心エコーを契機に診断された右冠状動脈瘻のー例 |
小牧市民病院 臨床検査科 |
○恒川 貴衣 余語 保則 |
【はじめに】 先天性冠動脈瘻は比較的稀な先天性冠動脈疾患の一つであり、従来選択的冠動脈造影により確定診断されてきた。しかし近年、超音波診断法、MRI、CTなどの非侵襲的検査によってかなりの精度で診断できるようになってきた。今回、われわれは自覚症状なく、健診時に心雑音を指摘され、経胸壁心エコー図、選択的冠動脈造影により、右冠動脈右房瘻と確定診断し得た症例を経験したので報告する。 【症例】 29歳、女性 主訴:健診にて心雑音を指摘される。 現症:血圧102/78mmHg、胸部X線で心胸郭比55%と拡大を認め、聴診にて、胸骨左第3肋間に収縮期雑音が認められた。心電図上では時計回転の所見を認められた。 心エコー図所見: 左室拡張期経50.8m、収縮期経30.5mm、E F 70.3%で、壁運動異常なく壁運動は良好であった。右バルサルバより始まる直径約10mの管状エコーを認め、カラードプラによりその管状エコー内に、大動脈より胸壁方向へ向かう異常血流、さらに上大静脈と右房合流部における異常血流シグナルが確認され、右心系の拡大を認めた。 心カテ所見: 左室造影検査にて、大動脈から右房への短絡血流を認め左右短絡率40.08%、肺体血流比1.63であつた。冠動脈造影により巨大な瘻を認め、右冠動脈はその瘻の内部より起始していた。その他の冠動脈には異常を認めなかった。 【考察】 先天性冠動脈瘻は、5万の出生に対して1例の割合で発生するといわれている。瘻孔が起始する関連冠動脈は右冠動脈が最も多く、瘻開口部は右室、右房が多いとされてきたが、最近では左冠動脈が最も多く、次いで両側冠動脈か多いとされ、開口部は肺動脈が約半数を占めると報告されている。これは、近年の医瘻技術の向上により、左室遺影検査などで発見されるものが多くなったためと考えられる。 本症例は、経胸壁心エコー検査により右バルサルバ洞より始まる管状エコーと、その管内を胸壁方向へ向かつて流れる異常血流、さらに右房内へ注ぐ異常血流シグナルをとられた。これにより本症例を右冠状動脈右房瘻と推測し、冠状動脈造影により、確定診断に至った。 患者は自覚症状なく、健康診断にて心雑音を指適されて来院されており、成人においてもこの様な先天性疾患を念頭において検査する必要があると思われた。 0568‐76‐4131 内線:311 |