を第一選択とするが,環軸関節の安定性が得られない場合は脊髄症状や嚥下障害を呈することがあり脊椎固定術を検討する必要がある.我々は成人発症の1 例を経験したので治療,リハビリテーション時の注意点なども踏まえて報告する.
16.膀胱癌,C2溶骨性骨転移がありリハビリテーション介入に難渋した一例
2信州大学医学部附属病院信州がんセンター緩和ケア部門
1,2石田ゆず,1宮岡嘉就,1長峰広平,1池上章太,1堀内博志
症例:89歳男性. 主訴:頸部痛. 現病歴:膀胱癌,多発リンパ節転移があり経過観察中.頸部痛が出現し寝たきりとなっており,精査のCTで軸椎椎体に溶骨像を認めた.経過:骨転移キャンサーボードで治療方針を共有し,放射線治療・骨修飾薬開始.頚椎カラー着用下で理学療法介入.考察:疼痛や切迫骨折のためリハビリテーションの目標設定・安全管理に難渋したが,他科と連携し,骨関連事象などの合併症なく介入することが出来た.
17.脊椎骨折患者の運動療法による認知機能変化ついての検討
橋詰玉枝子,田中聖慈,尾川貴洋
【目的】脊椎骨折患者の運動療法によるリハビリテーション(リハ)治療の認知機能変化ついて検討すること.
【方法】2018年10月から2020年7月の間,回復期リハ病棟に入院した脊椎骨折患者を対象に後ろ向き観察研究を行った.評価項目は,Mini-Mental State Examination (MMSE) とした.
【結果】MMSEのスコアは,入院時よりも退院時の方が有意に高かった.
【結論】認知機能が低下した脊椎骨折患者でも,運動療法の実施により認知機能の改善にも役立つ可能性が示唆された.
座長
信州大学医学部附属病院 池上章太
18.当院回復期リハビリテーション病棟におけるCOVID-19クラスターへの対策と早期終息までの経過
2医療法人鳳紀会可知病院リハビリテーション科
1小林絢水,2可知裕章,2杉原寛治,2八木 了,1村上里奈,1植木美乃
【背景】2022年11月に当院回復期リハビリテーション(以下リハビリ)病棟においてCOVID-19クラスターが発生.迅速な対応により短期間で終息した経過について報告する.【対象・介入・結果】該当期間に入院中であった患者は58名.11月7日から16日までに16名が陽性となった.感染予防,検査,治療を徹底的に実施することで,患者の全身状態を維持し3週間でクラスター終息に至った.【考察】限られたリハビリ資源・環境下においても徹底した対策で被害を最小限に留めた.
19.当院における経肛門的洗腸療法の使用成績の報告
渡邊友恵,田中宏太佳
2018年に脊髄損傷者の難治性排便障害に対し経肛門的洗腸療法(以下,洗腸療法)が保険収載された.当院でも,2020年度から洗腸療法の運用を開始し,リハビリテーション科を中心に適応判定と指導・導入を行ってきた.現在までに14症例に導入し,そのうち10名は現時点で使用を継続,4名は使用を中止,最初に導入した症例は2年以上継続して使用している.今回,当院における洗腸療法の中長期的な導入後経過と問題点について報告する.
20.回復期病棟におけるリハビリテーションロボットに関するアンケート調査
松永俊樹
リハビリテーションロボット未導入である当院回復期病棟勤務のPT・OT・STを対象に,その認知度,利用希望有無などを検討する目的でアンケート調査を実施した.在籍17名中16名より回答が得られ,15名(94%)がリハビリテーションロボットの存在を知っており,下肢用ロボットの認知度が13名(81%)で最多だった.利用希望は15名(94%)にあり,上肢・下肢・介護・認知コミュニケーションの各分野ほぼ均等に希望があった.
総会
12:40 - 12:50
研修会に先立って総会を行います.ぜひご参加下さい.
専門医・認定臨床医生涯教育研修会
特別講演 13:00 - 15:00
講演1
神経疾患の摂食嚥下障害 -長野県での取り組み-
諏訪赤十字病院リハビリテーション科 巨島文子
司会:三重大学 百崎 良
講演2
小児側弯症の診断と治療(重症心身障碍児の側弯症を含む)
信州大学医学部運動機能学教室 髙橋 淳
司会:名古屋大学 西田佳弘
◎日本リハビリテーション医学会専門医・認定臨床医認定単位について
地方会学術集会:学会参加は専門医1単位,認定臨床医10単位
発表筆頭演者は専門医1単位,認定臨床医10単位
参加費:1,000円
生涯教育研修会:1講演毎に専門医1単位,認定臨床医10単位
受講料:1講演毎に1,000円
認定単位非取得者は単位数に関係なく受講料1,000円
◎認定臨床医資格要件
認定臨床医認定基準第2条2項2号に定める指定の教育研修会(必須以外)に該当します.
平成19年度より「認定臨床医」受験資格要件が変更となり,地方会で行われる生涯教育研修会も1講演あたり10単位が認められます.
当番幹事:堀内博志 〒390-8621 長野県松本市旭3-1-1
信州大学医学部附属病院リハビリテーション科