プレスリリース

国内初 放射性医薬品による診断・治療・研究開発を一元化した「セラノスティクスセンター」が開所

藤田医科大学病院は、より高度ながん治療の提供に向け、放射性医薬品を体内に投与して診断・治療を行う核医学の専用施設「セラノスティクスセンター」を竣工。5月1日より本格稼働しました。地下1階には、放射性同位元素(核種)を製造するサイクロトロン(粒子加速器)や、核種を放射性医薬品にするための合成装置、1階には患者さんが治療を受けるための投与室などが設けられています。

手術や抗がん剤では難しい体の深部や転移を伴うがんの治療をめざして

放射線治療の一分野である核医学では、フッ素や炭素などの放射性同位元素(核種)を特殊な薬剤と合成して放射性医薬品にし、体内に投与して画像診断や治療を行います。これらの放射性医薬品は、がんやアルツハイマー病などの病巣に集まるように作られており、その特性を生かして病巣から放出される放射線をPET(陽電子放射線断層撮影)で画像化して診断するだけでなく、放射線でそのままがん細胞を死滅させたりすることも可能です。全身に散らばった小さながん細胞を特定できることに加え、深部のがんや難治性がんの治療などにも効果が見込めるとあって、次世代の高精度がん治療として期待されています。

核医学を扱う多くの病院では、放射性医薬品を製薬会社などから購入し、患者さんに投与しています。一方で、放射性医薬品のもととなる核種にはフッ素110分、炭素20分などのように放射能を発する時間が半分になる半減期というものがあり、使用には時間的制約があることが課題でした。例えばがんのPET検査で使われる18F-FDGという放射性医薬品は半減期が約110分のため、毎日数回にわたって製薬会社から届けてもらう必要がありました。
今回、開設したセラノスティクスセンターの場合、サイクロトロンと合成装置を設置しているため、輸送では対応できない短い半減期の核種を製造し、放射性医薬品に合成してその場で投与することができ、これにより多くの患者さんへ診断・治療を提供することが可能になります。すでに神経内分泌腫瘍や甲状腺がんの治療、アルツハイマー病の診断などを開始しており、今後は転移のある前立腺がんなど適応する疾患を順次拡大していきます。加えて新たな核種の製造や新規治療法の研究・開発にも取り組み、がん治療の発展に寄与することをめざします。
  • サイクロトロン(粒子加速器)エリア  

  • 診断核種・治療核種を放射性医薬品にするための合成装置