指導医からのコメント

                    内科研修実務委員・一般内科助教授 野口 善令


「できる医者」と呼ばれる医師を育てたい

 これまでの我が国の臨床教育システムには大きな欠陥がりました。特に大学病院などでは医療が早期より専門分化されていたためにcommon problemに対するスタンダードなアプローチが習得できず、とにかく検査をして安心しようとする医師や、応用力がなく自分で考えずに権威に盲従しやすい臨床医が量産されてきたように思います。

 私は日本の大学・市中病院で研修をした後すぐれた卒後教育システムを求めて北米の教育病院でレジデント研修を経験し、帰国後は卒後教育にたずさわってきました。良い臨床医を育てるために、その経験で得た知識やスキルを十分に活用した卒後教育を展開していきたいと考えています。
 
当院での研修のメリットは
@名古屋近郊のベッドタウンに存在し、1〜3次医療機関を兼ねているため特殊な症例だけでなくcommon disease
 common problemが豊富であり初期研修に好適である
A混合病棟システムをとっていて、研修医が担当する内科入院症例については、臓器別各診療科の指導医と研修医がチームになって診療にあたるため、多彩な疾患を効率良く経験する研修ができる
B1年目、2年目研修医、指導医という厚みのある北米式屋根瓦チームを組んでいるので学習・教育の良い循環ができている
C研修医が臨床決断を下す機会が豊富
という点です。臨床研修とは、ただ患者さんと接していれば良いというものではなく、また上級医の言うことを鵜呑みにして診療を行っていても臨床能力は向上しません。疑問を持ち、情報を探し、悩んで決断するというプロセスを繰り返しながら初めて臨床に実力がつくのです。

さらに、当院の内科初期研修プログラムで重視している点には、
@プレゼンテーションの訓練
A臨床的問題点の把握の訓練
B臨床的問題に対応する鑑別診断のリストを想起する訓練
が挙げられています。これらの点について、症例の1例1例を通して、研修医の先生方とともに勉強しながら切磋琢磨していきたいと考えています。



研修医からのコメント

 

                                  研修医  奥田 明子

 

「以心伝心」の研修環境の中で

「先生、ルートキープお願いします!」
「はい、わかりました。」

 
そんな会話が日常の中に入り込むようになって、もうすぐ1年が経とうとしています。5月に研修が始まり、不安と期待を抱えながら、臨床の場に入っていったあの頃を思い出します。
藤田保健衛生大学病院での研修生活をここでちょっとお話しようと思います。


 まず、私がここでの研修を選んだ最大の理由は、今までのお世話になった先生方、顔見知りの方たちが大勢いるということです。研修医に限らず、医者の社会、いや、どんな仕事においても、まず1番大切なことはそこでの人間関係だと思います。どんなに仕事がよくできても、周りの人々に認めてもらい、たくさん誉められ、気持ちよく働く事ができなければ、やはり仕事自体を心から楽しいと思って働く事はできないように思います。その点、当院での研修は想像に違わず、とても充実した研修生活を送れていると感謝しています。指導医の先生方はどの先生も面倒見が良く、何をおこなう時でも必ず研修医に一言声をかけてください、分からない事に対してはきちんとわかるまで丁寧に説明してくださいます。また先輩研修医の先生方も大勢みえるので、上級医がいなくて一人で何をしていいのかわからないという事はあり得ません。

 研修2年目の先生方は、去年まで1年目だったので、私達の疑問点や不安等をすぐに察知しアドバイス等をしてくれます。私は、そんな研修環境を以心伝心のように感じ、また嬉しく思っています。また、その研修2年目の先輩が大学時の部活の先輩だったりすると、そこから話が咲くことにより、色々な医学の知識を広げていくこともできます。同じ研修1年目の仲間は大学時代からの友人が多い為、お互いに悩み等を話し合い、治療方針について議論したりと、そんな友人達にも大変感謝しています。もし、他の病院で研修をしていたら、きっとこんな恵まれた環境では研修できなかったように感じます。


 当院では内科混合病棟といって、研修医が主に診療を担当する病棟があります。そこでは、基本的に研修医達は自分で診療行為を考え、入院時のオーダー、点滴メニューから他病院への紹介、退院後の治療計画までの重要な臨床決断等の診療計画を立てることに、指導医と一緒に参画します。もちろん医者1年目の私たちは、すぐには1人ではできません。そんな時には、上級医の先生方と一緒に治療方針を考え話し合い、その後教授回診などで自分の不明点や疑問点をきちんと解決することができます。
 診療に役立つ勉強会もさかんに行われており、特に一般内科では、指導医による抗生剤についての講義を毎週のように行って下さいます。希望者はその抗議に出席して臨床的な抗生剤の選択方法を学ぶ事ができ、昼食も頂けるので知識も増え、お腹も満足になりまさに一石二鳥です。

 上記以外にも、当院所属の世界的に有名な先生方から直接に指導を受けられる点など、本院での研修にはいいところがたくさんあります。しかし、1番大切なのは私達自身のやる気なのです。どんなに良い環境で、どんなにいい指導医がいる環境ので研修を行っても、本人のやる気が無ければ成長なんてできません。指導医の先生方も、私たちにやる気があるからこそ一所懸命に親身なって教えて頂けるのだと思います。今後、どの病院で研修を行うにしても、自分がそこで研修したいと思ったならそれでいいと思います。ただ、当院での研修を考える方には、やる気さえあればどこにも負けない最高の研修生活が送れると、胸を張って言えます。
まだ研修先を決めていない方、当院での研修に少しでも興味を持った方には、当院での研修を是非お勧めします。私達とともに楽しい研修生活を送りましょう!!お待ちしています。



研修医ルームでの一場面


〜研修医の理想と現実〜

藤田保健衛生大学病院の研修医ルームで研修2年目の八木亮先生と研修1年目の海野光昭先生、有馬裕子先生が何やら楽しそうに話をしている。ちょっと、覗いてみよう。

八木:今年度は初めてのマッチングがあって試行錯誤の中で研修医生活がスタートしたけど、どういういきさつでこの病院での研修を選んだのかな?
海野:僕は特に強い思い入れがあったわけではなくて、やっぱり自分の出た大学の病院なら知っている先生も多くて馴染みやすいし仕事もしやすいかなって思ったから。
有馬:そうそう、それにこの病院は以前からスーパーローテーション形式の研修制度をしていたから、特に混乱とかも無く研修が出きると思ったし!
八木:なるほどね。海野先生も有馬先生もそれなりの思い入れ持ってこの病院を選んだんだね。・・・で、研修をしてみてどうかな?現実は?
海野:そういえば、外の市中病院で研修している友達とこの間電話で話したけど、研修医が一人でほうっておかれるって嘆いてたよ。研修2年目が研修1年目を教え、又その2年目を指導医が教えるっていうこの病院の指導体制はいいと思います。
八木:そうだね。特にこの病院には、一般内科や混合病棟っていう研修医が主体となって患者さんを治療していくシステム(このシステムは患者さんに何かあれば、まず研修1年目の先生が最初に呼ばれる)があるからね。俺も1年目に夜中病棟から患者さんの状態がよくないといって何度も呼ばれた事あるもん。すぐに2年目の先生を呼んだりCCUに連絡したり・・・。病院全体が研修医を守ってやらなければっていう体制が出来ているからね。いわゆる屋根瓦方式だね。
海野:そうそう!ネーミングがちょっと・・・だけど(笑)
有馬:でもすごくいい形で機能していると思う。
海野:うんうん、同感。
八木:まあこれからは、病院も研修医に評価される時代になってきたからね。病院側もおちおちしてられないな。
海野:でもなんだかんだ言っても、病院は箱であって(もちろんいい環境の箱のほうがいいが)その箱の住人である指導医、その箱を求めてやって来た研修医との人間と人間の繋がりがしっかりしている事が大事なんじゃないかな?
有馬:そうね。病院の設備やシステムが良くても、最終的にはお互いの気持ちかな〜?
八木:う〜ん。今日の二人の意見にはなかなか考えさせられる所が多かったね。最後にこれかからの抱負を一言。
有馬:まだまだ慣れなくて、言われた事をこなす事で精一杯だけど、これから自分で治療方針を考えながら「診療」出来る様になりたいです。
海野:勉強する時は勉強する。寝るときは寝る。遊ぶときは遊ぶ。そして怒られる時は怒られる。メリハリかな(笑)。
八木:よ〜し。メシでも食いながら話の続きをするか?
海野、有馬:やったぁ〜!!ゴチになります!!

僕たち研修医は患者さんの笑顔を見たいだけだから・・・。